人生の飛翔を後押しする場所「カフェふくろう」を訪ねてみた。

 

 

TOM
フクロウって知性の象徴なんだね
SARA
そういえば、映画やアニメを見ても、フクロウは賢いキャラなことが多いわね。
TOM
でも、クマだって知性と癒やしの象徴なんだよ!えっへん!
SARA
・・・あなたは当てはまるかしら・・・

 

この記事は約8分で読めます。

 

岐阜県関市にある「カフェふくろう」をご存知だろうか。1989年から続いている「カフェ・アダチ」の中で、夜に不定期で開かれるイベント的なカフェだ。仕事でくたくたになったサラリーマンを癒やす場所だけでなく、これからお店を始めたい人が食べ物を販売できる場所でもある。カフェふくろうという名前に込めた想いや、カフェ業界に飛び込んだ理由、そしてチャレンジしてみたいことなど、代表取締役の小森 敦也(こもり あつや)さんにお話をうかがった。

 

今回のツムギポイント!
  1. 「知」を共有して希望に出会うカフェ
  2. 飲食店を開きたい人が食べ物を販売
  3. サラリーマンをやめてカフェの世界へ
  4. 個人事業を始めたい人の相談に乗る
  5. 主役よりプロデューサーをやりたい
  6. 「ゲリラふくろう」でフードロスに取り組む

 

①「知」を共有して希望に出会うカフェ

カフェふくろうというネーミングは、小森さんの好きな言葉である「ミネルヴァのふくろうは黄昏時に飛び立つ」から来ているという。この言葉にはさまざまな解釈があるが、小森さんはこのように考えている。

 

「僕の中では「夜」という絶望の暗闇から希望に向かって飛び立つイメージです。僕自身、サラリーマンをしているときは絶望の中にいました。自分だけの生き方がしたくて、その場所から飛び立ってカフェの仕事に就きました。仕事が終わってからただ家に帰るだけではなくて、自分の生き方を模索している人に場所を提供したいと考えました。」

 

ミネルヴァはローマ神話に出てくる女神で、音楽・詩・医学・知恵・商業などさまざまなものをつかさどっている。そしてミネルヴァが従えているフクロウは知恵の象徴だ。生きていく上での知識やヒントになるものを共有できる場所にしたい、そのような想いが店名に込められているのだ。

 

「間借りしているカフェ・アダチは17時半に閉店します。そうすると、サラリーマンの方は間に合わないですよね。仕事後にお酒を飲める店はたくさんありますが、コーヒーを飲める店は多くありません。そこでこのような場所を作ったのです。」

 

仕事で疲れた大人たちが羽根を休めてリラックスし、新しい世界に飛び立つ力を得るための場所。それがカフェふくろうなのだ。

 

 

 

 

②飲食店を開きたい人が食べ物を販売

 

カフェといえば独自のお菓子を提供するところも多い。しかしカフェふくろうでは、お菓子を作らないという。

 

「自分が作るのではなく、お菓子やパンを持ってきてもらう形にしました。」

 

 

 

 

なぜ、そのようなスタイルを選んだのだろうか?

 

「個人でお菓子やパンを作って、それを販売したいと考える人はたくさんいます。しかし自分の店を持つのはハードルが高いですよね。まずは自分で作ったものをお客様に食べてもらって、反応をみたい、感想が聞きたいという人が多いので、その人たちに持ってきてもらうことにしたのです。」

 

そうしてカフェふくろうでは、月1回、お店を持ってみたいと考える人に場所を提供するサービスを始めた。予約は半年先まで受け付けているが、すぐに埋まってしまうという。

 

どのようなお客様がこのサービスを利用するのだろうか?

 

「いろいろな段階の方が来ますね。もうすぐお店を始めたいけど、プレオープンの前にカフェふくろうで売りたいという人もいます。」

 

食べ物を販売しようと思ったらキッチンが必要だ。しかし借りられるキッチンがなかなかない。そこで、カフェの厨房を格安で貸し出しているというわけだ。

 

「自分の作ったお菓子を売りたいと考えている人を、サポートするイメージです。その後、実際にお店を始めた方もいますし、イベントで出店したり、マルシェで販売したりという方もいます。すでにお店を立ち上げた人が「集客に伸び悩んでいるので、新しいチャンネルとして使いたい」と利用したケースもあるんですよ。」

 

食べ物に制限はあるのだろうか?

 

「ないですね。めちゃくちゃなことさえしなければ、どのように使ってもらってもかまいません。食べ物を作ってもらって、僕はコーヒーを淹れる。そのようなイメージです。」

 

なぜ、月に1件なのだろうか。

 

「あまりたくさん受けすぎてしまうと、不測の事態に対応できないからです。病気になったとか急用が入ってしまったりと、いろいろなことがありますよね。これまでも1回だけですが、事情でお客様が入れなかったことがあったんです。その時は別の方に頼みました。最悪、他に見つからなければ「今月は休みます」でいいですし、ゆるくやっています。」

 

 

③サラリーマンをやめてカフェの世界へ

 

カフェを始める前はサラリーマンだったという小森さん。何年間サラリーマンをしていたのだろう?

 

「30歳でカフェ業界に入ったので、7、8年ですね。」

 

サラリーマンを辞めることに対して、不安はなかったのだろうか?

 

「不安は一切なかったですね。むしろ勤めているときの方が、精神的に不安を抱えていました。この先どうなるかわからないのは、サラリーマンでも同じですよね。」

 

確かに、大企業でもずっと安泰とは限らない。

 

「僕の場合、いつまで嫌な仕事を続けないといけないのだろうという不安の方が、ずっと大きかったのです。独立することへの不安は一切ありませんでした。」

 

独立したときよりも、むしろ卒業して就職したときの方がずっと不安だったという。

 

「明らかに勤め人に向いていないことは、自分でもわかっていました。しかし若くてお金がなく、生活のためには就職しないといけない。その頃の方がずっと不安でしたね。今思えば甘かったと思いますし、運が良かっただけなのかもしれません。しかしアイディアさえあれば、何とかなるだろうと考えていました。」

 

当時の小森さんの「ここから飛び立ちたい」という気持ちが「カフェふくろう」という名前の源泉となっている。

 

独立できる職業にはさまざまなものがあるが、なぜカフェを選んだのだろうか?

 

「スキルが何もなかったからです。今だとWeb系のフリーランスの人も多いですが、自分にはそのようなスキルはありませんでした。料理を作れるわけでもないので、カフェになったんです。カフェは料理ができなくても、コンセプトや雰囲気がお客様の心をつかめれば勝ち。ルールはありません。異種格闘技的な面白さがカフェの魅力です。」

 

そしてコーヒーの勉強を始めた小森さん。カフェ・アダチでカフェ経営のノウハウを学び、創業者の跡を継いで2代目となった。そしてカフェ・アダチの営業時間が終わった後に始めたのが、カフェふくろうというわけだ。

 

「経営者になれば、何をどこまでやるかを決めるのは自分です。やればやっただけ、結果として跳ね返ってきます。いやいや17時になるのを待っていた生活とは、やはり違います。不安になっている暇がないですね。」

 

 

④個人事業を始めたい人の相談に乗る

 

カフェふくろうには「小森の仕事部屋」というサービスもある。小森さんが個人事業を始めたいという人の相談に乗るというものだ。

 

「最初は相談内容を絞っていなかったのですが、自分では対応しきれない相談をする方もいらっしゃったので、個人事業を始めたい人にターゲットを絞りました。そうしないと、魂の叫びを聞いて!という方も来るんですよ(笑)。」

 

そこから、飲食業を個人で始めたい人に対して、カフェふくろうのキッチンを貸し出すなどの活動にもつながっている。

 

影響を受けた人はいるのだろうか?

 

「関市に助六という岐阜県屈指の有名なお蕎麦屋さんがあります。そこの店主が、So-Barというバーを始めたんですね。そこで自分のやりたいように創作料理を提供したり、お酒を出したり、とにかく好きなことを始めたんですね。当時は自分のカフェ事業が硬直していると感じていたときにSo-Barに行ってみて、店主に背中を押してもらったのです。」

 

もちろん、影響を受けているものの、内容はまったく異なる。

 

「当時は僕も何か料理を提供しようかなとか、いろいろ考えましたが、結局今の形態に落ち着きました。目指すところは違っていますが、入口はSo-Barですね。助六さんの伝統と革新のバランスを参考にしています。店主には駆け出しのころから目をかけてもらっていました。いろいろと勉強させてもらいましたね。」

 

平成初期から続くカフェ・アダチの伝統を守りつつ、カフェふくろうでさまざまな挑戦を続ける小森さん。小森さんもまた、伝統と革新を良いバランスで受け継いでいる好例といえるだろう。

 

 

⑤主役よりプロデューサーをやりたい

 

「カフェふくろう」にもっとこんな人に来てほしいというのはあるのだろうか?

 

「いえ、来たい人が来ればいいという感じですね。もともと『こうでなきゃいけない』という縛りから逃れたくて始めたカフェなので、あまりこうあってほしいというのはありません。」

 

カフェはやはり、小森さんを目当てに訪れる人が多いのだろうか。

 

「そういう方もいますね。でも僕はどちらかというと、自分が主役になるよりも、プロデューサー的な立ち位置で、新しいことにチャレンジしたい人をコーヒーで支えたいという気持ちの方が強いんです。」

 

どちらかというと、サポートする側になりたいということだろうか。

 

「そうですね。カフェふくろうを通じて、自分の生き方を見つけてほしいというのが一番のコンセプトです。楽しかったので次はマルシェに出店してみますとか、そのような第一歩を踏み出す手助けをできることが一番うれしいです。僕がカフェを始めた頃は、その前にちょっと試してみるという選択肢がありませんでした。ですので、何かを始めたい人がステップを踏める場所というのを、活動の中で常に意識しています。」

 

念願叶って自分のお店を持てたものの、すぐに経営が立ち行かなくなり閉店してしまうケースが多い。小森さんはその状況に危機感を覚えているという。

 

「今はダブルワークなど、さまざまな手段があります。いきなり仕事を辞めるのではなくて、県内にもいくつかあるチャレンジショップに参加してみたり、マルシェに出たりして、横のつながりを作ることで、困ったときに助け合えます。そうして良い循環が生まれるのです。カフェふくろうを、つながりの輪づくりをちょっとだけ手伝ってあげられる場所にできたらなと考えています。」

 

カフェ・アダチとカフェふくろうを掛け持ちする小森さん、自分の時間がなかなか取れないのではないだろうか?

 

「お金を稼いでプライベートを充実させたいという考えはちょっとよくわからないですね。好きなことをやってお金を稼いでいる、好きなことに時間を費やしているという感覚です。決まったことをやれと言われたり、したくないことをやらないといけないのが嫌で、いまこのような事業をしているわけですからね。」

 

 

⑥「ゲリラふくろう」でフードロスに取り組む

 

カフェふくろうの今後の目標は「背伸びせず、目の前の仕事を丁寧にやること」
そして最近、新たな目標が生まれたという。

 

「先日、ゲリラふくろうというのを開催しました。つながりのあるパン屋さんから、パンが売れ残ってしまうという悩みを聞き、余ったパンをゲリラ販売したのですよ。そしたら、すごく売れたんですね。このままだと廃棄になってしまう食べ物を、カフェで救えないかなというのを考えています。」

 

今、フードロスは大きな問題となっている。この問題に、カフェふくろうならではの切り口で取り組んでいるというわけだ。ゲリラふくろうの告知をInstgramのストーリーズに掲載したところ、想像以上にお客様が集まったという。

 

「見ている人は、見てくれているんだなと驚きました。同じパンでも、場所と時間を変えたら売れるということがわかったので、この経験を活かして何かフードロスの改善につながる活動ができればと思っています。」

 

これからも、初心を忘れずに活動していきたいと語る小森さん。飲食店の開業を考えているけど一歩踏み出せずに悩んでいる人は、ぜひカフェふくろうを訪れてみてほしい。きっとそこにヒントがあるはずだ。

 

 

 

 

カフェふくろう

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です