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養老町、養老公園内にある「養老公園 清水」をご存じだろうか。
1955年(昭和30年)創業、焼きだんごや雑穀豚うどんが人気のお食事処だ。今回は、三代目店主の清水 由美子(しみず ゆみこ)さんにお話をうかがった。
- 観光スポットにあふれた養老町
- 町をあげた一大プロジェクト「YOROラボ」
- 二足のわらじで町の魅力を発信する
- 笑う門には福来る
①観光スポットにあふれた養老町
岐阜県の南西部に位置し、日本の滝百選に選ばれている“養老の滝”、自然とアートが融合した“養老天命反転地”のほか、レトロスポットとして再注目の遊園地“養老ランド”、2022年にリニューアルオープンした大型キャンプ場など、バラエティに富んだ魅力を持つ養老公園があり、年間100万人以上の観光客が訪れる養老町。
養老公園内に店舗を構え、69年の歴史を持つ「養老公園 清水」。まずは、創業時のお話をうかがった。
「観光客が増えてきたのをきっかけに、観光に訪れた方の休憩所みたいな感じで、軒先で食事を提供するような形で、祖母と母の2人で始めたと聞いています。当時はまだ小さな平屋だったんですが、2~3回の増築を経て、少しずつ大きくして現在の形になりました。」
歴史のあるお店を受け継ぐことに不安や心配はなかったのだろうか?
「小さい頃から『あなたは後継ぎだから』と言われて育ってきたのと、お店の手伝いも慣れていたので、抵抗みたいなのはなかったですね。昔は長男が後を継ぐ、長男がいない場合は長女が後を継ぐのが当たり前みたいな、嫌でも『はい』と言うような時代でしたので(笑)。今はそんなことないと思いますけどね。養老天命反転地ができた時に、母はそちらにテナントを出して営業しており、父が公園の店を切り盛りしておりました。父が亡くなったあと、私が本格的にここを受け継ぐことになりました。」
受け継ぐこと自体に抵抗はなかったとはいえ、初めのうちは大変なことも多かったという。
「やっぱり人間関係とかは大変でしたね。私も小さい頃からお店を手伝ってはいましたけど、いざ自分が中心になってやるとなった時に、従業員さん全員年上なので、例えば父が言うことと私が言うことではやっぱり重みが違うじゃないですか。そういうところだったり、あとはマニュアルみたいなものをある程度作っておかないと、私が思うのと、みんなが思うのとまた違うので。ちょっとしたことでもどうやって伝えたらいいんだろうとか。なかなか難しかったですよね。」
②町をあげた一大プロジェクト「YOROラボ」
「養老公園 清水」で提供しているのは、代々受け継がれたレシピや、養老町の自然の恵みをふんだんに使った自慢のメニューばかりだ。
「やっぱり養老の水は自慢のひとつで、たとえばお味噌汁とかでも全然味が違うと言われますね。おでんの味噌とでんがくの山椒味噌は祖父が考えたレシピを今でも受け継いでいて、手作りチャーシューを使った養老雑穀豚うどんや養老らぁめん、養老の梅で仕込んだ手作りの梅ジュースなど、オリジナルメニューを数多く取り揃えています。養老飯も提供しているので、それを目当てに来ていただく方もいらっしゃいますね。」
「養老飯(ヨーローハン)」は、養老町が2022年に立ち上げた「YOROラボ」プロジェクト(養老公園を中心とした養老町を「実験室=Labo」とみなし、観光入込客数の増加に向けて様々なテーマに基づき、実証実験に取り組むプロジェクト)から生まれた。
一つ星シェフが開発アドバイザーとして参画し、町内事業者との意見交換会を経て完成した、町の強みを生かした新たなご当地メニューだ。
「私も妹も調理師免許を持っていて、小さい頃からお店を手伝ったり、父を見ながら簡単なものを作ったりしていたので、昔から料理はしていましたね。料理は妹の方が得意です。」
「養老公園 清水」では、食事だけでなく、ひょうたんなどのお土産や、養老サイダーや地ビールなども販売している。看板犬のステラくんが迎えてくれるので、気になる方は足を運んでみてはいかがだろうか。
③二足のわらじで町の魅力を発信する
由美子さんは「養老公園 清水」の経営をしながら、養老町の町議会議員も務めている。「住んでよし!来てよし!養老!」をモットーに、養老町の活性化とPRに力を入れているという。
「清水の経営と議員活動の並行は大変なこともありますけど、やっぱり自分が生まれ育った養老町の活性化の役に立ちたいと思いながら、日々いろいろな活動をしています。平日は店に出られない日も多いんですけど、今は妹が手伝いに来て、いろんなことをやってくれています。」
ここ数年で、養老町を訪れる観光客の年齢層にも変化が見られたという。
「何年か前までは『もっと若い人たちに来てほしいね』なんて言ってたんですけど、天命反転地がロケ地になっていろんな芸能人が訪れたり、養老ランドがレトロな遊園地として再注目されたりして、ここ数年で若い層がすごく増えたように思いますね。みなさん写真を撮りにたくさん訪れていただいて。」
観光客としての若者は増えたとはいえ、養老町で生まれ育った若者の地元離れは止まらない。養老町の魅力を発信することで、移住してくる方が増えてほしいと話す由美子さん。
「自分の後を継ぐ人がいない、いわゆる後継者問題は町全体を通してみなさん抱えていると思いますね。私は、息子の意思に任せているというか、あまり無理強いすることでもないので、自分がやれる間はやっていこうかなという気持ちでいますけど。少し前から移住に関するパンフレットとかも置いてるんです。観光で養老町を訪れた方に少しでも興味持ってくれたらいいなと思って。」
ご自身の出来る範囲でやれることをたくさん取り組まれているという。
後継者問題は感じつつも、息子さんの意志を尊重されている由美子さん。その心の温かさは、養老公園に訪れた人に伝わることをつい願ってしまうほどだ。
④笑う門には福来る
「養老町」の町議会議員として、「養老公園 清水」の経営者として、今後の目標や夢をうかがってみた。
「養老公園だけではなくて、町全体がもっと発展して、今よりも観光客が増えてくれたら嬉しいですし、もっと言えば『養老町に住みたい』と思ってくれる人が増えたらさらに嬉しいですね。清水に関しては、今はいろんな種類をやってますけど、ゆくゆくは、よくあるおばあちゃんのお店みたいな、店番しながら『いらっしゃい』みたいな。そういうので来た人が喜んで帰ってくださったらいいかなと思いますね。」
最後に、由美子さんの座右の銘だという「笑う門には福来る」についてうかがった。
「やっぱり笑顔って本当に自分も人も幸せすると思うので、いつも笑顔でいられたらいいなと思いますね。私自身もいいことばかりあったわけではないですが、大変な時でも、努力すれば笑顔は作れるものなので。もしどんなに辛い時でも、笑顔でいることで自分も周りの人も元気になるので、やっぱり笑顔でいることが一番だと思っています。」
そう笑顔で語ってくれた。豊かな自然の中に数多くの観光スポットが存在し、毎年多くの観光客が訪れる養老町。これからも、由美子さんの素敵な笑顔とその人柄で、周りを幸せにしてくれるに違いない。
みなさんも、ぜひ一度、魅力あふれる養老町とお食事処「養老公園 清水」に足を運んでみてはいかがだろうか。