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大垣城の麓にあるイタリアンのお店「CUCINA(クッチーナ)」をご存知だろうか。大垣の地で初めてミシュラン一ツ星を獲得した、県内でも上位を争うイタリアンのお店だ。今回はオーナーシェフの田中 照道(たなか てるみち)さんにインタビューをさせていただいた。
- 店名の由来・創業の経緯
- 料理人としての幸せ、追求した物
- ここまで導いた、たった一つの考え方
①店名の由来・創業の経緯
店名のクッチーナについて尋ねてみた。
「イタリアンなのでイタリア語の台所って意味のクッチーナから命名しました。似たような店名で クッチーナ〇〇〇〇 っていうお店はよくありますが、日本で一番のクッチーナになるぞという想いで、余計な物は何も付けずクッチーナだけにしました。」
店名の由来と店名にかける強い想いを話してくれた。クッチーナの創業に至る経緯について伺った。
「僕の出身は大垣なんです。小さい頃からコックさんになりたいという夢がありました。それで何料理にするかって考えていた時にイタリアンだったらパスタだけだろうと思って軽い気持ちでイタリアに行ったのはいいんですけれど、本場は想像を遥かに超えるレベルの高さだったんです。」
料理人になるのは小さな頃からの夢だったのだという。
「僕が勉強に行った所は成績を上げれば良いレストランに試用されるという環境だったのですが、負けず嫌いな僕は気が付いたら一流のレストランに行ける程に成長していたんです。それから2年くらいイタリアの一流レストランで経験を積んで、2000年に地元の大垣へ帰ってきて創業しました。」
創業に至るまでの経緯を話してくれた。田中さんはイタリアのI.C.I.F(イチフ)という州政府公認の料理学校を卒業後、イタリアに4店しかないミシュラン三ツ星レストランに師事して経験を積まれたのだという。※レストラン名等の詳細はHPに記載有り
2000年に創業されてから現在に至るまでの20年以上もの間、成長され続けているのはイタリアの一流レストランでの経験があったからこそなのかもしれない。創業当時のお話を聞いただけだが、インタビューの続きが楽しみになっていく。
②料理人としての幸せ、追求した物
クッチーナはミシュランの獲得こそしているが、単店舗体制なのだ。多店舗展開をされる予定はあるのか尋ねてみた。
「今はもう考えていません。というのもお店を始めた当初は多店舗展開に憧れてお店をどんどん増やしていました。ですが、ある時を境にどんどん縮小していくことを目指したんです。」
これには驚かされた。元々は多店舗を目指していたが、途中から敢えて縮小したのだという。どのような事がきっかけになったのか伺った。
「日本へ戻ってお店を始めた当初は多店舗展開に憧れていて、4店舗くらいまで順調に増やしていたんです。そこからもっと店舗を広げるために勉強しようと思って東京の学校に通いました。店舗を増やしてお金持ちになることを目標としているような学校だったのですが、1年くらい通った頃のある日、何している時が自分にとって幸せなのか?って考えたんです。それで食事をしてもらって「ご馳走様、おいしかったよ。」って言ってもらう事が、僕にとってお金儲けより幸せだと気付いたんです。それを追求するためにどんどん小さくしていきました。」
田中さんは料理を提供する上で、自身が幸せを感じる「本当にやりたい事」に気が付き追求していったのだと話してくれた。
「今は冷凍食品だっておいしい。そんな時代だからこそ、ただ食べるんじゃなくて、食べることを提供する。」
「小さくするっていうのはお客様にしっかりと行き届かせるという点で重要でした。でもそうしたことを突き詰めていったらミシュランが取れたりして、結果的に繋がったみたいな感じですね。」
お客様に行き届かせる。これは、料理だけではない。”空間”も含めてなのだ。店内に入って一番に目に入るのが壁一面に広がる調理器具のアート。とてもお店とは思えない、どこかの美術館のようだ。料理・空間・サービス、すべてでお客様を感動させる事、それこそが”行き届かせる”ことだと痛感した。
ミシュラン獲得まで繋がったのは、自分のやりたいことが”お客様を喜ばせる事”という田中さんだからこそではないだろうか。本場で鍛え上げた料理の腕と田中さんの人柄が合わさってこそ今のクッチーナがあると確信させられる、ものすごく素敵なお話を聞かせていただいた。
③ここまで導いた、たった一つの考え方
田中さんが大切にしている事を尋ねてみた。
「何でも良いから一番になるっていうことを大切にしています。とにかくその分野で一番にならないとって考えています。」
その分野で一番になる、それを大切にされているのだと話してくれた。
「日本一高い山は富士山、二番目は?ってなると分からない人がほとんどだと思います。だから一番じゃないとダメなんですよ。」
例として話してくれた日本の高い山も、二番目はたしかに分からなく、非常に納得だった。
「これからはゆっくりでも、日本で一番のお店にしたい。何らかの形であれ、ちっちゃいこと言ってもダメなので。」
この”一番になる”というたった一つの考え方があったからこそ、幼少期の頃の夢を叶え、その上で地域初のミシュラン一ツ星獲得まで届いたのだ。実際にやって見せている田中さんが言うのだから説得力しかない。熱い言葉とは裏腹に、田中さんのとても優しい笑顔と人柄に一気に惹き込まれた。
今回のインタビューでは人生の勉強になるようなお話を聞かせていただいた。一番になることを目指して挑戦する田中さんの姿勢を、私達も見習いたいと感じた。これまでも成長をし続け、ここから日本で一番のイタリアンを目指すクッチーナから目が離せない。