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可児市にある「RUCK CAFE(リュックカフェ)」をご存知だろうか。
本格的なエスプレッソと、アウトドアの調理器具であるスキレットを使用した料理やスイーツが特徴的なカフェだ。今回は、代表の西園 睦美(にしぞの むつみ)さんと、娘さんの西園 歩未(にしぞの あゆみ)さんにお話を聞かせていただいた。
- アウトドア調理器具を取り入れたカフェ
- ユニークなコンセプト「コーヒー×ご飯」
- 持続可能な秘訣は変化にあり
- 予想を上回る流行の力
- 創業時から変わらぬ想い
①アウトドア調理器具を取り入れたカフェ
店内は、ウッドをふんだんに使用しアウトドアグッズなどもインテリアとして散りばめられている。店内の雰囲気からもアウトドアをコンセプトにされていることが伝わってくる空間だ。
まず初めに、店名である「RUCK CAFE」の由来をうかがってみた。
「アウトドアをベースにしたテーマで始めたお店なので、アウトドアに関連する店名にしようと思い、リュックサックのリュックから取りました。私がリュック・ベッソン(フランスの映画監督)が好きだったのでちょっと綴りは違うんですけど、英単語の”ruck”と”リュック”をかけている感じでもあります。」
睦美さんの好きな物が店名に込められているのだと話してくれた。
一方で、アウトドアがベースのカフェというのは、一体どういうことなのだろうか?
「オープン当初は、店の一角でアウトドア雑貨を販売していたんです。ランチもアウトドア用品で提供していました。今でもパンケーキや焼きカレーなどはスキレットを使って提供していますし、シェラカップにマフィンを入れたりしています。」
以前はアウトドアの雑貨販売をしていたり、アウトドアでよく使われる調理器具で料理やスイーツを提供していたのだという。かなりアウトドアに特化していたとうかがえる。
「もともとアウトドアな雰囲気のお店にしたかったんです。アウトドア好きな人がいらしてキャンプの話しをしたりとかっていうのもあったので、そんな感じにしていけたらなっていうのがありましたね。」
どうしてアウトドアの雰囲気にこだわったのか理由を尋ねてみた。
「夫がアウトドアが好きなんです。以前は家族でキャンプへよく行っていました。自分たちのお店なので、好きなことをやろうと考えて、アウトドアを選びました。会社名は合同会社タイムズアウトドアなんです。夫も一緒に家族で経営しています。」
趣味から取り入れたのだと話してくれた。趣味の知識を活かしつつ、モチベーションも高められるという、自分たちの会社だからこそ出来る。良いところ尽くしだと感じた。
RUCK CAFEは2016年1月にオープンし、もうすぐ10周年を迎える。(※インタビューは2024年8月)
10周年ではどんなイベントを開催されるのか楽しみだ。
②ユニークなコンセプト「コーヒー×ご飯」
西園さんご夫婦は二人とも出身が可児市ではないという。どういった経緯で可児市を選んだのだろうか?
「ずいぶん前ですけど。私が高校生ぐらいの時に可児市に引っ越してきたんです。その当時は本当に何もなくてあまり楽しい街ではなかったんです。それから何年も経って、子供が生まれて、その子供たちも可児市のことをそんなに楽しいとは思っていない。それで可児市をもっと面白い街にしたいなとずっと思っていました。」
可児市での起業を選んだ理由を話してくれた。睦美さんは、面白い街には良いお店があることに着目し、ご自身がそういったお店を作りたいのだと語ってくれた。
お話を聞いていると、睦美さんはカフェや飲食店の経験や料理の専門学校出身というわけではないそうだ。未経験からカフェを創業することに至った経緯をうかがってみた。
「当時、可児で美味しいエスプレッソを飲めるところがあまりなくて、スタバもなかったんです。美味しいエスプレッソが飲みたかったので、無いなら自分達で作ろうってことになってカフェになりました。」
美味しいエスプレッソを提供したいという思いで、本格的なエスプレッソが出せるエスプレッソマシンを導入し、オープンに踏み切ったのだという。
エスプレッソに力を入れているというが、それ以外のメニューの特徴についても伺ってみた。
「美味しいご飯と美味しいコーヒーを提供しているところが特徴かなと思います。当時エスプレッソが美味しいコーヒー屋さんで、美味しいご飯が食べれるところってあんまり聞いたことがなかったんです。スイーツはちょっとしたお菓子が充実していれば十分かなとも考えていたので、美味しいエスプレッソが飲めて、ご飯も美味しいものが食べれたら他にどこも行かなくても良くって楽なんじゃないかなっていう風に思ったのがきっかけでした。」
美味しいコーヒーが飲めて、美味しいご飯を食べられる、そこに重きをおいたのだという。今でこそあるかもしれないが、確かには当時そういったお店があるかというと浮かばない。
カフェはスイーツとコーヒーのセットが溢れている現代。RUCK CAFEでは「美味しいご飯と美味しいコーヒー」という組み合わせが楽しめる。
普段と少し違う組み合わせを体験してみたい方は、一度訪れてみてはいかがだろうか?
③持続可能な秘訣は変化にあり
エスプレッソをメインでスタートすることになったRUCK CAFE。
Instagramやホームページで写真を見ていても、お洒落でクオリティの高いメニューばかりだ。料理などのメニューはどうしているのだろうか?
「私は料理がわりと好きなんです。なので、料理も焼き菓子などのスイーツも、全て私がいろいろ調べてりしてレシピを考え、スタッフと一緒に手作りしています。」
これには驚いた。料理が好きだという睦美さんは、料理もお菓子作りも独学からスタートして、現在に至るまでRUCK CAFEのメニューを作っているのだ。
「マフィンはオープン当初から出していて、今もずっといろんな種類を出しています。現在はマフィンやキッシュなどは季節に合わせて内容を変えています。」
インタビューの際にマフィンをいただいたが、生地はふわふわでしっとりとしており、中にオレンジのピールが入っていた。甘さ控えめで非常に美味しかった。
RUCK CAFEを訪れた際は、ぜひ「本日のマフィン」を食べてみてほしい。
味にも定評を得ており、ランチが一番で、次にキッシュ、パンケーキ類の順に人気メニューだという。
今後新たに出す予定のメニューはあるのだろうか?
「米粉のパンやケーキ、マフィンなども考えていて、既に試作を何度もしています。売るとこまではまだ時間が掛かりそうですが、少しずつ準備している感じです。」
小麦粉から米粉への変更をするメニューを考えているという。
現在のランチは野菜たっぷりで健康を気にかけていることがうかがえる。今回の米粉への切り替えは低アレルゲンメニューに関連づくところがある。
健康を考えたメニューを目指しているのだろうか?
「そう思われている方もいらっしゃいますが、特にそういうわけではないです。たまたま野菜が多いランチだったり、米粉で美味しく作れる物もいっぱいあるので取り入れようかなという感じです。なので、小麦粉で作った方が美味しいと思ったものは小麦粉を使用していますよ。」
おいしいを追求したメニュー開発なのだと話してくれた。流行っているからと手当たり次第に変えるのではなく、より良い物へ変化する場合だけ変えていくというのが、お客様にとっては嬉しい限りだ。
この変化の取り入れ方こそが、9年目を迎えてこれからも長く続く秘訣なのもしれない。
④予想を上回る流行の力
RUCK CAFEで人気のメニューについてうかがってみた。
「お店を初めて少しした頃に、アウトドアっぽいデザートを出したいなと思い、スキレットでパンケーキを出すようにしたんです。そうしたら若い方がSNSで広めてくださって、今ではパンケーキを求めて来てくださる人が沢山いらっしゃるくらい、人気メニューになっています。」
いい変化が沢山起こる一方で、課題に感じている点があるのだとも話す。
「パンケーキが流行ったのは意図していなかったんです(笑)。もちろん多くの方に喜んでいただくのは嬉しいんですけど、予想以上に独り歩きしちゃって、エスプレッソとご飯というコンセプトからはずれてしまったので、驚いています。」
人気商品が増えるという嬉しい内容のように感じたが、どのような課題があるのだろうか?
「パンケーキを目当てに来てくださるお客様と、ご飯を目当てに来てくださるお客様とでは、客層が異なるんです。私たちの考えていたターゲットとの相違を課題に感じています。」
もともとのターゲットは40代女性で、ご飯を求めていらっしゃる方は理想的な集客が出来ていたが、パンケーキをお求めの方は若い人が多く、予想していなかった状況なのだという。どちらも人気があるからこその課題なのだ。
課題はもう一つあると話す。
「コロナでテイクアウトとか弁当とかを始めたんですけど、そのためにアウトドア雑貨の販売をやめて、アウトドア感が薄れてきてしまったことも課題ですね。」
コロナ禍に合わせた事で当初のアウトドアが薄れつつあることと、パンケーキがSNSで知名度を上げて人気メニューになったことによる、ターゲットの相違が起きている事が課題点だと話してくれた。
コロナもSNSのトレンドも、どちらも流行の変化である。少しずつのものもあれば一気に流れが変わることがあるため、合わせる事が大変なのだ。改めて、飲食店経営の難しさを再認識させられるお話だった。
⑤創業時から変わらぬ想い
今後の展望や目標についてうかがってみた。
「お店を2つに分けることは視野に入れています。課題のお話でもあった通り、コーヒーとご飯のお客様とパンケーキのお客様で客層が大きく変わるので、直近の目標はその2つで店舗を分けることです。」
当初のアウトドアという方向性も薄れてしまっているため、同時に方向性も整理したいのだと話してくれた。
長年の変化で色々変わってきたが、ターゲット層のズレはやはり大きい。それに対してお店を2つにするという対処は大きな挑戦に感じるが、どちらも人気という点を考えるとものすごく理にかなった解決策だ。
もう一つ、睦美さんの夢があるのだという。
「だいぶ先になると思うんですけど、最終的には可児市でキャンプ場をやりたいですね。私たちもこれまでにいろんなキャンプ場を利用したんですけど、こんな風だったらいいなっていうのが私たちの中にもあって、それが実現できたらいいかな。」
西園さんご夫婦が思い描くキャンプ場には、レジャー体験が出来る場所や、ご飯を食べれる施設、犬と遊べる工夫、式場としての利用など、様々な構想があるのだと語ってくれた。
どれもすごく魅力的だった。
「それが流行ったら可児市に人も沢山来てくれるようになって、もっと面白くなると思うし。」
西園さんは、創業のきっかけでもある「可児市を面白い街にしたい」という熱い想いが今でも変わっていない。9年経っても一切変わらないことに感銘を受けた。
お店の2分割もキャンプ場の設営も、どちらもぜひ実現してほしい。
周囲の流行に流されず、無いものは自分達で作り出すRUCK CAFE。今後、可児市をどのように盛り上げていくのか楽しみだ。