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関市にある「喫茶・ママンヌ」をご存じだろうか。
外観から内装、食器類など細部までこだわりが詰まった、レトロ好きにはたまらない喫茶店だ。今回は、店主である伊佐地 希予美(いさじ きよみ)さんにお話をうかがった。
- オシャレな雑貨屋からレトロな喫茶店へ
- コロナ禍での新たな試み
- お客様と一緒に創るレトロ空間
- 自分の「好き」を体現し続ける
①オシャレな雑貨屋からレトロな喫茶店へ
17年ほど前から、この場所でお店を営んでいる伊佐地さん。以前は雑貨屋「昭和ママン」として、2017年から「喫茶・ママンヌ」として営業している。開業から現在に至るまでの経緯をうかがった。
「友人がハンドメイドでアクセサリーなどを制作していたこともあり、私自身は店番みたいな感じで、6人ほどで雑貨屋を始めました。最初のうちは半年に1回ほど、徐々に回数を増やしていって、最終的には月に4日間ぐらいのペースでお店を開けていました。そのうち、ハンドメイドブームで各地にイベントも増えてきて、10年ほど経ったときに雑貨屋はもういいかな、という感じで喫茶店に切り替えました。」
雑貨屋を営んでいる時からお菓子やケーキセットなどを提供していたこともあり、「いつか喫茶店をやりたい」と思っていた伊佐地さんだが、当初は開業を反対されていたそう。
「隣が主人の実家でここは離れなんですけど、たぶん田舎なので何か新しく始めるのをあまりいいと思っていなかったのかなと思います。でも理解してくれて、今では協力もしてくれています。私自身はケーキとかお菓子を作るのは得意ではないんですが、今は委託販売なども増えていますし、そういう人たちが、自分でお店をやる前のきっかけみたいになれたらいいなと思っています。」
喫茶店文化が根付く岐阜。競合も多い中、やはり「昭和」や「レトロ」をコンセプトに開業したのだろうか。
「この辺りもやっぱり喫茶店が多くて、ここから歩いて行ける距離だけで7軒もあるんです。意外と激戦区なんですよね。それに、岐阜はモーニング文化が根付いていて、サンドイッチや茶碗蒸しが付いたり、うちもモーニングはありますが、周りの喫茶店には到底敵わないので、「女性が一人でも行ける喫茶店」にしたいと思ってオープンしました。私自身は全然一人でも入れますけど、一人で入れるところがないと友人からよく聞いたので、そういう人たちが、一人でも気軽に入りやすい喫茶店にしたいなと。」
喫茶・ママンヌでは、毎月おやつを作るパティシエが変わるのも特徴のひとつだ。月替わりのメニューは毎月インスタグラムで発信される。シフォンケーキ、カヌレ、ガトーショコラなど、「今月のおやつ」を楽しみに訪れるお客様も多いそう。
②コロナ禍での新たな試み
2020年の新型コロナウイルスの流行。さまざまな規制により客足にも少なからず影響があったが、その中で新たな試みもあったという。
「やはり遠くからのお客様は減りましたが、常連さんは変わらず来てくれる方が多かったですね。コロナ禍で新たに始めたのが、クリームソーダのテイクアウトです。お店のすぐ近くに高校があるので、学生さんはテストを持ってきてくれたらテストの点数分値引きする、ということも始めました。常連で来てくれる学生さんもいて、とてもありがたいですね。」
商工会の勧めで取り入れたというクリームソーダのテイクアウトは、伊佐地さんならではのおもしろい工夫により好評のようだ。
また、毎月美濃加茂市で開催される「超絶蚤の市(ちょうぜつのみのいち)」にも出店しているそう。県内外からさまざまなジャンルのお店が出展されているとのこと。とても美味しいコーヒーが味わえるので、気になる方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
③お客様と一緒に創るレトロ空間
前身の雑貨屋から喫茶店に切り替えた後、内装などもご自身で変えられ、よりレトロ感溢れる現在の姿になったそう。60年代、70年代の昭和レトロがコンセプトだ。喫茶・ママンヌには、全国からレトロ好きなお客様が集まるという。
「一番遠い方だと北海道から、昭和の純喫茶巡りみたいな感じで来てくださったり、大阪や名古屋から定期的に来てくださる方もいますね。あとは、以前レトロな子供服のお店の方が撮影に使わせてほしいと来られて、お貸ししましたね。」
「ソファーなどは営業を終了する喫茶店の店主の方が「うちにあったものを使ってもらえたら嬉しい」と言っていただけたので、譲っていただきました。内装も自分で改装したんです。ふすまを取って広くしたり、天井と壁に布を張ったり、ほとんど自分でやりました。プロではないので、あまり近くで見られると恥ずかしいんですけど(笑)」
ソファーなどの家具類のほか、店内や玄関口には、アンティークな人形や小物類が所狭しと並んでいる。これらは、喫茶店に来店されるお客様ご友人から譲り受けたものも多いという。
「もっと店内が広ければ、もっと自分の好きなものを増やせるのにとか、自分がもう一人いたら、今よりも大きなお店で、従業員を雇ってやりたいなと思うこともありますね。」
とてもにこやかに楽しそうに話してくれた。
④自分の「好き」を体現し続ける
喫茶・ママンヌは常連さんのほか、インスタの投稿を見て来店される新規のお客様も多いが、実は近所の人たちにはあまり知られていない、いわゆる「隠れ家」的な存在だ。
「別に隠してるわけではないんですけど、あまり知られてないんです。見た目が普通のお家って感じなので。以前、入口まで来て帰るお客様もみえたぐらいなんです。なので、もう少しお店ってわかりやすい玄関に変えようと準備中です。」
意図せず隠れ家カフェとなっているのだそうだ、この雰囲気がお客様には好評なのであろうと感じた。
「常連さんは「今月のおやつ」を楽しみに毎月来てくれるんです。新規の方はインスタとかを見て来ていただいたり、レトロ好きな方はもちろん、最近では若い子たちも来てくれるようになりましたね。あまり多くはないですが、男性の常連さんもいらっしゃって、ありがたいことに幅広い年代の方にご来店いただいています。」
取材中、とてもオシャレなサングラスが気になったので聞いてみると、
「これは母親からもらったサングラスをリメイクしてもらいました。母は着物のリメイクなどをしているんですが、すごく可愛かったので、使わなくなったらちょうだいって言って、譲ってもらいました。」
伊佐地さんのオシャレな感性は、お母様譲りなのかもしれない。最後に、伊佐地さんにとって「レトロ」とはなにかをうかがってみた。
「レトロとは、「自分の好きな空間」ですかね。近所の人は、また変な格好してるって思ってそうですけど(笑)」
周りに左右されることなく、自分自身の「好き」を体現している伊佐地さん。その姿はとてもかっこいい。喫茶・ママンヌは、これからも多くのお客様に愛されながら、より素敵な空間になっていくのだろう。