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岐阜県神戸町を中心にキッチンカーで移動販売をする「たいやきやいた」をご存じだろうか。
2024年3月にオープンした、農薬不使用の米粉100%のたい焼き屋さんだ。今回は、店主の森田 朋実(もりた ともみ)さんにお話をうかがった。
- 家族みんなで美味しく食べられるたい焼き
- 米粉たい焼きができるまで
- キッチンカーでの移動販売を選んだ理由とは
- 米粉や小豆も自家製でつくれたら
①家族みんなで美味しく食べられるたい焼き
「たいやきやいた」では、卵・乳・小麦・白砂糖不使用、甘さ控えめ・粒感強めの手づくりあんこと、岐阜県産の農薬不使用米粉100%のたい焼きを販売している。
かなり店主のこだわりが感じられるが、そもそも「米粉」でたい焼きをつくろうと思ったきっかけはなんだったのだろうか?
「もともと私自身がたい焼きが大好きで、大好きなたい焼きを子どもと一緒に楽しみたい、子どもから大人まで、家族みんなで同じものを食べられたら幸せだなと思ったのがきっかけです。」
“体に優しく、親子で美味しく食べられるたい焼き”がテーマだというが、昔から食材に気をつかっていたわけではなく、森田さん自身の妊娠・出産の経験から、より食材への関心が高まったそう。
「やっぱり自分の子どもには体にいいもの、健康的なものを食べてもらいたいなと思って。添加物だったり、農薬だったりを全て避けることは難しいですが、より体への負担が少ないもの、安心して食べられるものを意識するようになりましたね。水とか調味料とか、細かいところから少しずつですけど。」
より体への負担が少ないものを追求し、試行錯誤を重ねてたどり着いたのが現在のレシピだ。米粉100%のたい焼きは、子どものアレルギーに悩む親御さんからも好評だという。
「1人だけ周りと違うものを食べなきゃいけないとか、食べたいのに我慢しなきゃいけないとか、アレルギー体質で悩むお子さんや親御さんって少なくないと思うんです。私自身、子どもの健康面を気にして大人と子どもでおやつを分けたりしていたので、家族みんなで同じものを共有できるってすごく幸せなことですよね。」
続いて、一度聞いたら忘れられない「たいやきやいた」という名前についてたずねてみた。
「上から読んでも下から読んでも「たいやきやいた」で回文になっているんですけど、かなり材料にこだわった真面目なたい焼きなので、おもしろい部分も欲しいなという想いで、この名前にしました。」
と、笑顔で話してくれた。森田さんのユーモア溢れるお人柄が垣間見えた瞬間だ。
②米粉たい焼きができるまで
もともと飲食業界にいたわけではないという森田さん。卵・乳・小麦・白砂糖を使わず、米粉100%の生地で美味しいたい焼きができるまでの、試行錯誤の時期をこう振り返った。
「レシピ開発を始めたのは2023年の1月くらいからです。家族との時間も大切にしたかったので、毎日朝3時くらいに起きて、6時くらいまでの3時間をレシピ開発に充てていました。子どもとの時間は減らさず、レシピの試行錯誤をするという生活を半年間ほど続けました。いま思えば少しハードだったかもしれませんが、その時は楽しさの方が勝っていたので、あまり大変だとは思っていなかったですね。」
楽しさが勝っていたとはいえ、レシピ開発は決して順調ではなかったという。
「使用する米粉によって食感がかなり変わるので、農薬不使用だったら何でも良いというわけではないですし、卵や乳を使わないで作るというのもすごく苦労しました。試作して、まずは、いちばん身近にいる私の子どもが美味しそうに食べてくれるかっていうのを大切にしました。その後に友人や周りのいろんな方に試食してもらいながら、少しずつ現在の形に近づけていきました。」
生地だけでなく、あんこも手づくりというから驚きだ。
「最初はいろいろ試作をお願いしていたんですけど、今後も長く続けたいく事を考えると自分でやってみようかなと思って自分で作り始めたという感じです。」
生地と同じように、あんこにも森田さんのこだわりが詰まっている。
「うちのたい焼きは「つぶあん」なんですが、これは完全に私の好みなんです(笑)。原材料は北海道産小豆と甜菜糖のみで、粒感が強く甘さ控えめのあんこに仕上げています。ミネラルたっぷりのお水を使っているのも特徴で、口に入れたときの小豆の味の広がり方だったり、味の深みも全然ちがうので、ぜひ一度味わっていただきたいですね。」
③キッチンカーでの移動販売を選んだ理由とは
現在は、基本的に木金土の3日間「太陽キューヴ まちかどスタジオ」の駐車場で販売しているほか、県内のさまざまなマルシェやイベントに出店している。
「マルシェやイベント自体は、たい焼きのレシピが完成して、昨年の7月くらいから少しずつ出店していました。2匹焼きのたい焼き機で、室内のマルシェを中心に出店しながら、少しずつキッチンカーの準備も進めていました。」
たい焼き屋さんの開業について、ご家族や周囲の反応はどのようなものだったのだろうか?
「反対はされなかったですが、心配はされましたね。もともと飲食業界にいたとか、なにか経験があるわけではなかったので、本当に今の仕事を辞めてそれでやっていくの?みたいな。」
店舗ではなく、キッチンカーにした理由をうかがってみた。
「やっぱり「移動販売」できるところがキッチンカーの強みだと思っているので、マルシェやイベントなど、いろんな場所だったり、求めている人のところに行って販売できたらいいなと思ってキッチンカーにしました。」
鮮やかなイエローカラーに、大きなたい焼きがデザインされた車体は、とてもインパクトがあり、遠くからでもわかりやすい。
「このキッチンカーは塗装したわけではなくて元から黄色だったんです。なんとなく黄色と青をメインにしたいなというのはもともとあったので、見た瞬間に直感で「これだ!」と思いましたね。たい焼きの上に、お米に扮した私たち家族が乗っているんですけど、あれはデザイナーさんが私の大事にしたい事などを汲み取ってくださり生まれたんです。」
現在、キッチンカーで販売しているたい焼きのメニューは「つぶあん」「息吹茶つぶあん」「酒粕つぶあん」「薬膳カレー」の4種類だ。(※マルシェやイベントでは「つぶあん」のみ販売している。)
「いろんな方からアイデアをいただいたり、考案・監修などの協力を得ながら、現在の4種類が完成しました。今すぐにというわけではないですが、期間限定のメニューも出せたらいいなと思っています。」
愛知県での営業許可ももらっているそうで、今後は岐阜県内だけでなく、愛知県内での移動販売も検討中だという。
④米粉や小豆も自家製でつくれたら
森田さんの仕事着である「作務衣」。キッチンカーの雰囲気にも合い、とても素敵だ。実は、日本の伝統文化や昔ながらのものを大切にしたいという森田さんの想いが込められているそう。
「たい焼きの販売を通して、日本の素晴らしさも伝えていきたいなと思っています。お米も日本で昔から食べられてきた食材ですし、作務衣も日本らしさが伝わるかなと思って選びました。日本を愛してくれる人がもっと増えたら嬉しいですね。」
米粉たい焼きの販売をしていて、嬉しい瞬間をたずねてみると、
「アレルギーのあるお子様が、本当にどれでもいいの?と言いながら、嬉しそうに自分の好きなものを選んで買ってくれるときなどは本当に嬉しい瞬間ですね。」
アレルギーのある方も安心して食べられるようにという思いで開発したからこそ、嬉しさもひとしおだ。
最後に、今後の展望や夢ついてうかがってみた。
「いまは「たいやきやいた」をもっとたくさんの方に知ってもらうために、いろんなマルシェやイベントに出店しているんですけど、いずれは、どこか固定の場所でできたらいいなと思っています。基本的には固定の場所だけで販売して、マルシェやイベントは月に数回くらいっていうのが理想ですね。」
「今後の展望で言うと、お米を自分で作れたらいいなと思っていて、いま少しずつ準備を進めている段階です。経験がないことなので不安はありますが、生地作りもとりあえず試してみようから始まって、あんこ作りもとりあえず自分でやってみようから始まったので、お米作りもやってみないとわからないので、とりあえずやってみようって感じです。将来的には、小豆とかも自分で作って、自家製のお米や小豆でたい焼きをつくれたらいいなと思っています。」
“体に優しく、親子で美味しく食べられるたい焼き”をつくりたいという想いから生まれた、こだわりが詰まった「米粉たい焼き」。
遠くからでも目を引く鮮やかなイエローカラーが目印だ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。