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西岐阜駅の近くにある「旨いもん処 のん呑」をご存知だろうか。
フグをはじめとした本格的な料理とお酒を楽しめるお店だ。また、昼間はおにぎりテイクアウト専門店「ひるのんの」も営業している。今回は代表の野村 雄一郎(のむら ゆういちろう)さんにお話を伺った。
- さまざまなジャンルの料理を学び独立
- フグ・和食・ピザ、いいとこどりのお店
- 飛行機で直送された新鮮なフグ
- コロナ禍ではじめた「おにぎり」が大ヒット
- これからも仲間とともに前進したい
①さまざまなジャンルの料理を学び独立
「旨いもん処 のん呑」は、2010年10月28日にオープンし、2024年で14年目を迎える。2店舗目の串揚げおでんのお店「串雄」は、2024年で8年目だ。さらにコロナ禍の中、進化系おにぎりテイクアウト専門店の「ひるのんの」もオープンした。
代表の野村さんは、若い頃からさまざまな料理の現場で経験を積んできた。まずはフグ料理専門店に13年間勤め、フグの調理免許も取得。その後29歳で鉄板焼きのお店に転職、そこで鉄板料理をマスターした。
さらにもともと行きつけだったレストランバーに転職し、ピザやパスタをお客様に振る舞っていた。しかし急にお店の閉店が決まってしまう。
「このままでは、常連さんが行き場をなくしてしまう。これはもう、自分がお店をやらないとあかんなと奮起しました。」
そして地元で「旨いもん処 のん呑」をオープンすることになったのだ。フグはもちろん、和食もパスタもある。オールマイティなお店だ。
「料理だけで100種類くらいありますね。ドリンクも100種類あります。一緒にお店を始めた人が、もともと同じバーでバーテンダーをやっていたので、カクテルもたくさんあるんですよ。日本酒が好きなスタッフが入ってきてからは、日本酒の種類も増えました。おいしいものに出会うとどんどん増えていくんです。もう止まりませんね。」
そのバーテンダーの女性は結婚・出産後、一時的にお店を離れた。しかし今は復帰して「ひるのんの」を手伝っているそうだ。
「人との繋がりを大切にしています。実は、うちのお店をきっかけに、これまで13組が結婚しているんですよ。コロナ前は、2か月に1度くらいの頻度で、常連さんを集めてイベントをやっていましたね。」
なんと、街コンのさきがけのようなことをやっていたのだ。まさに人と人をつなぐお店というわけである。
②フグ・和食・ピザ、いいとこどりのお店
「旨いもん処 のん呑」の特徴は、フグをおいしく食べられることだ。お店のInstagramには、とらふぐ大宴会コースが紹介されている。
・とらふぐてっぴサラダ
・てっさ満月
・とらふぐ唐揚げ
・とらふぐちり鍋
・とらふぐ雑炊
などをいただけて、お値段はなんと6000円(税別)。ここまでフグづくしのコースを堪能できる居酒屋はなかなかないだろう。
「僕がずっとフグ専門店にいたことを知っているお客様が多いので、冬場はみなさんフグのコースを頼まれますよ。」
フグは、もともと野村さんが在籍していたお店よりも、かなりリーズナブルに提供している。
「フグ専門店だと、どうしても敷居が高くなってしまうんですよね。うちではピザやパスタもたくさんあります。ですので、たとえば家族で来て、親御さんはてっさを食べて、子どもたちはポテトフライやピザを食べるといった楽しみ方ができるんです。ピザもうちの手作りなんですよ。僕が勤めていたお店のいいとこどりが、このお店なんです。」
フグ料理、鉄板料理、そしてピザ。野村さんがこれまでに培った経験をすべて注ぎ込むことで、唯一無二の個性を持つお店となっている。おすすめのメニューは「全部」だという。客層のターゲットも特に絞っていない。
「お客さんのターゲットは絞っていません。あえて絞る必要はないですし、絞りたくなかったんです。お店には若い方も、家族連れも、年配の方もいらっしゃいます。絞らない方が、お客様も入りやすいかなと思っています。」
いろいろな人に楽しんでもらいたい、その想いから「旨いもん処 のん呑」では飲み放題を「アルコール」と「ノンアルコール」に分けて注文可能。仮に8人で来店したとして、4人はアルコールの飲み放題、4人はノンアルコールの飲み放題といったことができるのだ。
同店では、オープン当時からこの設定を取り入れている。大抵のお店では、飲む人か飲まない人、どちらかに合わせる必要がある。双方への配慮がとてもありがたい。
③飛行機で直送された新鮮なフグが強み
進化系おにぎり専門店の「ひるのんの」がInstagramでバズったことで、お昼は若いお客様が多くおとずれるようになった。ランチセットは鶏ハムサラダ、醍醐卵だし巻きそぼろあんかけ、具だくさん味噌汁、おばんざい、お漬物、デザートの台湾カステラ、そして好きなおにぎり1つで880円と、この物価高のご時世において破格の金額だ。
かなりお得な価格設定だが、根底には「お店を知ってもらって、自慢のフグを食べてほしい」という想いがあるという。
「うちのフグは、宮崎県から直接飛行機で取り寄せています。元々フグのお店で働いていたので、そういうパイプがあったんです。新鮮さには自信があります。夜中に頼んだら、夜中のうちにそのまま送ってもらえるから、上質なフグが手に入るんです。」
さらに「トラフグしか使わない」というこだわりがある。
「フグが安く食べられるお店は他にもありますが、たとえば唐揚げなどはトラフグではない他のフグを使っていることもあるのですが、うちはトラフグだけなんです。トラフグは、フグの中でも王様ですからね。」
これだけでも十分お得だが、さらに驚くことに「ヒレ酒」が飲み放題のメニューに入っている。1人2杯までという制限はあるが、それでもお酒好きにはうれしい。そもそも日本酒自体が飲み放題メニューにない事が多いのだ。お客様に心ゆくまでフグを楽しんでほしいという、野村さんの心意気がうかがえる。
また、コース料理は2名以上というお店が多い中、同店のフグコースは、1名から注文できる。カウンターでヒレ酒をちびちびと呑みながらフグを独り占め、まさに至福の時間だ。
なお、2月・3月で特におすすめは「フグの白子」だという。
「もし白子が苦手ではないのなら、とてもおすすめですね。トロっとしていて、1ミリも臭くない。まさに海のクリームシチューです、12月くらいから、柔らかく大きくなってきますよ。」
タラの白子はよく聞くが、フグはなかなかお目にかからない。食べたことがない人は、この冬、ぜひチャレンジしてみてほしい。
④コロナ禍ではじめた「おにぎり」が大ヒット
コロナ禍では、多くの飲食店が窮地に追い込まれ、閉店するお店も多かった。かつて、勤めていたお店の閉店を経験したこともある野村さんだが、「旨いもん処 のん呑」をクローズすることは考えなかったのだろうか。
「のん呑は自分ひとりでやっているお店ではありません。小さなお店ですが、フルの従業員が4人いますし、長く働いているアルバイトもいます。自分が苦しいからやめようという発想はなかったですね。」
そうして始めたのが、進化系おにぎりテイクアウト専門店の「ひるのんの」だ。具だくさんで映えるおにぎりだが、オープン当初は売上が伸び悩んだ。しかしSNSでバズり、たくさんのお客様が訪れるようになる。
「ある岐阜の有名ブロガーの方に紹介していただいたことがきっかけで、名古屋からのお客様が増えました。そして名古屋の30万人位フォロワーがいる方に取り上げていただいて、そこから流れが一気に変わったんです。」
インフルエンサーがインフルエンサーを連れてきて、数珠つなぎのように「ひるのんの」が話題になっていったのだ。先見の明があったといえるわけだが、なぜ「おにぎり」だったのだろう?
「ケーキのように、彩りのきれいなおにぎりを作りたくて始めました。実はもともと、ランチ営業をするつもりはありませんでした。『夜の残り物をランチに使っているんじゃないか』と勘ぐられるのが嫌だったんです。だから、やるなら違う業態にしたかったんです。」
料理人としてのこだわりを感じさせる。現在「ひるのんの」は、岐阜・愛知以外の県からも、お客様が車で訪れる人気店となっている。
⑤これからも仲間とともに前進したい
お店を通じ、さまざまなご縁をつないできた野村さん。なんとお店で結婚式をすることもあるという。
「もちろん、結婚式場で行うような結婚式はできません。ただ、結婚式にたくさんお金を使えない人たちもいる。それならうちで、1人5000円くらいで結婚式をすればよいのではないかと思いました。カメラマンもドレスも、知り合いにお願いできるので、お安くできますよ。」
さすが、ここでも「つながり」が威力を発揮している。そして野村さんは、お客様だけでなく従業員の皆さんにも気を配っている。
「僕はいつも、調理場でフグの雑炊をつくりながら、同時にクリームパスタを炒める、といったことをしています。面白いですよね。スタッフにも、オールマイティにいろいろ作れるようになってほしいと考えています。」
スタッフで、お店を持ちたいと独立した人はいるのだろうか?
「うちから独立して自分でお店をやっている子は1人いますよ。今でも仲良くしています。お客様と結婚したスタッフも多く、夫婦で遊びに来てくれます。ありがたいですね。スタッフに恵まれています。」
今後の展望としては、カラオケ店を開きたいという。
「のん呑を起点に、次はここへ行こうかっていう店を、歩いて行ける距離でもう一つ手がけていけたらいいなと思っています。うちからの2次会ならチャージなしとか、できれば何かしら特典をつけたいと考えています。」
ますますご縁が広がりそうな取り組みだ。ちなみに野村さんは、音楽の中で特に布袋寅泰さんが好きだという。
「いつも布袋寅泰さんのマフラータオルを巻いているんですよ。布袋さんの歌は、応援ソングが多くて好きですね。いつも楽曲から、前へ進むためのパワーをもらっています。みんながいてくれたから、僕はここまで来れたと思っています。」
そして今後も野村さんは、たくさんの人を巻き込みながら、岐阜を盛り上げてくれるだろう。フグが好きな人もそうでない人も、お酒が好きな人もそうでない人も、ここなら好きな一品が見つかるはず。ぜひ一度「旨いもん処 のん呑」に足を運んでみてはいかがだろうか。