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各務原市にある「PEP UP CIRCLE」(ペップアップサークル)をご存知だろうか。古材を回収して、持ち主の想いと一緒に新しい形に生まれ変わらせる活動をしたり、十’(テン)を拠点に人との交流イベントを試験的に開催している。今回は、PEP UP CIRCLE共同代表 葉山 瑛介(はやま えいすけ)様、株式会社アトリエFUDO 代表取締役 津川 祐輔(つがわ ゆうすけ)様、戸高 翼(とだか つばさ)様の三人にお話をうかがった。
- 持ち主の想いを次の世代へ紡ぐ「循環」プロジェクト
- 人と接する活動拠点「十’(テン)」を運営
- 「各務原を面白い街にしたい」地元愛がきっかけで共感仲間を増やす
- 自分の手で作る持続可能な未来
- インスタグラムで最新情報をチェック!あなたの得意が活きる!
①持ち主の想いを次の世代へ紡ぐ「循環」プロジェクト
PEP UP CIRCLEは、古材を回収して今の時代に合った形に生まれ変わらせる活動をしている。その際、元の持ち主の想いを引き継いで次の方に伝えたいという想いを込めて、回収することを「レスキュー」と呼んでいる。
そんなPEP UP CIRCLEの名前の由来についてうかがった。
「PEP UPは和製英語で『活気づける』という意味があり、CIRCLEは『循環』や『仲間』という意味があります。私たちがレスキューした物にひと手間加えることで、新しい循環の輪を広げられる。さらに、元の持ち主の想いや歴史を一緒に回すことで、物を捨てないアップサイクルやDIYの文化を醸成できたらという想いを込めて名付けました。」
リサイクルショップのように回収したものをただ販売するのではなく、処分されるものを新しくリノベーションして、次の方に届けるという素敵な試みである。
例えば、お酒を入れて使っていたとっくりを花器にアレンジするなど、元の使い方とは違う新しい使い方を提案したり、お客様とディスカッションしたりする。
そういった物は、解体やリノベーション予定のお宅、解体現場に行ってレスキューすることが多いという。
「価値があるものを買い取って再販売するというよりは、持ち主が手をつけられない状態になってあとは捨てるだけのものを対象にしています。なぜなら、大切な想いがこもっているからこそ、簡単には手放したくない気持ちが隠されているからです。そのため、持ち主の想いをすくいあげて、大切に使ってくれる次の方へつなぐというコンセプトを設けています。」
捨てたくない、大切にしておきたいものを、イノベーションする取り組みは珍しい。
単なるリサイクルショップではなく、持ち主の想いを汲んで次の持ち主に最適な形でバトンをつないで、物と人を循環させる。物を大切にする文化を広めていく活動が、PEP UP CIRCLEが目指す姿である。
②人と接する活動拠点「十’(テン)」を運営
PEP UP CIRCLEは、解体現場でのレスキューがメインの活動だが、その一方で人と接する活動拠点として『十’(テン)』という店舗を構えている。
大正時代頃に建てられた歴史ある建造物を店舗としている。もともと周辺の古い建物が解体されて、月極駐車場になっている現状があった。ここも放っておいたら、駐車場になるのではないかと懸念がある中での出来事であった。
「CIRCLEと謳う以上、さまざまな方を巻き込んで仲間を増やしていきたい。そんな中、今後の各務原の盛り上がりに貢献できるような使い方をしたいとなっていたんです。各務原で育ってきた者として、景色を守りたい、継承したいという想いがあり、この場所を活動拠点にしました。」
これまでテンでは、お茶の提供、かき氷、夜にお酒を提供するポップアップイベント、お土産店など、日替わりでさまざまな試みにチャレンジしている。
「テンの運用は、大規模なレスキューとしてとらえています。さまざまな試験的な試みをしている段階で、この先お店として成り立つのか、維持ができるのか、どのようにつないでいくのか試行錯誤の状態です。」
試験中だからこそ、どうなっていくのかわからない。未知数で伸びしろしかない中で、なんとかしてここを続けていきたいと三人とも意気込みを語っていた。
③「各務原を面白い街にしたい」地元愛がきっかけで共感仲間を増やす
三人とも各務原出身で、昔はいろいろなお店があったと振り返る。時代の流れで空き家が増えて衰退していき、需要があるにもかかわらず大型店舗へ人が流れていく。各務原を面白い街にしたいという地元愛を根本に持っている。
「街を楽しくするコミュニティである『暮らし委員会』の中の一つの活動が広がり、PEP UP CIRCLEが出来上がりました。自分一人だけで一歩踏み出すのは難しいですよね。暮らし委員会があったからこそ、そこに乗ることができ当事者になれました。」
同じ想いの人はいるだろうが、出会えるきっかけがない。そういう意味で、各務原に暮らし委員会があるのはとても羨ましいことである。
PEP UP CIRCLEの取り組みは複合的な活動なので、口で説明するのが難しい。しかし、最近イラストレーターの協力を得て、コンセプトや活動内容を簡単に伝える冊子を作っているという。
「冊子作りは以前から考えていたのですが、私たち三人だけでは手が回らず進んでいませんでした。そんなときにたまたまテンに来たイラストレーターが、私たちの活動に共感してくれたのです。その方はイラスト経験があるもののメインではなかったため、もっとイラスト作成をしたいという想いがあり、双方にメリットがあったため今回つながりました。」
共感を生みながら、みんなが同じ方向を向いて、同じ想いを持った人たちが、PEP UP CIRCLEの取り組みに少しずつ関わっていく。その他にも、カメラマンやデザイナー、コーヒーを作る人など、みんなの得意を持ち寄って動かしているのである。
④自分の手で作る持続可能な未来
PEP UP CIRCLE立ち上げ当初、長野県下諏訪にあるリビルディングセンタージャパン(リビセン)を目標にした。この組織は、DIY 文化の強いアメリカのポートランドにあるリビルディングセンターが、街で使わなくなったものを集めて街の人に届ける活動をしていて、同様の活動を日本に取り入れた背景がある。
リビセンは、古材を引き取る人は昔からいるが、DIYの専門家でなくても、普段の暮らしの中で取り入れられる文化を作ることを目標としている。そして、それが全国に広まれば、救える物や機会が増えると考えているという。
「リビセンは、自分たちで全国対応するのではなくて、地域ごとに分かれて対応できたらよいと考えています。今は全国で約80組が参加していて、私たちは一つの拠点として各務原周辺で行っているのです。そのため、リビセンからレスキュー依頼がきて連携することもあります。」
PEP UP CIRCLEはリビセンの考えと活動に共感してここまで進んできた。そのため、リビセンが古材を取りにいくことを『レスキュー』と表現していたことに影響を受けて、PEP UP CIRCLEでもレスキューと呼んでいる。
各拠点ごとにそれぞれ想いが違うし、やり方も違うし、全く一緒ではないが、同じ方向に歩いている仲間たちだと称している。
PEP UP CIRCLEでは、解体作業を自分たちで行ったり、解体に興味がある方を呼んで参加してもらうような取り組みをしている。その理由は、物を大切にすることにつながるからだと話している。
「作る過程を見ると、自分のお店のような感覚になるので愛着が増します。自分たちの手を動かすから大切にするのです。」
ただ外注を受けて販売するような組織ではなくて、一人一人が自分の手を動かして、できる範囲で自分の暮らしを作っていく人が増えていくことで、自分たちがいなくても長く続いていく文化を形成できる。
みんながそうなれば、いいものはずっと残り続けるはずである。持続可能な社会の一助となるだろう。
⑤インスタグラムで最新情報をチェック!あなたの得意が活きる!
PEP UP CIRCLEとしての現状の悩みは、人手不足である。例えば、オンラインショップを立ち上げたが、手間の問題でなかなか進められていなかったり、取り組んでいる中で、「こうなるともっといいのに」と思うことが多いという。
「レスキューでは、現状解体業者からの依頼が多いですが、本当は家主からの依頼がほしいです。解体業者は仕事の特性上、すぐに解体しないといけないので、それに合わせてこちらも短い時間でのレスキューとなります。そのため、家主からの依頼をお待ちしています。」
このような情報発信も、人手不足により十分でない。その一方で、冊子を作ってくれる仲間がいたりと、それぞれの得意分野を生かして少しずつ広がり進んでいる実感はある。
さらに、レスキューに関する自分たちの想いを語っていた。
「レスキューの時間をもっと取れると、いろいろな方を呼んで見てもらえるので、僕らが引き取ることなく、その場で次の方へ引き継ぐこともあります。家主の想いを聞きながら、ストーリーも一緒にレスキューして次の方につなげたいです。」
このような想いを持ったPEP UP CIRCLEの目標は「ひと・もの・ことが行き交うまちの交民館」を作る事だそうだ。
その為にクラウドファンディングを行なっている、PEP UP CIRCLEの活動を応援したいという方はクラウドファンディングに参加されてみてはいかがだろうか。
https://www.oco-s.jp/project/ten
また、PEP UP CIRCLEのインスタグラムを見てほしい。活動内容やワークショップなどのイベントの事前告知を発信しているので、最新情報を得ることができる。
また、拠点であるテンに興味があれば、直接行ってみることをオススメする。コンセプトや想いを話してくれるし、人のつながりをリアルに体験できるだろう。PEP UP CIRCLEの考えに共感できる方はぜひ、活動に参加し、持続可能な未来づくりの一歩を踏み出してみてほしい。あなたの参加が、新たな循環の輪を広げる力となる。