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岐阜市領下にある「株式会社丸泰」をご存知だろうか。
ビルサッシなどの建築関係から始まった会社である。今では忍者体験やグランピングなどのエンターテイメントも手掛け幅広い事業に挑戦し続けている。今回は代表取締役社長 伊藤 寛章(いとう ひろあき)さんにお話を伺った。
- 多彩な事業内容
- 忍者カフェ
- 仕事との向き合い方
- 社長として
- 今後について
①多彩な事業内容
株式会社丸泰は現在、LPガス、外壁リフォーム、空き家の買取、ビルサッシ、デザインなどから忍者カフェ、グランピングといったエンターテイメントまで幅広く多彩で様々な事業を運営されている会社だ。まずは創業のきっかけと主力事業に関してお話を伺った。
「私の祖父が創業者のため、創業に至るまでの詳しい経緯は聞くことができていません。ただ事業はガスから始まり、その後にキッチンや床壁、天井の材料の販売を始めました。」
「最初は既製品を取り扱っていましたが、これは私達の会社でやるべきことではないなと思いました。一方でオーダーメイドは人が介在するので付加価値を私達でつけることができるため、そちらの方に力を入れていくことに決めました。」
全てにおいて注力されていらっしゃることは承知の上で、様々な事業があるなかで特に力を入れている事業は何か気になり尋ねてみた。
「それは時代によって変わりますね。当初は時代柄もありガスが主力でしたが、今ではガス事業はメインではありません。また少し前、祖父の時代はサッシが主力でした。売り上げが伸びていたこともあり、グループで6社ほどありました。売り上げのほとんどを占める時期もあり、会社を大きく成長させてくれました。しかし、祖父が引退する時にグループは全て解散することになりました。そして私の代になり最初、建築をメインに行いました。」
「ただ建築事業はあまり伸びなかったですね。今の時代、人口も減っていく中で建築に対する需要は少しずつ減っていきます。実際にピーク時の半分ほどの注文になってしまいました。そんな時に、今、人々は何を必要としているかを考えましたね。その一つが観光で、忍者カフェを始めるに至りました。」
不躾な質問にも関わらず、しっかりとお答えいただいた伊藤社長。変わりゆく時代の中で自分達に求められているものを常に考え、変わり続けている。歴史のある会社だからと意固地になる事をせず、常に変化を恐れず挑戦されるお考えと行動力には敬服の念しかないと感じた。
②忍者カフェ
このような経緯で忍者カフェを始められたというが、そもそも観光業に注目をされた理由について伺った。
「観光業は働く若い人達にとって希望を持って働いてもらえる産業だと思いました。また今の時代はモノよりコトを重視するので、体験に価値を見出す時代になっており、人々に必要とされていると感じ始めたんです。」
しかし、始めた時期がコロナの緊急事態宣言の一週間前になってしまい、人が全くいなくなってしまったのだそう。そのため最初は上手くいかなかったのだそう。ただ、この忍者カフェの運営も良い経験になったと言う。
「エンタメのような仕事は初めてだったので、最初はわからないことだらけでした。しかし試行錯誤を重ねていく中で、作り上げた忍者屋敷という世界観の中で、手裏剣を投げるという体験は唯一無二の価値を提供できることに気がつきました。」
伊藤社長はここに来るお客様は体験や世界観を大切にしていることに気がついた。ここに来れば様々な体験ができ、良い思い出になるのだ。
未曾有のコロナウイルスに見舞われ、上手くいかなかったとおっしゃる反面、失敗を負の経験として積むのではなく、その中から良い経験を見出したと言うのだ。転んでも立ち上がるだけでも凄く勇気と力が必要な事だと思うのだが、株式会社丸泰は事業の核となるポイントまでも見つけ出したのだ。
こうして始まった新たな挑戦が「グランピング事業」だった。
「日本一の星空の下でアウトドアを体験することができて、映える写真を撮ることができる。カップルで体験する人も多くとても評判が良かったですね。」
挑戦し、例え失敗してもそのまま終わらせず次に活かしていく行動結果の賜物だと言わざるを得ない。最終的には忍者カフェも成功し、グランピング事業を運営していくことになった。
③仕事との向き合い方
コロナの影響で当初は、忍者カフェが想定よりも上手くいかず社内からも不安の声が上がったという。その時、伊藤社長はどのようにお考えだったのだろうか。
「今まで建築をメインに仕事を行なってきた中で突然、忍者カフェの運営という提案をしたため不安視する声は小さくなかったです。ただ建築業界をメインにしたままではリスクもあるため、観光業界という違う土俵で成功させる必要がありました。また、私は当時入社4・5年目だったので、何か新しいことに挑戦し成功させて社長として認めて欲しかったというのもありましたね。」
こうして挑戦を続けた先にグランピングの成功があった訳だが、その道のりも簡単なものではなかったのだと教えてくださった。
「ただ建物を建てるだけではお客様に満足していただけるわけがない。じゃあ、どんな場所が求められているか考えたんです。”圧倒的で完成度の高い世界観の中で今までしたことがない体験ができる場所”にする必要があったんです。」
株式会社丸泰のグランピング事業部(mokki)では、星をテーマに「日本一の星空のもとで、オシャレな北欧風ラグジュアリーグランピング」というコンセプトがあり、大切な人と大事な時を過ごせるような空間となっている。ただ流行りに乗るのではなく「お客様が求める体験・モノ」を徹底的に調査し、唯一無二の完全なまでのブランディングをしているのだ。このように一貫して付加価値をどのようにつけるか、お客様は何を求めているかを伊藤社長は考え続けている。
④社長として
伊藤社長は従業員のこともよく見ている。
「会社が与えることができるのは、給料かやりがいだと思っています。給与に関しては他社とは少し異なる仕組みになっています。一つ一つの部門に対して営業利益の管理を任せています。会社としては、長く働いてくれる人もそうですが、それと同等もしくはそれ以上に売り上げを作る事が出来る人材も必要としています。」
営業利益の管理を任せる事に、どのようなメリットがあるのだろうか。そちらに関しても伊藤社長に伺ってみた。
「従業員が営業利益にフォーカスするようになります。こうすると一人一人が経営者のように経費を減らす事を意識するようになったり、利益のあげ方を考えるようになったりします。自分たちで考え、みんなが一つの目標に対して進んでいくようになります。」
このお考えには本当に驚いた。若輩の筆者だが、「仕事はボランティアではない。仕事という以上は売上が必要」という考えは持っている。しかしながら、ここまで従業員に任せる企業は聞いたことがなかった。一見すると、シビアにも見えるかもしれないが結果的に従業員のやる気も引き出し、責任感と売上に対しての個々の考える力も引き出しているのだ。確かに伊藤社長の言うようにメリットだと感じた。
⑤今後について
「私自身、もともと普通の大学生でした。その後、7年くらい経験も知識もない自動車メーカーで働き、この会社に入ってやったことのない建築の営業をして、インバウンド獲得の忍者カフェを始めて、グランピングまで辿り着きました。多くの人は今までやったことがないからできないと言いますが、私は全て未経験から始めました。何か思いついていても、できないかもしれないと諦めてしまったら、それ以上成長することはできないし、会社として評価することができなくなってしまいます。我が社としては逆にやったことがないからこそ挑戦したいと言う人に来ていただきたいですね。」
伊藤社長の求める会社像がしっかり見えた気がした。ここまで伊藤社長のお話を拝聴し、お人柄やお考えが素敵だったので座右の名についても伺ってみた。
「父の口癖が”経験に勝る才能はない”でした。私の経験からも若いうちにいろんな経験をして、失敗することもあるかもしれないが挑戦できる人に会社に来て欲しいという考えです。私自身、先代にすぐに始めてみたら?と言われ、すぐにはできないと答えていました。すると『じゃあいつからやるの?』と聞かれ。そこでハッとしました。どうせやるなら少しでも早く経験した方が早くものになります。経験した結果がグランピングなどの観光事業なんです。」
今回の取材で終始、伊藤社長からは「挑戦」の心が感じられた。
「だからこそうちでは従業員に挑戦したいと言われたら機会を与えてるようにしています。サラリーマンだからできないなどの考えを取り払うことができる人材と一緒に働きたいと考えています。社長からの指示だとやる気が無くなってしまいますからね。自分がやりたい事だと計画一つとっても責任が出るので、改善点等も自発的に考えることができるようになります。」
最後に、伊藤社長のやりがいに関して話を伺った。
「私は別にアウトドアが好きというわけではなく、”人が喜んでくれるようなものを作る”のが好きなのですよ。自分達が作ったものをみんなが喜んでくれるのが私のやりがいですね。」
挑戦し成長し続ける「株式会社丸泰」。それは社外に対してだけではない。共に挑戦し切磋琢磨できる社内の仲間も含めてなのだ。時代に順応し、とことん人が喜んでくれる未来を形にし続ける株式会社丸泰のこれからの取り組みから目が離せない。