一服いただける老舗お茶屋さん「松寿園 林屋茶舗」を訪ねてみた。

TOM
今日はお抹茶を飲みに行こ!
SARA
良いわね〜。ところでアナタ、お作法は知っているの?
TOM
回し飲みでしょ?心配しなくてもサラの分は残してあげるよ~
SARA
・・・ワタシが欲張りみたいな言い方はやめてよ・・・しかも、回し飲みってそういう意味じゃないわよ・・・

 

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岐阜市神田町にある「松寿園 林屋茶舗(しょうじゅえん はやしやちゃほ)」をご存知だろうか。
創業から136年、美味しいお茶を届けているお店だ。今回は店主・茶匠の林 正明(はやし まさあき)さんと、奥様のひろみさんにお話を伺った。

 

 

今回のツムギポイント!
  1. 136年続く老舗茶屋
  2. 揖斐茶の地産地消を広めるために
  3. お抹茶スイーツも楽しめる
  4. 日本茶インストラクター在籍のお店
  5. 伝統を残していきたい

 

①136年続く老舗茶屋

 

松寿園 林屋茶舗は、正明さんが4代目。奥様のひろみさんと一緒に経営されている。「松寿園 林屋茶舗」という店名について伺ってみた。

 

「初代から直接聞いたわけではありませんが、松と寿はおめでたいということでこの名前にされたんだろうと思います。林屋は苗字の林が由来ですね。」

 

ひろみさんが教えてくれた。現在136年目の松寿園 林屋茶舗は、創業からこのお名前で経営されているそうだ。

 

長く続く家業を自分が引き継ぐことについて、不安やプレッシャーは無かったのだろうか。

 

「中学生ぐらいの時からなんとなく、将来は自分が継ぐんだろうなという気持ちがありました。お茶の親しまれ方が変わるとか、そういうことは時の流れなので仕方がないところもあり、そんなに重く考えずです。ただ、自分が店を守ろうという思いはしっかりとありましたよ。継ぐ前に修行として神戸と静岡のお茶屋さんに働きに行きました。」

 

と語られる正明さん。松寿園 林屋茶舗は、岐阜市で1番2番を争う程早くから開店しているそうだ。その後お茶屋が増えたが現在はその多くの店が閉めてしまったという。

 

「昔からやってみえた方がほとんどお茶屋さんを辞めてしまったんです。今も続けられてる方は少なくなってしまって。」

 

と少し寂しそうにひろみさんが話してくれた。松寿園 林屋茶舗では、多様な種類のお茶の葉に、茶華道具、香、お菓子や茶花も販売している。

 

「うちはお煎茶とお抹茶を買っていただくことが多いですね。お抹茶は裏千家のお茶会の時などはうちで買っていただいています。ご贔屓にしてくださって嬉しいですね。」

 

お茶屋で煎茶と同じくらい抹茶が売れるというのは、意外だと感じた。やはり、老舗お茶屋ならではの信頼とお付き合いがあるのだろう。

 

 

 

 

②揖斐茶の地産地消を広めるために

 

松寿園 林屋茶舗で取り扱うお茶は揖斐茶を中心に選んでいるという。

 

実は岐阜は揖斐川町のあたりを中心にお茶の生産が盛んな県だ。旧幕時代よりお茶を生産していたという資料もあるらしい。松寿園 林屋茶舗では嬉しいことに、その揖斐茶を購入することができる。

 

「販売しているのは、揖斐茶が中心です。他の産地のお茶もありますけれど基本は揖斐ですね。地産地消は大切にしています。あとは、岐阜のお茶にはやっぱり一番岐阜のお水が合うと思うんですよ。」

 

筆者も実は、揖斐茶の大ファンである。煎茶のイメージが強い気がするが、ほうじ茶もとても美味しい。あたたかい揖斐茶を淹れ、楽しむ時間はとても豊かだと感じる。暑くなる季節にはもちろん冷やしても美味しい。

 

「今は、皆さんペットボトルでお茶を飲まれますでしょ。創業当時からお付き合いのあるお客様とも、若い方の代になってお付き合いが途切れることはありますね。やはり美味しいお茶を皆さんに飲んでいただきたいと思っています。ペットボトルのお茶には防腐剤が入っているので体のためにもおすすめできませんが、葉っぱのお茶なら無添加ですし。うちは量り売りでの販売もしています。何グラムでもいいので細かく必要な分を買えるので、お求めやすいのではないかと思います。若い方にも、日本茶の良さを知っていただきたいですね。」

 

葉っぱのお茶をより手軽に飲みやすくしたタイプの商品も紹介してくれた。

 

「今は急須がお家にない方も多いですね。急須がない方も忙しい方も、パック入りのお茶だと便利ですよ。水出しができるものもありますし、お手軽に美味しいお茶を飲んでもらうことができますよ。」

 

お二人が揖斐茶について話してくださった。手軽に美味しいお茶を飲めるのはとても魅力的だと感じた。

 

③お抹茶スイーツも楽しめる

 

お茶屋に親しんでもらうため、正明さんとひろみさんの代になって新しく始めたことがあるという。それが、お抹茶スイーツの販売だ。松寿園 林屋茶舗でカフェのようにスイーツを楽しむことができるようになった。

 

「夏はかき氷、冬は抹茶ぜんざいと、スイーツの提供をしています。若い人に来てもらって、お茶の良さを分かってもらいたいと思って始めました。スイーツと一緒に梅昆布茶を出したら、『これ美味しい!』と言って買っていかれる方もいるので嬉しいです。」

 

そしてかき氷やぜんざいの時期でなくても一年中いただけるのがお煎茶とお抹茶だ。

 

「お抹茶とお煎茶は年中いつでも飲めますよ。最近はお抹茶を飲まれる方も結構みえますよ。お抹茶を出すお店もありますが、葉っぱや点て方で味が大きく異なるので面白いですよね。ぜひ飲み比べしていただきたいですね。」

 

「自慢になってしまいますが、うちはお抹茶が本当に美味しいんです。なので、皆さんにもお抹茶の美味しさを広めたいんです。今はお茶を飲まれる方が少なくなってしまいましたが日本の伝統ですし、美味しいお茶を飲んでリラックスしていただきたいと思っています。」

 

お茶への熱い想いをお話いただけた。

 

 

 

 

④日本茶インストラクター在籍のお店

 

松寿園 林屋茶舗で提供されるお抹茶を点ててくれるのは店主の正明さんだ。

 

「私は、茶匠であり日本茶インストラクターの資格も持っているんです、いろんなお茶をブレンドして美味しいお抹茶を提供いたします。」

 

日本茶インストラクターとは、筆記試験と実技試験があり、知識を技術を身につけることで取得できる資格なのだそうだ。資格取得の勉強はとても大変だろうと容易に想像ができた。

 

「お茶がどういう風にできるのか、から学びました。実務として現場で修行して、知識と技術を身につけるんです。座学だけではなくて実技もあるので、やはり大変でした。同期には初心者もいたのですが、日本茶もウーロン茶も紅茶も、全然同じ葉っぱからできるっていうことすら知らない人もいましたね。」

 

お茶屋は、お店ごとにそれぞれブレンドされたお茶を販売している。例えば松寿園 林屋茶舗と、A店、B店に同じ名前のブレンド茶があったとしても、そのお茶の風味は3店それぞれのものだそうだ。

 

産地はもちろん、年ごとにお茶の出来栄えが異なる。常に同じ味のお茶を作るのはとても難しいそうだ。

 

「茶葉の配合や火入れの具合を微調整することで、美味しいお茶を提供できるようにしています。やはり、茶葉の育った環境や産地などで味が大きく変わるので全く同じってのは難しいんです。」

 

長年培った知識と技術力を注ぎ込んで作られたお茶を味わってみたいと感じた。

 

 

 

 

⑤伝統を残していきたい

 

今後についてお二人に尋ねてみた。まずは正明さん。

 

「物価高騰とかコロナとか不安はたくさんあるのでいつまで続けられるんだろうという思いもあります。けれどなんとかお茶屋を残していきたいんです。老舗の信頼と技術力をこれからも残していきたいなと思っています。」

 

続けてひろみさんはこう語った。

 

「日本の伝統文化に携わる業種、お茶、お花、お能、踊りとか、継がれる方が少なくなっているんです。私もやっぱりお茶は日本の伝統ですので、残していかなきゃという気持ちがあります。」

 

座右の銘についても聞いてみた

 

「僕が常に心がけている事は「おごるなかれ くじけるなかれ」ですね。書も飾ってあるんです。」

 

伊藤天游さんという岐阜市の書道家さんの、妹さんが書かれた1枚を大切にされているのだそうだ。

 

136年挫けることなく続いてきた松寿園 林屋茶舗。

 

そのバトンを受け取った正明さんとひろみさんご夫妻は、スイーツの考案など新しいことにもチャレンジを続け多くの方にお茶の魅力を広く伝えるために活動を続けている。新しくお茶に興味を持った人や、気になるけれどどうやって葉っぱを選んだらいいのかわからない人の相談にも親切に乗ってくれることだろう。

 

岐阜に古くからあるお茶屋として、これからも多くの人に愛されてほしいと強く感じた取材だった。

 

 

 

 

 

松寿園 林屋茶舗

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