昭和24年の創業から時代に沿った鉄加工を続ける「スザキ工業所」を訪ねてみた。

TOM
よし、鉄棒で勝負だ
SARA
なんなのよ急に。
TOM
サラは逆上がりできなさそうだから、勝てるかなと思って
SARA
わたし本当にできないのよ・・・涙

 

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各務原市にある「株式会社スザキ工業所」をご存知だろうか。
スザキ工業所は鉄を加工する事業を行っており、車の部品から農業用具、医療器具まで幅広く生産する企業だ。本日は代表取締役社長である鷲﨑純一(すざき じゅんいち)さんと、社長の息子さんである圭一朗(けいいちろう)さんにお話を伺った。

 

 

 

 

今回のツムギポイント!
  1. 祖父の創業からバトンを継いで
  2. 車の部品以外への業務展開
  3. ロボットもAIも積極的に取り入れる
  4. 社長が大切にしている考え方
  5. 次期社長の胸の内

 

 

 

①祖父の創業からバトンを継いで

 

まずは鷲﨑社長に、創業からのスザキ工業所の流れを尋ねてみた。どのような事業を行い、どのように変化してきたのかについて鷲﨑社長はこう語る。

 

「私の祖父が昭和241月に創業しました。当時は個人で鉄を加工する仕事を始めたんです。それからずっと70年以上続いてきて私が社長で言うと5代目なんです。もともと私がこの会社に入った時はうちの事業内容は100パーセント車関連の仕事だったんですよ。けれども長い時代の流れの中で、取引先が1社のみというのはこれからの時代乗り切れないと思うので、今は他業界への進出を目指しているという感じです。」

 

「他業界への進出は目指していますが、今でも80パーセント程度が車で、20パーセント程度は自動車以外という感じです。まだまだこれからというところです。」と語ったが、そのパーセンテージの動きは筆者にはとても大きなもののように感じた。

 

「私が目指す会社の姿になるように今まで営業戦略も立ててきました。ただいかんせん車関連事業のウェイトがまだまだ重くなっているので新規事業や他分野に手を広げ始めたところです。」

 

親子3世代、社長5代にわたる会社を継いだ鷲﨑社長。

 

当時は生まれた時から親にも近所にも「お前が後継ぎだ」と言われて育った時代であったため、幼少期からなんとなく自分が後を継ぐのだと理解していたという。さらに鷲﨑社長自身がとても、ものを作るのが好きなのだと教えてくれた。家族のものづくりをする姿やものづくりに対する姿勢を見ていたからかもしれないと感じた。

 

「昔から自分でなんでも作りたかったんです。例えば会社で使う棚だとか、台だとか金型だとか。昔は自分でパソコンのプログラムを組んだりもしていたんです。それくらいなんでも自分でやりたいことは自分でやるのが好きだったんですよ。」

 

筆者もDIYや興味のあることは自分でやりたいと考えているので、これには同感であった。しかし、そのスキルを仕事に活用できる点には純粋に尊敬する。

 

 

②車の部品以外への業務展開

 

スザキ工業所は現在、車の部品以外へも事業を展開している。

 

「車以外だと、農機具があります、それに建築資材もやっていて、あと福祉機器もやっているんです。」と話す鷲﨑社長。

 

部品を作るというのは実際にはどういう流れなのか。建築資材を始めたきっかけを鷲﨑社長はこのように語る。

 

「鉄に関しては全くノウハウがないお客さんがスザキ工業所に相談に来てくださるんです。こういうのを作りたいんですけど、お知恵を貸してほしいという話になって、お客様にはまず用途だけ聞くんです。粗方聞いたら私自身がほぼ設計をします。所有している機械でできるように設計するので当然設備投資も少なくて済むし、部品材料はうちにあるので、お客様の要望通りのものを作れるんです。」

 

初めての分野についても自身の経験とお客様からのヒアリングで部品を作れてしまうという。

 

「そうしてなんとか車以外の分野でも少しずつではありますが馴染んでいってますね。今のところはBtoBなんですけど、BtoCの部分も今後できたらいいかな、と考えています。」

 

さらなる展望を語る一方で、車の部品を専門としてきた企業だからこその苦難もあるのだと話す。車は消費まわりが比較的早いプロダクトだ。

 

「自動車業界に長くいるので、事実上営業っていないんです。営業をかけなくても定期的にお客さんから図面がくるので見積もりを作成して送ると、金額と納期が合えば発注していただけるんです。なので、営業はもう何十年してないからうちには営業のノウハウもないし、営業をする人材もいなくて。」

 

そう話す鷲﨑社長。しかし、スザキ工業所の未来へ進む力は、目を見張るものだった。

 

 

 

 

 

③ロボットもAIも積極的に取り入れる

 

スザキ工業所ではロボットやAI、DXの導入を積極的に行い、業務負担の軽減を目指している。新しいテクノロジーへの向き合い方が非常に柔軟な印象を受けた。

 

コロナ禍の頃に、工場での生産管理にAIを導入したという。

 

「ありがたいことにたくさんの受注があるんです。それを人間が生産計画を立てていたんですがやはり人なので限界があるんです。無理が出てきてしまったんです。うちの現場のベテランさんが頭をフル回転させて生産計画を立ててたんですけど、慣れた人でも1日の生産計画を立てるのに2時間はかかるんです。不慣れな人がやるともっと時間がかかるんです、3時間かかったり、変な話、私は生産計画を立てられません。多分1日かかってもできないんじゃないかな。だけど、それはやっぱり良くないと思ったんです。生産計画を立てていた人が突然病気とかケガとかで出勤できなくなったら、会社が回らなくなるんです。なので、今まで人間が頭で考えていた生産計画についての立て方をAIに教え込んでいます。今となってはほとんど、うちが求めるものと同じ計画が立てられるようになったんです。今のところ問題は何も起きていないんです。」

 

これは時代にのってAIを取り入れなくてはいけないという思いからではなく、単に問題解決の手段として選んだものがAIだったという。

 

「僕は、AIが欲しかったわけでも、DXを取り入れたかったわけでも何でもないんです。会社の困りごとを解決しようと考えた結果がAIの導入やDXを推進していくことになっただけなんです。多分この先もうちのやり方としてはそうなると思うんですけど。」

 

鷲﨑社長は見栄を張るでもなく、焦るでもなく、ごく必要なものを取り入れていくという姿勢のようだ。

 

スザキ工業所では現在、タイムカードを廃止し静脈認証を取り入れたり、工場内にタブレットを配置してクラウドで即座に成果実績を共有するシステムも導入しているという。

 

 

 

 

 

④社長が大切にしている考え方

 

鷲﨑社長に大切にしている考え方を伺うと、

 

「見返りを求めて物事をすると絶対に良くないと思ってます。良くないというより見返りを人に期待するものじゃないって考えています。でも受けた恩は返さんとあかんとは思います。」という言葉がすぐに出てきた。

 

「仕事は苦じゃない。新しい設備とかを取り入れるときにどうやって使うと便利かとか、自分で勉強してこうやって使うのがいいかな?、こっちの方がいいかな?とかってやるのが私は好きなんだと思います。年齢とともにだんだん老眼にもなるし根気もなくなってくるんですけど、ものづくりが好きとかものづくりが楽しいっていう気持ちは変わりませんし、どんどん楽しくなってます。」

 

本当に心の底から、ものを作ることがお好きな様子の鷲﨑社長。ちなみに社長のものづくり好きはしっかりと息子さんの圭一朗さんにも受け継がれている様子だ。

 

「ものづくりってやっぱり楽しいんですよ。本当に面白いですよ。この世界に入ってけば入ってくるほど面白いと感じます。」と圭一朗さんもまた、嬉しそうに語ってくれた。

 

そうした社長親子の好きを仕事にする日々で、今後目指したいことは医療業界への参入だという。

 

「福祉機器の部品生産をやっているのですが、その流れの延長線で、医療の方にも今年から参入を検討して動き始めたんです。医療の分野で新規開拓できないかというところで今、営業活動も開始したんです。」

 

きっと鷲﨑社長の望む新規事業がうまく進むことを、筆者も願っている。

 

 

 

⑤次期社長の胸の内

 

スザキ工業所の今後を担っていくことになるであろう次期6代目社長に就任予定の圭一朗さんにもお話を伺うことができた。

 

「現在どこも、後継者不足で困っているようです。そんな中スザキ工業所は、後継ぎがいる事が強みだって父や周囲の方が言ってくれるんです。僕はこれまで後継者がいるっていうだけでそこまで重要なことだとは思っていなかったんです。でも、確かに後継者に僕がいるっていうだけで、お客さんからしたら安心してもらえるのかもしれないなと思っています。たまたま家が製造業だったっていうのもあったし、ものづくりってやっぱ楽しいんですよ。本当に面白いんですよ。僕は大学時代、起業とかしている友人を見て羨ましいなと感じた事がありました。自分は何やりたいんだろうなって考えたんです、出てきたのが”経営”でした。後継ぎがいない会社が多い中で時代に合った会社作りをして残っていけたら、ニーズはきっと集中してくると思っていて。その時のための体制作りが必要ですよね。余裕が持てたら今後は新規事業もやりたいです。」

 

インタビュー内で常々感じていた柔軟性のある社風について、圭一朗さんも感じている部分があるという。

 

「僕が何か新しいことをやりたいと思って、実際やると、みんなすんなりついてきてくれるんですよ。新しいことへの挑戦に社員も抵抗がないっていうか一緒に挑戦してくれるんです。僕が入る前から社長がそういう環境を整えてくれてたんです。」

 

相互の信頼関係と、クリエイティブ性が輝くような企業だと感じた。これからの鷲﨑社長親子から目が離せないと感じた。

 

 

 

 

 

株式会社スザキ工業所

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