岐阜の朝中華の先駆け的存在である「恵美飯店」を訪ねてみた。

 

 

TOM
サラ、町中華で一番好きなメニューって何?
SARA
私はパラパラの炒飯ね。トムは?
TOM
ぼくは中華丼と八宝菜のセット!絶対に外せないんだよね!
SARA
・・・その2つを同時に頼む人は初めてね・・・

 

この記事は約7分で読めます。

 

揖斐郡池田町にある「恵美飯店」をご存知だろうか。
コロナ禍を朝営業で乗り切ったりと、親子二代にわたって半世紀以上愛されている、地域密着型の中華料理屋である。今回は、店主の東川 正人(ひがしかわ まさと)さんにお話をうかがった。

 

今回のツムギポイント!
  1. お客様の声に支えられて50年!親子二代で愛される地域密着型中華料理屋
  2. 愛情深い東川さん!親の背中より子どもの夢を優先してほしい
  3. 朝から中華の先駆け!コロナ禍を乗り越えた地道な認知度戦略
  4. イチオシメニューは「チャーシューエッグ」!お客様の声から生まれた逸品
  5. お客様にずっと通い続けてもらえるお店であり続ける!

 

①お客様の声に支えられて50年!親子二代で愛される地域密着型中華料理屋

 

外観からいい感じの町中華という期待感を抱かせる恵美飯店。もともとは東川さんのお父さんが開業した、創業50年以上の老舗中華料理屋である。東川さんが23歳のとき、お父さんが亡くなり跡を継いだ。東川さんは2代目店主として今年25年目を迎える。

 

 

恵美飯店のメニューの数は豊富だ。先代が考えたメニューに加え、東川さんが新しく考えたメニューも加えているという。時代を越えた親子のコラボレーションメニューである。恵美飯店の由来も、家族が関係しているのだろうか。

 

「店の名前は、父が祖母の名前の『えみこ』を引用してつけたそうです。もともとは、全然違う商売をやっていたのですが、中華料理屋に転身してからも、そのまま屋号を使い続けたという名残です。」

 

家族の歴史の流れを感じられる、素敵なエピソードである。お父さんの地元は四国で、東川さんが生まれる前にお母さんと岐阜に移住してきたというが、東川さんは池田町出身で現在47歳。恵美飯店とともにずっとこの地に根を下ろしている。

 

お父さんが亡くなるまでの5年間、中華料理にまつわる技術などを、お父さんのもとで修行した。その後、東川さんが跡を継ぐことになったが、店主になることに不安はなかったのだろうか。

 

「不安しかなかったです。厨房に立っていても、父がいるのといないのとでは心理的に違います。でも、ありがたいことに『いつからお店を始めるの?』というお客様からの声が多かったんです。その声に励まされて、父が亡くなって10日間休んだあとにお店を再開しました。」

 

日頃からお客様との信頼関係を築いていた東川さんの誠実な仕事ぶりがあったからこその励ましである。この地で愛される地域密着型の中華料理屋、それが恵美飯店なのだ。

 

 

 

②愛情深い東川さん!親の背中より子どもの夢を優先してほしい

 

 

物心ついたころからお父さんが中華の料理人だったこともあり、東川さんは高校卒業後から一緒に働いていた。高校生は多感な時期でもあり、一般的には親へ反発する子どももいるが、そういった気持ちはなかったと東川さんは振り返る。

 

「自分の中で父と一緒に働くのが自然で、なんとなく親の家業を自分も継ぐのだろうという感じでした。今はその考えはありませんが、当時は敷かれたレールにそのまま乗ればいいという思いはありましたね。」

 

東川さんにはお子さんがいるが、自分の子どもに継いでほしいという気持ちはないという。

 

「子どもが好きなことややりたいことがあるなら、それをやればいいと思います。うちは、田舎町の飲食店が家業です。日本全体で人口が減ることがわかっている中で、数十年後の将来に対する担保がない家業だからこそ、子どもが自発的に継ぎたいと言わない限りは強制しません。子どものことを思えば、跡継ぎに固執する必要はないと思っています」

 

お子さんの将来を第一に考え、時代の流れに合わせて柔軟な発想を持つ東川さん。恵美飯店は、自分の代で終わるならそれでよいと潔く信念を語ってくれた。家族への愛情と家業への冷静な視点は、東川さんの温かい人柄を表している。

 

 

③朝から中華の先駆け!コロナ禍を乗り越えた地道な認知度戦略

 

恵美飯店は、主に昼と夜に営業をしているが、土日のみ朝営業も行っている。朝営業を始めて3年になるが、中華料理屋が朝から営業しているのは珍しい。もともとはコロナ禍で売上を上げるための施策だったと東川さんは話す。

 

「コロナで休業補償をもらう中で、今後補償されない期間が長くなると予想し、危機感がありました。当時は夜1時まで営業していたのですが、コロナ禍によりお客様の来店の流れが変わったり、営業時間の規制もあったりしたので、思いきって朝営業を始めてみました。」

 

 

夜遅くまでできない分、朝に営業するという発想の転換である。ただ、朝営業は正直、儲けは少ないという。なぜ、朝営業を続けているのだろうか。

 

「目的は、お店をお客様に知ってもらいたいという、認知度アップのためです。今では、朝の2時間半の営業時間で、30から40人くらいお客様がいらっしゃいます」

 

自身のインスタグラムやYouTube番組で取り上げられたことなどで、認知度が上がったのである。以前は朝営業は一人で回していたが、今は奥さんやお母さんの手伝いがないとお店が回らないという。すべては地道にやり続けたからこその認知度アップである。

 

ピンチをチャンスに変える柔軟さと、やり続けるという継続力の大切さを身をもって体現している。

 

 

④イチオシメニューは「チャーシューエッグ」!お客様の声から生まれた逸品

 

恵美飯店イチオシのメニューは『チャーシューエッグ』である。ハムエッグやベーコンエッグからヒントを得て考案したもので、香ばしく焼色をつけた2枚のチャーシューに、とろとろの目玉焼きが包みこむ。仕上げに自家製のタレをたっぷりかけるのが恵美飯店流である。

 

はじめは朝メニューのみで提供していたが、『昼も食べたい』というお客様からの声が多かったため、レギュラーメニューとして追加した。ご飯との相性の良さから、『チャーシューエッグ丼』や『チャーシューエッグ炒飯』などアレンジメニューでチャーシューエッグファンの心を掴んでいる。

 

 

もともとは、お客様との会話の中で生まれたメニューだと東川さんは振り返る。

 

「以前、築地でチャーシューエッグを出しているお店があるという話をお客様から聞いたんです。朝営業をはじめるときに、中華料理屋で提供する朝食メニューを考えていたのですが、その話を思い出しました。ただ、価格設定は検討を重ねました。都会の店なら600〜700円で設定できるかもしれませんが、ここでの朝食の競合店は喫茶店です。モーニングの価格は500円が相場なので、思いきって500円で提供する決断をしました。」

 

競合を喫茶店のモーニングとして価格設定するという姿勢は、日頃から地元の飲食店事情を把握しているからこそのマーケティングの視点である。とはいえ、500円で提供するのは薄利であるため、少しでも利益が出るように細かく計算しながら努力をしているという。

 

「朝営業の目的と同じで、お客様に知ってもらうきっかけとなるドアノックメニューと割り切っています。目先の売上というよりも、最終的にトータルで多くのお客様に来てもらう結果につながればよいという想いが強いです。」

 

こうした想いからスタートしたチャーシューエッグだが、今では朝営業とともに認知度が上がった。当初は物珍しさで来ていたお客様が大半だったが、今はお客様が来店前に抱く事前期待が変わっている。

 

「お客様の期待に応えられるか、満足させられるかという緊張感があります。だからこそ、認知度が上がったと喜んでいるばかりではいけません。慢心で足元をすくわれないように、ピリッとしようと自分に言い聞かせています。」

 

慢心せずにお客様の期待に応えることを意識して、目の前の仕事に集中する東川さん。この緊張感が、恵美飯店の質の高い料理の提供につながっているのである。

 

 

⑤お客様にずっと通い続けてもらえるお店であり続ける!

 

東川さんが見据える恵美飯店の今後の展望は、ずっとお客様の日常の中にあり続けるお店になることだ。

 

「お店の大繁盛はイメージしていません。ブームのときは繁盛すると思いますが、一過性のものでもあります。だからこそ、いかに日常にあるお店としてお客様に認知してもらえるか、お客様にずっと通っていただけるお店の方が価値があると考えています。」

 

恵美飯店に来店されるお客様は、仕事帰りのサラリーマンや家族連れなど地元の方々はもちろん、バイク乗りの友達同士でツーリングの行き帰りで立ち寄るお客様であったり、さまざまなお客様で賑わっている。

 

東川さんは、そういったお客様とのコミュニケーションを大切にしている。もともとお客様から話しかけられやすい才能を活かして、こちらでは笑い話をしながら、あちらでは深刻な話を聞いたりと、お客様ごとに寄り添うことを心掛けている。

 

お店の壁には、『大垣市ハンドボール少年団』のメンバー募集のチラシが貼られている。このチラシについてうかがうと、東川さんがお客様との接点を大切にしている思いが理解できた。

 

「あれはお客様から貼らせてほしいという要望があり貼ったものです。それがきっかけで、何かしら人とつながれたらいいと思っています。」

 

これまでも、人との出会いによって支えられてきた東川さんだからこそ、説得力のある想いがこもったエピソードである。日頃からどんなシチュエーションでも、人とのつながりを意識して行動していることが理解できる。東川さん自身の展望についてもうかがった。

 

「今47歳なので、あと25年くらいはやれると思っています。先のことはわからないですけど、ここがあそこが痛いとか言いながら鍋を振っているんじゃないですかね。70歳過ぎて鍋を振っていたらかっこいいじゃないですか。続けられる間はこれでご飯を食べていきます。」

 

半分冗談っぽく豪快に笑い飛ばしながら話す東川さん。その裏には70歳過ぎまで続けるという固い決意が感じられる。最後に日頃から大切にしている想いについてうかがった。

 

「礼に始まり礼に終わるというように、何事も慢心せずに丁寧に取り組みたいと思っています。それが結果的にお客様への笑顔につながると考えているので、これからもその姿勢を大切にしていきます。」

 

親子二代に渡って半世紀以上の歴史を持つ恵美飯店は、日常に寄り添い続ける地域密着型のお店として、東川さんの温かい人柄と絶品の中華料理が魅力である。そんな恵美飯店で、自慢のチャーシューエッグと心温まる時間をぜひ体験してみてはいかがだろうか。あなたの日常に恵美飯店が記憶されるだろう。

 

 

 

恵美飯店

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です