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各務原市にある「フォトスタジオひでんち」をご存知だろうか。
自然光を活かした優しい雰囲気の写真撮影が得意なスタジオだ。今回は、フォトグラファーの三上 英和(みかみ ひでかず)さんに、写真撮影にかける想いやこだわりをうかがった。
- 自分らしさをスタジオに
- 独立時に学んだ不安解消術
- 撮影自体も楽しい想い出にする
- 写真の力で普通の場所が特別な景色へ
- 家族の歴史を撮り続ける専属カメラマン
①自分らしさをスタジオに
「フォトスタジオひでんち」は、2024年4月1日にオープンしたフォトスタジオだ。フリーランスのフォトグラファーである三上さんが、10年の節目に設立した。家族写真、お宮参り、バースデーフォト、七五三、入学式・卒業式、成人式、マタニティ・ニューボーンフォト、ウェディングフォトなど、幅広い撮影コースを提供している。
最初に名前の由来をうかがってみた。
「僕の名前がヒデカズなのですが、自分がこれまでずっとカメラマンとしてやってきた中での過去の経験や、これからやりたいこと、いろいろな想いを1か所に詰め込んだ『自分ち』のイメージで付けました。」
とても親しみを感じる名前だ。最初は格好いい名前も考えていたという。
「ただ、それだとあまり自分らしくないなと感じました。そこで、敷居が低くて、身近に感じてもらえる名前はないかな?と考えたんです。自分の家みたいな感じで、苦手意識なくサラッときてもらえたらいいなという想いも込めてのネーミングです。遊びに行こうかな、というくらいの感覚で、軽く足を運んでもらえたらいいなという想いも込めています。」
三上さんは、福井県の出身だ。約10年前から岐阜に住んでいる。20代半ばのとき、福井で冠婚葬祭の会社に就職し、写真の技術やノウハウを学んだ。
「フォトグラファーになったのは、響きが格好いいからでした。仕事何してるの?と聞かれて、カメラマンって答えたら、モテるかな、みたいな。ただきっかけはモテたいからでしたが、意図する写真が撮れるようになったり、お客様が喜んでくれたりすることに楽しさや喜びを覚えて、今に至ります。」
カメラマンとして仕事をこなすうちに、やりがいやこだわりを見つけたという。自分にあっているかどうかは、やる前から分かっているとは限らないのだと感じた。
②独立時に学んだ不安解消術
三上さんは、約8年の会社勤めのあと、フリーランスになった。
「一時期、名古屋で働いていたのですが、そのときにフリーランスのカメラマンの存在を知りました。それまでは独立に抵抗があったのですが『意外と普通の人もフリーランスをやっているんだな』ということを知り、『もしかして自分もできるのではないか』と思ったのです。」
フリーランスになることに、不安はなかったのだろうか?
「めちゃくちゃありましたよ。今でも不安になることがあります。」
フリーランスになって10年とのことだが、不安とうまく付き合うコツはなにかあるのだろうか?
「人と会うことです。一人でいると、何だかんだと考え込んで、塞ぎ込んでしまうことがあるので。同じく周囲の独立している人たちと会って喋ることが大事だなと思います。」
また、お客様と話すのも良い刺激になるという。
「お客様と話すときが一番楽しいですね。家族写真やお子さんの写真を撮ることが多いのですが、お子さんと接して遊んでいるつもりが、実は自分が遊んでもらっていた……ということもありますね。結局、僕は人と接することが好きなんですよね。誰かと接することで、将来に対する不安が解消されるんです。」
不安の解消でもありつつ、お客様と接することが好きという三上さんの個性が活かせて強みになっている。これこそが「フォトスタジオひでんち」のスタイルなのだ。
③撮影自体も楽しい想い出にする
「フォトスタジオひでんち」のInstagramには、神社や公園などを背景にしたおしゃれな写真がズラリと並ぶ。どのような工夫をしているのだろうか?
「基本的には『ありのまま』です。あまり加工はせず、その時その時のシチュエーションを大切にするスタイルです。特に家族の写真は大事な記録ですので、なるべくナチュラルにして、それがずっと残っていければいいなと考えています。」
今は家族写真やお子さんの写真がメインだが、今後は、SNSなどに使うプロフィール撮影にも幅を広げていきたいそうだ。
「見ただけで、その人がどんな雰囲気なのかがわかるような写真、そういった表現力を、このスタジオで追求していきたいです。」
被写体の魅力を引き出すにあたって、技量はもちろん、もう一つ欠かせないものがあるという。
「お客様にはこちらから積極的に話しかけています。どれだけお客様との壁をなくせるかによって、撮影の雰囲気も、その後の仕上がりも変わって来るからです。最初の段階でいかに信頼してもらえるかを重視しています。」
他には、どのようなことを大切にしているのだろうか?
「同じようなことかもしれませんが、ただ単に撮影の写真を提供して終わり、ではなく、あとから写真を見たときに、『撮影も楽しかったね』と思い出の一つにしてもらえるような雰囲気づくりを常に心がけています。食べ物や音楽でも、同じものを食べたり、フレーズを耳にしたときに、その時の記憶がポンと蘇って来ることがありますよね。どんなに良い写真が撮れたとしても、本人にとっては苦痛でしかない写真になってしまうと、すごく悲しいですからね。」
家族写真の撮影が大変だったという話はよく耳にする。特に赤ちゃんや小さい子の場合、泣いたり、ぐずったり、暴れたりと、思いもよらない行動に出ることがある。親御さんは、カメラマンやスタッフに気を遣い、肩身の狭い思いをしてしまうだろう。そんなときに、ひでんちさんのようにアットホームな空間で包んでもらえたら、それだけできっと嬉しい思い出になるに違いない。
④写真の力で普通の場所が特別な景色へ
三上さんの撮る写真は、背景まで含めて素敵なのだ。どこか秘密の場所で撮影しているのだろうか?
「あまり名が知られている場所ではなく、名もなき公園みたいなところで撮影しています。小さな公園の方が、人が少ないですからね。適当な土手の駐車場で、浴衣の撮影をしたりしています。人が全然いないので、のびのび撮影できました。」
三上さんは「適当な土手」というが、実際そのようには全く見えない。おそらく素人が撮影しても「適当な土手の写真」にしかならないだろう。
「プロに撮影を頼むのは、けっして安くありません。せっかく頼んでいただいたので「こんな場所でも、プロが撮影したらこんな素敵に変わるんだ」という驚きに変えてあげるのが、腕の見せどころだと思うんです。」
有名な場所で撮るよりも、「あのときは本当にびっくりしたよね!」と思い出に残るし、「実はここ、◯◯なんですよ」と、ずっと使える話のネタにもなる。ここでも、三上さんが常に大切にしている空間づくりが、発揮されているというわけだ。
「誰が見てもきれいな景色は、誰がどう撮っても綺麗なんですよ。それよりも、自分が子どもの頃に遊んでいた公園など、普通の場所をいかに驚きに変えられるかが、カメラマンの腕の見せどころだと思っています。」
三上さんの、カメラマンとしての矜持がうかがえるエピソードだ。富士山も、沖縄の青い海も、きっと誰が撮っても綺麗に撮影できるにちがいない。何でもない場所だからこそ、プロの技量が試されるのだ。
⑤家族の歴史を撮り続ける専属カメラマン
フリーランスとして独立し、ついにスタジオも構えた三上さん。次の夢はなんだろうか。
「結婚式の撮影をしていて、気付いたことがあります。結婚して、家族になって、例えばお子さんに恵まれます。そしたらそこから家族写真はお子さんの写真につながります。そしてその子の七五三、入学、そして成人式と、ずっとストーリーが紡がれていくわけです。自分が結婚式で撮影した二人のお子さんが結婚したときに、また写真で携われたらすごくいいなと思うんです。一つの家族の歴史はずっと自分が撮ってきた、というのが理想ですね。」
そう、三上さんの夢は「家族専属カメラマン」だ。今は誰でも手軽にスマホで撮影できるようになった。しかし簡単に撮影できる分、他の写真に埋もれたり、機械の故障などで消えてしまうこともある。だからこそ、そのときにしかない家族の一瞬をプロの手で美しく切り取ってくれる、家族専属カメラマンはとても大切な存在といえるだろう。
「せっかくスタジオを構えたので、街の写真屋さんとして、「あそこに写真屋さんがあるからちょっと行っておいで」と言ってもらえたり、特に用事はなくてもフラッと立ち寄れるような場所でありたいです。」
最後に、三上さんの原動力について尋ねてみた。
「『やってよかったね』という喜びです。お客様はもちろんですが、それ以外の一緒に仕事をしてくれる人たちの言葉もモチベーションになります。例えば、写真とヘアメイクは切っても切れない関係です。ヘアメイクの方から『三上さんに写真をお願いしてよかった。またお願いしますね』と言ってもらえることが励みになります。」
お客様はもちろん、横のつながりも大切にしているのだ。
「お客様や、知っているヘアメイクの方から仕事を依頼されると、この人たちに恥をかかせてはいけないので、喜んでもらえるような雰囲気を作って、写真を撮らなければと身が引き締まります。そしてどんどんクオリティに磨きをかけ、勉強していこうというモチベーションにつながっているのです。」
最近は、AIの勉強も始めたという三上さん。すでにAIで背景をつくり、合成するなど、新しい技術にチャレンジしている。AIというと敬遠するプロも多いようだが、三上さんは「せっかくいい技術があるんだったら使わない手はない」と語る。この柔軟さもまた「ひでんち」の魅力だといえるだろう。
スマホが当たり前になった現代、家族みんながテレビを囲んで団らん…という光景は、なかなか見られなくなってしまった。しかし、過ぎてから「あの時間は貴重だったな」と悔やんでも遅いことがほとんどだ。
家族の大切な思い出を残すために、ふらっと「ひでんち」の写真撮影を検討してみてはいかがだろうか。