撮影用レンタルスペースとカフェを兼ね備えた「火鉢かふぇ壽庵」を訪ねてみた。

TOM
古民家カフェってすごく風情があっていいよね~
SARA
自分達が生まれる前の雰囲気が味わえるのも醍醐味よね!
TOM
僕、築600年の木造カフェを知ってるよ!
SARA
600年前って室町時代よ・・・そもそも本当にカフェなのかしら・・・

 

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大垣市にある「火鉢かふぇ壽庵(じゅあん)」をご存じだろうか。
築90年を超える、完全予約制の古民家カフェだ。カフェ営業だけでなく、成人式や結婚式などの撮影スペースのレンタルも行なっている。今回は、代表の永井 ほなみ(ながい ほなみ)さんと、店主でマネージャーの永井 義博(ながい よしひろ)さんにお話をうかがった。

 

今回のツムギポイント!
  1. 風情ある古民家カフェの誕生
  2. シチュエーション豊富な撮影スペース
  3. その時代に戻ったような体験型カフェ
  4. 無理せず自分たちのペースで

 

 

①風情ある古民家カフェの誕生

 

「火鉢かふぇ壽庵」はご夫婦で経営をしているが、代表のほなみさんは、婚礼関係のお仕事と掛け持ちされているそうだ。どのような経緯で今のスタイルになったのか、詳しくお話をうかがった。

 

「2004年くらいから婚礼のお仕事に携わるようになり、MCやコーディネートを手掛けるようになりました。2011年からは、多治見市にある「永保寺」で執り行う仏前結婚式のコーディネートも手掛けさせていただいています。実は「壽庵」という名前を最初に考えたのがこの頃なんですが、「和」に寄りすぎてしまうかなということで、その時は英字の「JUAN」にしました。」

 

「主人は、会社員時代から私の仕事が忙しいときにサポートをしてくれていて、定年退職を機に大垣市に戻ってきました。コロナ禍直前の2019年ですね。こちらに戻ってきた後に主人の両親が亡くなってしまいました。両親が暮らしていたここが空き家になりまして。嫁の立場なのであまり中まで入って見たことがなかったんですが、天井近くまで物が溢れていて、本当に足の踏み場もない状態だったんです。」

 

とても風情のある古民家だが、数年前までは至るところに物が溢れ、売却や取り壊しも考えていたそう。そんな状態から、どのようにして現在の素敵なカフェが誕生したのだろうか。

 

「とりあえずこのままではいけないと、毎日時間を決めて2人で片付け始めたんです。ですが、本当にいろんなものが大量に出てくるんです。当初はお店を開く気もないので、ひたすら整理していたんですが、火鉢が18個も出てきたんです。火鉢なんて珍しかったので、それで焼きおにぎりを作ってみたらすごく美味しかったんです。お庭や縁側も、改めて見たらとても風情があって本当に素敵だったんです。」

 

「ちょうどその頃、婚礼の方もフォトウェディングにされる方が多かったのですが、ただ問題なのは、施設を貸してもらえなかったり、撮影場所がなくて困っていると知り合いのカメラマンさんから事情は聞いていたので、「この家をなんとかしたら使えるかもしれない」と思ったんです。」

 

どこか懐かしさを感じさせるこの空間は風情があって”映える”と感じた。フォトウェディングに利用したいと声が上がるのも納得だ。

 

「撮影だけで毎日稼働するわけではないので、少しもったいないなと思っている時に、構造的にあまりいじらなくてもカフェを営業できることがわかったんです。お店を開けるからにはお客様に来てもらわないと面白くないですし、開けたからといって来ていただけるわけではない。そのお店に行かないと食べられないものだったり、体験できないこと、何か「行ってみたい!」と思っていただけるプラス要素がないと無理だろうなと考えていました。」

 

「今は火鉢を見たことがない方もたくさんいらっしゃいますし、これをお客様に体験していただいたら楽しいかもしれないと。当時コロナ禍だったので『完全予約制』で1組3名まで、2時間制っていうシステムを作らせていただいて、現在の火鉢かふぇのスタイルができあがりました。」

 

片付け中に出てきた火鉢、家の中の物が減ったことで見えてきた縁側や庭の風景、そこにコロナ禍のブライダル業界の厳しい現状などが重なり、レンタルスペースとカフェを兼ね備えた「火鉢かふぇ壽庵」のオープンに向けて本格的に動き出した。

 

 

 

 

 

②シチュエーション豊富な撮影スペース

 

壽庵では、昭和レトロな室内やお庭で撮影した後、市内のロケーションスポットに出かけての撮影も行なっている。和装は特に技術や知識が必要な撮影となるが、安心して任せられるサポート体制も整えているそうだ。

 

「レンタルスペースを利用される方には、結婚式は洋の会場で、前撮りだけ和という方も多いですし、成人式の方もいらっしゃいますね。部屋ごとにタイプを分けているので、いろいろなシチュエーションで撮影できますし、ご要望があれば、着付けやヘアメイク、カメラマンの手配なども可能です。」

 

「今はレンタルスペースみたいなものがたくさんあるので、お客様が迷ってしまうんです。全然関係なく火鉢カフェに来たお客様が、実際の雰囲気だったり宣材写真をご覧になって、私たちの人柄とかも見ていただいて、この人たちなら安心して任せられると思っていただけたら嬉しいですね。」

 

コロナ禍をきっかけにスタートした撮影スペースのレンタルだが、歴史を感じさせる小物類や、風情のある雰囲気がちょうど今の時代の流れにフィットして、コロナが落ち着いた今でも、ファンを増やし続けている。

 

 

 

 

③その時代に戻ったような体験型カフェ

 

今では和室や縁側自体が珍しくなってきており、実際に見たことがない人も多いのではないだろうか。壽庵は、お客様自身が火鉢を使って焼く体験型カフェだ。調味料やメニューにも、お二人のこだわりが垣間見える。

 

「火鉢を初めて見る方や、縁側の存在自体を知らない方も最近増えていますね。流行りのグランピング感覚で、「音や匂いも含めて楽しんでください」という感じで体験していただいています。」

 

「私たちは食べ歩きが好きで、これ美味しいね、これお店で使いたいねみたいな感じで、実際に食べて美味しかったものをお店で扱っています。お醤油もブレンドして作っていて、料理に合わせて使い分けています。」

 

完全予約制のシステムや、人数・時間の制限は今後も変える予定はないという。この空間が醸し出すプライベート感やゆったり感も含めて、のんびりと楽しんでもらいたいと話す。

 

 

 

 

④無理せず自分たちのペースで

 

今回のインタビュー中、端々で聞かれた「ゆったり」や「のんびり」といった言葉。それは、『壽庵』の在り方や、今後の働き方や暮らし方にも通ずるものがあった。

 

「自分たちの体力とか、いろんなことを年々感じてくるわけですよね。お客様から『予約制をやめて、駐車場も増やして、もっとお客さんを呼んだらいいじゃない』という声もいただくんですが、ゆったりと心地よく過ごしていただいて、私たちも無理をしないで生きていくことが大事かなと思っています。」

 

「よく10年スパンって言いますけど、もう私たちは3年とか5年スパンで考えなければいけない年代になっています。今はこういう形でやっているけど、数年後にはこの部分をちょっと変えてとか、柔軟にシフトしていくべきだと思っています。最後は本当に焼きおにぎりとぜんざいくらいで、おじいちゃんとおばあちゃんがのんびりやってるみたいな感じでもいいのかなと。」

 

「この壽庵が将来的にどうなるかはわからないですけど、夫婦で無理せず、心地よく、1年でも長く続けられるのが理想ですね。私たちが生きている間は、私たちのペースで、私たちのできることでお客様に喜んでいただきたいと思っています。」

 

夫婦であり、仕事のパートナーでもあり、まさに二人三脚で歩いてきたお二人。近しい関係だからこそ衝突したり、上手くいかないこともあるのだろうか。

 

「逆に、自分一人だけだとたぶんモチベーションを保てないと思います。なんか気が乗らないなとか、今日行きたくないって思う日もあるじゃないですか。そんな時に横にもう一人いると、お互いになんとなく頑張らなきゃいけないなっていう気持ちになるんです。」

 

最後に、「座右の銘」をうかがってみた。

 

「座右の銘ではありませんが「なんとかなる」ですね。ジェットコースターみたいな人生でしたけど、結局なんとかなっています。最終的に繋がるんですよね。たとえばこの「壽庵」という名前も、本当は20年前、婚礼のお仕事を始める時に考えたものが、長い年月を経てカフェをやろうと思った時に、やっと出番が来た!と思ったんです。このお家だって、もともとは取り壊す予定だったものが、いろいろな要因や偶然が重なって現在に繋がっています。」

 

「僕自身はここで育っているので別になんとも思わないようなことでも、「これが気に入った」とか「こんなことができそう」っていうのから始まっています。変な話、物が溢れていたからこそ火鉢が見つかったり、撮影に使えそうな小物が出てきたりしてますから。本当に巡り合わせですね。」

 

「なんとかなる」の精神で、これまで二人三脚で歩んできた永井さんご夫婦。その時々で選択してきたことが、図らずも現代にマッチし、すべてが良い方向で今に繋がっている。これからも自分たちのペースで、楽しみながら、のんびりと続けられていくだろう。

 

 

 

 

 

 

火鉢かふぇ壽庵

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