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関市にある「フットプラス」をご存知だろうか。
足のトラブルを抱えている方に、インソールを作って改善したり、足つぼマッサージやフットケアでトラブルの早期発見をしたり、足のトータルケアを行っている専門店だ。今回は、店主の徳野 あおい(とくの あおい)様にお話をうかがった。
- 保育士から足の専門家へ独立
- お客様から学ぶトータルケアの必要性
- 足のトラブルを根本改善
- 徳野さんとご家族の想い
- 人とのつながりを大切にしてトータルケア
①保育士から足の専門家へ独立
2021年6月にオープンした「フットプラス」。完全予約制の「足の専門店」として、足のトータルケアを行う店主の徳野さんだが、起業前は保育士として働いていた。
もともと名古屋出身の徳野さんは、ご結婚・ご出産を機に、10年ほど前にご主人の出身である関市に越してきた。もともと子どもが大好きな徳野さんは、岐阜に来てからも保育士として働いていた。
ところが、コロナウィルスの流行により、勤め先の保育園が閉鎖してしまった。その後、何をしようかと考えた末に「フットプラス」を開業する。
保育士から店舗経営に舵を切るという、勇気のある思い切った発想だが、徳野さんには前から独立への思いがあったそうだ。
「もともと自分でお店をやりたいという思いがありました。職場に勤めて働くよりも、自分で考えてゼロイチ(0から1を創り出す)に挑戦したいと思っていました。」
お子さんが成長し、「だいぶ手が離れた」と感じていたため、自分のやりたい事にチャレンジしたい気持ちが強くなったという。
ではなぜ、「足」に興味を持ったのか?そのきっかけは、お義母様が足を悪くしたことがきっかけだった。
「義理の母が足を悪くしたとき、名古屋でインソール(靴の中敷き)を販売している父に相談し、作ってもらったら痛みが取れて改善したんです。通常、整形外科ではレントゲンを撮って骨に異常がなければ、湿布薬で経過観察することが多いんです。私は、義母さんと同じように足の悩みを持つ方が多いのではないか?と考え、義母さんのように根本的な改善ができたら良いなと思ったのがきっかけです。」
その後、徳野さんは、岐阜に足の専門店が無いことをリサーチし、開業を決断したという。開業にあたり、お父様のもとでインソール作りの技術を学んで、関市に念願の足の専門店をオープンさせたのだった。
そうはいっても、独立にはリスクが伴うもの。最初は、お父様の会社のサポートや、岐阜支店という形で構えるなどの選択肢は考えなかったのだろうか?
「全く考えなかったです。父の会社は、スノーボードやスキーのチューンナップがメインで、主にスポーツをされる男性をターゲットとしています。一方で私は、地域密着で足の悩みを改善させることをメインに、女性のお客様をターゲットにしたかったからです。」
その一方で、徳野さんは、お父様の会社の考え方を受け継いでいるようだ。
フットプラスのホームページに「確かな技術で、足元から支えてます」と書かれている。お父様への確かな尊敬の念を感じられる。
②お客様から学ぶトータルケアの必要性
「フットプラス」と名付けた由来は、「足のサポートをする」という大きなテーマに対して、インソールや足もみを取り入れて、足にプラスできるものを作りたいという思いからだという。
オープン前は、インソールに特化して始める予定だったが、そもそもインソールの認知度が低かった。多くの人にとっては、サイズを調節するもの、厚底になり背を高くするもの、それぐらいの感覚だ。
これではお客様に来ていただけないと思った徳野さんは、足つぼマッサージを取り入れて、インソールと足つぼマッサージを両輪としてスタートさせた。
オープンして、インソールで悩んでいるお客様と接したり、足のマッサージを行う中で足を見たりして、みんな何かしらトラブルや悩みを持っていることがわかったと、徳野さんは言う。
「足の爪切りの仕方が悪いことで足を痛めている方や、魚の目やタコに悩まされていたり、かかとがガサガサになっていたりと、トラブルを抱えている女性が多いんです。お客様の足に対する痛みや、抱えている悩みを改善をしたい。そのためには、インソールと足のマッサージだけではなく、足のトータルケアが必要だと実感して、本格的に始めました。」
徳野さんは、今年の2月に東京でフットケアの資格を取得した。医者のような国家資格ではないけれど、その分親しみやすく寄り添うことで、お客様の未来の改善のサポートをしたい。
その思いで、たくさんの方法を取り入れるべく、資格を取得しているのだという。事業を通じて、まさに「やりながら学んでいく」スタイルで経営者の才覚を感じる。
フットプラスのような、「足をしっかりと触って見る」という、足の専門店はいまだに無い。靴選びをするために靴屋にいくが、「足」といわれて思い当たる場所がない。これがフットプラスの圧倒的な強みだ。
③足のトラブルを根本改善
フットプラスのお客様は、子育てが終わって自分に手をかける余裕ができた、40代後半から60代くらいの女性が多い。
今までと違った疲れ、年齢による筋力低下、歩く機会の減少、それらが体重増加につながり、身体の土台である足のトラブルが増える。
6月でオープンして3年になるが、1年目は万人受けするようなお店をイメージしていたという。
「お客様と接する中で、足のトラブルを抱える女性に、インソール作りを提案することにやりがいを感じていきました。痛みが改善していく経過を見るのが面白かったんです。そのため、お客様に寄り添いたいという想いが強くなりました。」
徳野さんは、足のトラブルの根本改善には、インソール作りが重要だと考えている。
一例を出すと、魚の目やタコの原因は歩き方の癖が一因といわれている。歩き方の癖により、足裏の特定の部分に体重がかかり、硬いタコとなり皮が硬くなる。放置すると石みたいな芯ができて、それが魚の目になる。
魚の目は除去しない限り痛みが消えない。芯は取れるが、根本改善をするには歩き方の癖を変える必要がある。同じところに体重がかからないように、インソールで体重分散をさせて改善させるわけだ。
インソールの効果は作らないと実感できないという。足の悩みがなければ、いくらインソールの効果を言っても伝わらない。でも足の悩みは実感しにくい。
では、腰痛はどうだろう?腰痛は歩き方の癖によりまっすぐに歩けなかったりするので、結果的に足への負担が原因という場合がある。
「直接足を見て、専用の機器で足裏を測定して、腰痛の原因の可能性を示しながら、改善につながる提案をしています。インソールは足裏の負担の軽減にもつながるし、足をまっすぐに出せるようにサポートもするんです。」
フットプラスでは、「SIDAS」(シダス)というブランドのインソールを採用している。しかも、フルカスタムオーダーのみの取り扱いというこだわりで、同じように取り組んでいる店舗は希少だ。
インソールを履いてどんどん歩くことで、自分の姿勢や歪みが改善されてどんどん楽になる。徳野さんの姿勢はすごく良い。そのことを伝えると、
「意識もあります。全てをインソール任せにせず、自分でも意識して気をつけています。これはお客様にもお伝えしています。」
道具だけに頼らず、意識から改善していく。美を追求する姿勢と同じなのだろう。
④徳野さんと家族の想い
オープンして3年のフットプラスだが、店舗拡大は考えていない。今以上にお店が認知されて、徳野さん一人では回せなくなるほど忙しくなれば、拡大も考えるという。その一方で、お子さんたちもこの仕事を見ているそうで、徳野さんはお子さんへの思いを口にしている。
「今は私だけなのでお店を離れられません。そんな時に例えば、インソール作りを出張で息子が行う、娘が足のネイルをするなど、そういう形で携えるのも、きっかけになり良いかなと思っています。」
お子さんがもし独立したいとなった場合、お子さんの気持ちを尊重するという。
「私の家族や親戚はみんな自営業者で、サラリーマンは主人だけなんです。周りが経営者なので、私自身も独立することに対して怖さがそこまでありませんでした。「面白いじゃん!やってみなよ」と言ってくれる人しかいなかったので、もう行動するしかなかったですね。」
保育士から迷いなく独立を決断できた徳野さん。なぜ迷いがなく決断できたのか納得できるエピソードだ。
唯一のサラリーマンであるご主人は、独立当時どのような反応をされたのか気になるところ。「やってみなよ」という感じで後押ししてくれたという。
「主人は、どちらかと言うと安定思考で保守的なので、私と正反対なので私ができない面をサポートしてくれているんです。」
フットプラスのホームページは全部ご主人の手作り。しかも、本職ではないため、書籍で調べながら作っている。ご主人の徳野さんへの優しさと愛情が伝わる。
フットプラスは完全予約制だが、予約が入っていれば20時まで営業をする。いくらお子さんの手が離れたといっても、食事などの家事はどうしているのだろうか?
「実は高校生の息子がご飯を作ってくれるんです。美味しいですし、本当に嬉しいです。彼は、本当に優しいんです。」
はにかみながら嬉しそうに話す徳野さん。フットプラスは、ご家族の協力という強力なチームワークによって支えられているのだと感じた。
⑤人とのつながりを大切にしてトータルケア
フットプラスは、「足をしっかりと触って見る」という圧倒的な特徴を持っている。その一方で、認知度がまだ低いことが課題であると、徳野さんは冷静に振り返る。
「魚の目やタコの除去、かかとの角質ケアを始めたばかりなので、まずはフットケアを行なっていることを知ってもらいたいです。足の悩みを抱えている人はたくさんいらっしゃいますが、こういう足の専門店があることをもっと届けたいんです。」
徳野さんは自身がアナログ人間でパソコンが苦手であると話す。そのような中でも、試行錯誤しながらインスタグラムで積極的に宣伝活動を行っている。しかも一定のリスクを承知したうえで顔出しをしている。
フットプラスのコンセプトは、万人受けするものではない。そのため、「インソールが欲しい」と言うよりは、徳野さんの人柄で売っている部分が多いのである。そこが徳野さんの強みでもある。いろいろな場所へ顔を出してコミュニケーションを取って、人とのつながりを作っているという。
「紹介元の方や紹介された方に、インソールだけではなく、お店の空間や雰囲気、私の人となりを少しでも伝えられたらと考え、インスタグラムを頑張って発信しています。」
徳野さんは、お客様のニーズをいち早く察知して、足のトラブルの早期発見のため、足つぼマッサージやフットケアを取り入れて、リピートしていただけるようにお客様との関係を築いた。
それが、フットプラスが掲げる「足のトータルケア」だ。大事にしている言葉は、「つながり」だと徳野さんは言う。
「一人ではやはりできないこともあります。なので、助けてもらうことが多いです。人に頼って頼られてという部分で、つながりが一番大事だと考えています。」
家族のサポートやお客様同士からのつながり、さまざまな感謝の思いが込められているのだろう。さらに、今後の目標についてうかがった。
「足と言えばフットプラスと言ってもらえるように、みなさんに認知されることです。」
「足」と言えば関市にあるフットプラス。足のトラブルは、自分では気がつきにくいもの。悪化して痛みが出る前に、一度訪れてみてはいかがだろうか。
徳野さんが、あなたの未来の改善に寄り添うだろう。