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岐阜市にある「むらせ雑貨店」をご存知だろうか。
麻紐バッグ作家の店主が自身の作品を置いたり、信頼できる作家の作品を並べている、唯一無二の雑貨店だ。今回は、村瀬 尚江(むらせ ひさえ)さんにお話をうかがった。
- 店主の思いやりが感じられる「むらせ雑貨店」の誕生秘話
- ご主人の愛情サプライズで出会った麻紐、ゆっくり着実に作家へ転身!
- 直感を信じて流れに乗る!DIYで情熱を込めた創業エピソード
- 商品コンセプトはご縁つなぎ!ここに来れば出会える商品が揃う
- 「昭和の民家」でくつろぎながらゆっくり買い物!岐阜スローライフの未来
①店主の思いやりが感じられる「むらせ雑貨店」誕生秘話
2020年6月にオープンした「むらせ雑貨店」。店主の村瀬さんは京都出身で、10年前に結婚を機に岐阜に越してきた。岐阜にきた当初から、いつかはお店を開きたいと考え、日頃から「妄想ノート」を書いたりと、オープンまでの7年間夢を綴っていた。
「古民家の温かみのある空間で子どもを持つお母さんや頑張っている女性が、ほっこり寛げる場所が作れたらと思っていました。それと、読書好きが高じ集まった本を気軽に読んでもらえる店。「〇〇屋さん」という枠にとらわれない店をイメージしていました。」
自分のペースでじっくりと活動されていた村瀬さん。岐阜に来て7年後、今の店舗である「昭和の民家」と出会った。
店名の由来を聞いてみた。
「店名を決めるときに、英語表記も検討しました。ただ、以前Google Mapを見ていて、英語の店名は素敵だけど、何をやっているお店なのかわからないと思うことがあって、分かりやすい方が親切で覚えてもらいやすいはず。それに、「昭和の民家」の雰囲気に合って、何をやっているお店なのか伝わる名前にしようと、シンプルに「むらせ雑貨店」にしました。」
ご自身の経験を活かし、お客様視点で考えた店名のエピソードに、村瀬さんの思いやりが感じられる。
②ご主人の愛情サプライズで出会った麻紐、ゆっくり着実に作家へ転身!
麻紐バッグとの出会いは、藍染めをして麻紐バッグを編んでいる方の作品に心を奪われたことから始まった。ただ、藍染め作品は気軽に買える値段ではなかった。その出来事が忘れられなかった村瀬さんは、書店で麻紐雑貨の作家の本を手に取った。しかし、飽き性な性格の自分には続けられないだろうと、本の購入をやめたという。
しかし数日後、その本が自宅に届いた。一連の出来事を知っていたご主人が、こっそりネットで注文し、サプライズでプレゼントしてくれたのだった。ご主人の思いやりと愛情を感じるエピソードだ。
それを機に、本を参考にして麻紐バッグ作りをしたところ、ドハマリしたという。
「作っていく過程で、編んで形を突き詰めていくのが楽しかったんです。『私が欲しいのはこの形じゃない!自分の思い通りの形を作りたい!絵に描いた感じの形にするにはどうすればよいのか?』という具合に、できないからこそ突き詰めてみようとハマった感じです。すぐに満足する形ができていたら飽きていたと思います。」
その後も、麻紐バッグ作りを続けていた村瀬さん。転機は、編み始めてしばらく経った頃。当時、勤めていたアンティーク雑貨店での出会いだった。
「出勤する時に、作った麻紐バッグを持って行ったのですが、仲のよいお客様から好評で、自分のバッグも編んでほしいとリクエストをいただいたりして、少し自信がつきました。同じような出来事が重なり、自宅の近くにあったカフェの一角に、私の麻紐バッグを置かせてもらったんです。本当に、少しずつゆっくりと前に進んでいった感じです。」
その後、勤めていたお店が閉店したのを機に、「GIFUクラフトフェア」に出店して、本格的に麻紐バッグ作家として、活動を始めたのだった。
③直感を信じて流れに乗る!DIYで情熱を込めた創業エピソード
ご主人のサポートを受けながら、理想とする麻紐バッグ作りを楽しむ日々。
そんな中、仕事に対しての考え方に変化があり、どんな仕事をするかよりどう暮らしたいのかと言う問いが生まれたやりたいことは?できることは?考えて出てきた答えが”自宅Shop”だった。
でも、中々いい物件に出会えない。「このままだとアルバイトを探さないとダメかな?」と不安な気持ちになることも。「不安になっても仕方がない。」と2回目の出店になる”GIFUクラフトフェア”に向けてバッグ作りに励んだ。努力の甲斐あり、沢山の方がバッグを買って下さった事がモチベーションとなり、次の出店が決まっていないにも関わらず、大量の麻紐を注文し積極的に作品作りに取り組んだ。
そんな時に、「いい物件があったら教えてね」と声をかけていた友人から、「近くにこんな物件があるよ」と連絡が来た。一目で気に入り、築50年の「昭和の民家」での出店を決めたのだった。
「私は、熟考して決めると視野が狭くなるんです。それよりは、そのとき自分がピンとくる流れに乗った方が、うまくいくことが多いです。ピンとくるまで、ずっと反芻します。いざ流れがきたときに、今だ!と勢いよく流れに乗るんです。」
物件は、以前住まれていた方の荷物が残ったままだった。村瀬さんは、長タンスやキャビネットなど残っていたものを再利用しようと考え、全てペンキで白に塗りかえた。あるものを使うその発想は、SDGsの実践そのものだ。
「20代の頃からDIYが好きだったので、家一軒丸ごとおもちゃを与えてもらったみたいに思えて、ワクワクしながら楽しんで塗っていました。」
好きこそものの上手なれというが、村瀬さん1人で仕上げたというから驚きだ。村瀬さんの情熱が込められた「むらせ雑貨店」の誕生だ。
④商品コンセプトはご縁つなぎ!ここに来れば出会える商品が揃う
「むらせ雑貨店」では、村瀬さんの麻紐バッグのほか、知り合いの作家たちの作品を預かり、委託販売をしている。あくまでも、イベントで知り合った作家や、その作家のお友達に限定しているという。
「作品を預ける作家さんは、自分の店舗を持っていません。そのため、作品はイベントでしか展示されないし、イベントが無ければ家に保管されるのが現状です。だから、私が代わりに預かって店舗に展示するんです。作品を気に入ってくれたお客様がいらしたら、購入していただける。これは、ご縁つなぎなんです。」
当初は、他の雑貨を仕入れるべきかなど模索し、何を販売するかはっきり決めていなかった。しかしイベント参加を機に自然と方向性が決まった。今「むらせ雑貨店」に置いてある物は、仕入れた雑貨はない。意図して出会ったわけでもないのに、皮製品や陶器など多岐にわたっており、バランスがよくて面白い。
最近は、ホップアップの開催や、新しい作家の加入というような変化を起こすことによって、お客様のリピートを促す方向性があるが、村瀬さんは真逆の考え方。「むらせの雑貨店」の強みについてうかがった。
「むらせ雑貨店に行くと、いつ行ってもあの作家たちの作品を見れる、そう思っていただける安心感が強みです。クラフトが好きで、既製品に興味がないお客様にとっては選びやすいと思います。」
村瀬さん自身が、直接クラフトのイベントで出会われた作家の中で、この作家や作品がよいと思う物しか展示しないため、自ずとよい商品が並んでいる。
来店されるお客様も、当初女性がメインだと思っていたが、最近は男性もいらっしゃるとのこと。来店目的も、自分のために購入したり、友達や彼女や家族へのプレゼントだったり、さまざまだ。
遠方からお越しになるお客様もいらっしゃる。子どもの大学の卒業式で岐阜にきていて、その空き時間に雑貨屋探しをされて来店された親御さんであったり、岐阜でしか味わえないお店だと思って来店される観光客であったり。あらかじめネットで調べたうえで、「特徴的・隠れ家的」という雰囲気が好きなお客様が来店されるようだ。
⑤「昭和の民家」でくつろぎながらゆっくり買い物!岐阜スローライフの未来
「むらせ雑貨店」では、インスタグラムを活用して店舗情報を発信している。来店したお客様がお店の写真をアップすることで、フォローしている友達の目に触れ、お店のアカウントをオススメとして紹介したり、結果として口コミによる宣伝効果を生んでいる。
村瀬さんは、インスタグラム上に店舗までの道順を掲載しているが、それでも途中道に迷うお客様もいらっしゃる。道が狭く、車も2台しか止めれらないという立地のため、オープン当初は村瀬さんもこの立地に不安があったそうだ。
「うちは狭くて店内に一度に多くの人が入れませんし、靴も脱がなきゃいけない。ですがいざお店に入ってみると、ゆったりとした雰囲気でくつろげたり、ゆっくりと買い物ができたり、他のお客様も少ないのでお客様ともお話ができたり、問題点がよい方向に転じることになりました。」
一見デメリットに見える事が、「むらせ雑貨店」の魅力をさらに引き立たせる効果へと変化した。
今後の「むらせ雑貨店」の展望についてうかがった。
「気に入ってくださったお客様には、2時間でもゆっくりしてもらって、ここで本を読んでもらえたらいいなと思っています。スローライフを継続するのが一番の展望です。」
子育てをされている女性は、子どもがいる中で普段本を読むことすら難しい現状がある。以前、お店で20分読書をされて、気分が晴れたとおっしゃったお客様がいたそうだ。
「自分の好きなことを好きなように続けた結果うちに来てくださったお客様が心地よく過ごせたり、素敵な作品に出会えるのが、とても嬉しいです。」
皆さんも、ゆったりとした空間で素敵な作品に出会に行ってみてはいかがだろうか?