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各務原市にある「つけ麺屋醸(ジョー)」をご存知だろうか。
約30年にわたり和風料理や洋食、てんぷら専門店などで経験を積んできた料理人による、素材の良さを最大限に生かしたこだわりのつけ麺と肉料理をいただけるお店だ。今回は店長の竹内 勝馬(たけうち かつま)さんにお話をうかがった。
- 素材の旨味をとことん楽しめるつけ麺
- 店名の由来になった2人のジョーさん
- 大手電機メーカー勤務から料理の道へ
- 岩塩やレモンだけでシンプルに味わえる麺
- お客様の笑顔が料理の原動力に
①素材の旨味をとことん楽しめるつけ麺
「つけ麺屋醸(ジョー)」は、百十郎桜と呼ばれる桜並木からほど近い場所で、2024年6月にオープンした。イオンタウン各務原の東に位置しており、買い物ついでに立ち寄りやすいロケーションも魅力だ。店舗外観はカフェのようなスタイリッシュなデザインで、入店するとその心地よい雰囲気に癒される。
特におすすめなのが、「肉祭りの極醸」という一品。ローストビーフ、チャーシュー、塩麹鶏天、シューマイを贅沢に盛り付けた、肉好きにはたまらないメニューだ。特にローストビーフは、他のラーメン屋やつけ麺屋では見かけない一品。ボリューム満点でありながら、しっかりとした味付けと素材の旨味が際立つ。
「醸の特製塩麹鶏天」は、ふんわりと柔らかい鶏天に、塩麹によって一層風味豊かに仕上げられており、さっぱりとした味わいが特徴。つけ汁との相性も抜群で、何度でも食べたくなる味だ。
同店は、もともと天ぷら専門店「天ぷら酵房Fritto」として営業していたが、つけ麺専門店として新たにスタートを切った。開店にあたってはクラウドファンディングを実施。感謝の気持ちを込め、支援してくれた方々のお名前をホームページに掲載している。
②店名の由来になった2人のジョーさん
竹内さんによると「つけ麺屋醸(ジョー)」の名前は2人の人物に由来するという。1つは『あしたのジョー』だ。主人公、矢吹丈の格好良さと強さに憧れた。そしてもう一人は、竹内さんがお世話になった人物だ。
「以前勤めていた、洋食のお店で約20年間店長と責任者をしていました。そこでは、ビーフシチュー、ローストビーフ、ハンバーグ、ステーキなどの肉料理を作っていました。そのとき一緒に働いていたのが、10歳くらい年上のジョーさんです。もう亡くなってしまったのですが、どんなことがあっても感情を表に出さない、優しくて強い方でした。その2人のジョーさんのように、頼れる優しさや素晴らしい人間性を併せ持ちたいと考えたんです。」
では、なぜ「醸」の字を選んだのだろうか?
「つけ麺屋をやる前は、4年間「天ぷら酵房 Fritto」というお店をやっていました。工房のコウが発酵の酵なんです。そこで自家製で塩麹や醤油麹、甘酒や酒粕を作っていました。」
「つけ麺屋醸を始める時に、お肉のバリエーションが豊富なお店、つけ汁・麺・肉の三拍子が揃ったお店にしようと考えました。チャーシューにも、自家製の塩麹を使っています。発酵料理を続けていくという意味で、醸すの字を使いました。」
当時の看板メニュー「塩麹鶏天」は、今もつけ麺屋醸で味わえる。
③大手電機メーカー勤務から料理の道へ
学生時代から食べることは好きだったが、最初から飲食の道に進んだわけではなかった。キャリアのスタートは、誰もが知っている大手電気機器メーカー。埼玉県出身の竹内さんは東京に勤務し、約7年間、営業に明け暮れる毎日を過ごしていた。そこで奥様と出会い結婚。そして奥様のご実家は、岐阜で飲食業を営んでいた。
「異業種ではありますが、ぜひ自分にやらせてほしい、とお願いして飲食の世界に入りました。」
まったく別の業種への挑戦、不安はなかったのだろうか?
「もちろん不安ばかりでした。私の知人に飲食店をやっている人がいたので、会社を辞める少し前から勉強のために手伝いに行かせてもらいました。会社を辞めてからは、少しの間そこで働かせてもらい飲食について、いろいろ教えてもらいました。」
「岐阜に行くと決めていたので、妻のご両親も『東京から娘夫婦が来る』ということで、いろいろ考えてくれたんです。そして高島屋で店舗が空いたので、そこで開店することになりました。」
そうして、洋食とお肉料理の店「香風亭」がオープンした。
奥様とともに岐阜に移住した竹内さん。つけ麺屋醸で提供しているローストビーフは、このころの経験が生きているのだ。
④岩塩やレモンだけでシンプルに味わえる麺
つけ麺屋 醸では、全粒粉麺と米粉麺の2種類から選べる。
粉の麺は、九州産小麦を使用し、なめらかな舌触りとモチモチ感を実現。さらに、ニュージーランド産のゴールデン種アマニをローストし、粉末にしたものを加えることで、健康に良いオメガ3脂肪酸や食物繊維を豊富に含んでいる。
一方、米の麺は、国産のうるち米を微粉末にした米粉と、岐阜市の長良川の伏流水を使用し、特許製法で作られている。グルテンフリーであり、特に健康志向の方に嬉しい麺だ。小麦アレルギーがある人も、安心してつけ麺を楽しめる。
「お店の立地は、正直少し不利です。いちょう通りにはたくさん飲食店がありますが、そこから1本奥に入っているので。チラシを配ったり、のぼりを立てたりと、工夫しています。いろいろ新しいことをやっていかなきゃいけないと思っていて、米粉もその一環です。」
麺のおすすめの食べ方を、竹内さんにうかがってみた。
「スープにつける前に、まずは麺だけを味わってみてほしいですね。塩だけでいただく、レモンを絞っていただく、季節によってはスダチやカボスを絞るのもおすすめです。つけ麺を出すときに、必ず岩塩を添えています。」
また、チャーシューもこだわっている。厳選した豚肉を醤油麹とオリジナル醤油のタレで4時間じっくり煮込んだものだ。
「これだけでも十分おいしいのですが、 さらに炭焼き窯で吊るして直火焼きにしています。炭も、せっかくだからこだわりたいと思っていろいろ探しました。そして出会ったのが、岩手県のナラ炭です。」
実は岩手県は、木炭の国内生産量日本一。職人がひとつひとつ丁寧に製炭していている。火付きがよく、不純物が非常に少ないのが特徴だ。この炭をつかってチャーシューが作られているのだ。
塩麹鶏天も、手間暇をかけて作っている。
「鶏肉を塩麹に2日間漬け込んでいます。消化酵素の働きでお肉が柔らかくなるし、旨味も出るんですよ。」
塩麹、醤油麹は奥様の手作り。ガッツリおいしいものを食べたい、健康に気を使いながらおいしいものを食べたい、どちらも叶えられるのがつけ麺屋 醸なのだ。
⑤お客様の笑顔が料理の原動力に
最後に竹内さんに、飲食店を経営するうえでの原動力になっているもの、そしてお店の今後の展望についてうかがってみた。
「20代の頃電機メーカーに勤めていましたが、特に大企業では、開発したものが商品化されるまでに時間がかかります。また、結果は売上として返ってきますが、直接、お客様の声を耳にすることは少ないです。飲食業は、作ったものがダイレクトにお客様の笑顔として返ってくるのが魅力的です。お客様の笑顔が、私の原動力になっています。目指しているのは、繰り返し来ていただけるお店、1人1人のお客様が笑顔で帰ってくださるお店です。そのようなお店が長く続くように頑張りたいです。」
30歳から料理を作り続け、様々な料理経験を活かし、新たな挑戦も加えた『つけ麺屋 醸』。 長年の経験で培われた技術と知識、そして食材への愛情が、メニューに凝縮されている。
醸すという言葉の語源は、「噛む」から来ているそうだ。麹の力で旨味が引き出された肉と麺、そしてスープが織りなすハーモニーを、じっくり噛み締めて味わいたい。ラーメンが好きな人、肉料理が好きな人、そして健康と美容に気を遣いながら美味しいものを楽しみたい人は、こだわりの一杯を求めて、「つけ麺屋 醸」を訪れてみてはいかがだろうか。