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岐阜県各務原市にある「創作料理すくな」をご存知だろうか。
名鉄の最寄駅から、徒歩で行くことのできる好立地にあり、入口暖簾の両面宿儺の可愛らしいイラストが出迎えてくれる。今回お話を伺うのはオーナーの丹羽 祐太(にわ ゆうた)さん
- 店名の由来
- 店主の異色のキャリア
- 進化するお店
- 地元の「縁」が集まる居酒屋を目指して
- 今の「すくな」、そして未来の「すくな」
① 店名の由来
まずは丹羽さんに店名「創作料理すくな」の由来について尋ねてみた。
「実は某マンガに出てくる『両面宿儺』からきているんです。」
筆者の乏しい知識を辿ると、両面宿儺はあまり良い印象ではなかったように思う。改めて詳しくお伺いしてみた。
「実在する歴史上でも両面宿儺は悪者扱いされているんです。ただ、岐阜の地では守神という言い伝えもあるんです。諸説ありますが、岐阜の山間部飛騨地方から関市方面にかけては両面宿儺は観音様の化身という事で祀られているんです。」
丹羽さんの地元で代々言い伝えられ、祀られてきた守神「両面宿儺」を名をとって「すくな」と名付けたのだという。
② 店主の異色のキャリア
飲食店をオープンされるまでの丹羽さんのキャリアについてもう少しお話を伺った。実は最初から飲食業界にいたわけではないようだ。その異色の経歴が丹羽さんが生み出す独創的なお店につながっているのかもしれない。元々は何をされていたのか尋ねてみた。
「昔の話しなんですが、飲食業界とは全く違う仕事をしていました。トラック運転手や現場作業員として働いていたんです。でも、元々料理が好きだったので『いずれ居酒屋をやりたいな』という夢を持つようになりました。そんな時に地元の飲食店さんで働かせてもらったのがきっかけです。」
さらに飲食業界に入ってからのことをこう語る。
「最初は地元のお店でしたが、地元での仕事を選ぶと学びが限られると考え、より沢山の経験を積むために岐阜県にある有名な串料理店で修行を始めました。その後も様々な和食屋で働き、多様な料理スキルを身につけさせてもらいました。」「新店舗のオープニングに関わらせていただき貴重な経験もしましたし、名古屋の居酒屋でも働きました。そこでは大人数に対するサービスを学びましたね。また、キッチンでの責任ある役割を担い、大規模な業務も経験しました。」
丹羽さんの料理キャリアは、料理学校での教育を受けたわけではなく、現場での実践的な経験を通じて形成されたようだ。また、その熱量からも、常に学ぶ姿勢を持ち続けていると感じさせられた。
③ 進化するお店
一見、物静かに感んじる丹羽さんだが、内に秘めた料理への情熱やお考えは凄い。まずは何故ご自身の地元の関市ではなく、ここ各務原にお店を構えたのか伺ってみた。
「お店をオープンするにあたって場所も色々検討しました。もちろん関市でのオープンも考えましたよ。しかし、ある知人から『地元でお店を開いては進歩はない。甘えてしまうよ』と言われました。でも、これを言われた時になるほどと思ったんです。なので、あえて地元ではない場所でオープンさせました。」
先程の内容にもあったが、学びや進化を止めないために、あえて難しい環境を選択される丹羽さん。筆者だったら間違いなく地元を選んでしまいそうだが、甘えられない状況を選び地元の人に頼るのではなく、そこの土地で暮らすお客様に育ててもらうんだという強い覚悟を感じた。そんな思いがわかるエピソードがもう一つある。
提供する創作料理について話してくれた。
「その名の通り創造性豊かな料理を提供しています。ただ料理のスタイルは、創作料理が推しではあるのですが、来てくれるお客様の意見を聞いて変えて作っています。以前も今も創作料理を提供している事に変わりはないのですが、ここに来てくれるお客様から『ここら辺で来るお客さんで創作料理を食べようという人は少ないぞ』と言われた事がきっかけで創作料理でも居酒屋寄りにしました、柔軟に変化させているんです。」
ご自身のこだわりも守りつつ、その地で暮らすお客様の意見も柔軟に受け止め、取り入れる。だからこそ、地元で愛されるお店になっているのだと納得できた。
丹羽さんは、さらにお店の強みについても話してくれた。
「お店で提供するお米、きゅうり、トマト、そして白菜は全て自家製のものを出しています。その中でもお米にはこだわっていますね。そのおかげか『甘い!!』と言ってもらえることが多いですね。自分で賄えない食材でも、可能な限り地元で、地産地消を心がけています。」
コロナの影響もあり、時間的余裕ができたそうだ。最初は軽い気持ちで畑弄りを始めたとの事だが、気付けば畑仕事もとても楽しい時間になっているのだとか。結果的にご自身で作られた作物を自分のお店で自分で調理して提供する。飲食店を営んでいる方なら、誰もが目指す最良の形になったのではないだろうか。
地元の声を聞き、地元の食材を使い、地元の方々へ提供する。丹羽さんの料理に対するこだわり・情熱・お考えをたくさん聞かせていただくことができた。
④ 地元の「縁」が集まる居酒屋を目指して
丹羽さんに「創作料理すくな」の主な客層を伺ってみた。
「主な客層は40代以上の方々です。若い客層よりも年配の客層が圧倒的に多いですね。これは料理のスタイルやお店の雰囲気が年配の方々に好まれてるということですよね。30代以下の若い客層は全体の約20%に満たないですね。」
これはお店が提供する料理や雰囲気がより成熟した客層に適しているのだと思う。綺麗な店内なのは間違いないが、確かにどこか懐かしさを感じられる・行きつけのような落ち着いた雰囲気だと感じた。
「ただ若い世代の方にも来て欲しいですね。幅広い年齢層のお客様や様々な背景を持つ方達にお店に来て欲しいですね。『創作料理すくな』で知り合ったり、友達になったり、同窓会で使ったりと多くの『縁』の中の一つになれたらいいなと思いますね。」
一飲食店としてではなく、性別や年齢の壁も超えて皆んなが集える落ち着いたコミュニティーの場にしたいという。人が人を呼び、また違う人へ繋がる。今まで多くの縁と触れ合ってきた丹羽さんならではの発想を聞かせてくれた。
⑤ 今の「すくな」、そして未来の「すくな」
「創作料理すくな」と丹羽さんは、どのような未来を見つめているのだろう。現状を聞いてみた。
「現在は、自分一人でほぼ全ての業務を行っています。料理を含め料理に関わることはもちろんですが、お店の運営に関わる経営的な部分、お店の清掃業務に至るまで全てです。ランチの仕込みから夜の営業までとなると、ほとんど休む時間はありませんね(笑)。ただ料理が好きで夢だったので簡単には音をあげませんよ(笑)。」
このお店を、一人で全て回していると思うと当然大変だろうと思う。しかし、やりたかった事だからとしっかりとした眼差しで答えてくれた丹羽さん。その発言からも熱い気持ちが感じられる。
さらに今後の展望についてもお尋ねしてみた。
「今のお店がある程度軌道に乗ったら、将来的には複数の店舗を展開してみたいとも思っています。次の店舗ではフレンチや他の料理のスタイルに挑戦してみるのも面白いかなと思いますね。あと、農業をより本格的に行い、飲食業との両立ができれば良いなと思います。」
地産地消を目指し、独自の創作料理でお客様を満足させてくれる創作料理すくな。お店を構える、その土地でお客様と共に成長する。
そんなホッコリしつつも熱い想いを今回の取材ではお聞かせいただいた。今以上に地元に愛されるお店になるだろうと思いつつ、お店を後にした。