日本で初めてホウ酸だんごを広めた「株式会社タニサケ」を訪ねてみた。

TOM
さっき、部屋で黒い物体が動いてたんだよ
SARA
それ、多分あいつよ!!
TOM
やっぱり一匹見つけたら30匹はいるのかな!
SARA
・・・なんか嬉しそうね・・・

 

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岐阜県池田町にある「株式会社タニサケ」をご存知だろうか。
日本で最初にホウ酸だんごを広めた、革新的な企業だ。本日は代表取締役の清水 勝己(しみず かつみ)さんにじっくりお話を伺うことができた。

 

 

 

 

今回のツムギポイント!
  1. 「タニサケ」の歴史
  2. 自社開発ならではの商品の強み
  3. 改善活動にも力を入れる
  4. どんな時でも「社員ファースト」を掲げる理由
  5. 今後の目標と大事にしたいこと

 

 

 

①「タニサケ」の歴史

 

まずは清水社長に、会社設立のきっかけを尋ねてみた。元々事業としてではなく、ボランティアとして周辺地域の婦人会などを回ってホウ酸だんごの作り方を教えていたのだという。会社名の由来を伺った。

 

「谷酒(たにさけ)さんという人が、ゴキブリキャップを考案しました。社名は開発者の名前なんですよ。谷酒さんがサッシメーカーを定年退職した後、ゴキブリ嫌いの奥さんのために自宅に5000匹ぐらいゴキブリを飼って研究してたんです。世の中でゴキブリに困っている人を何とか助けてあげたいという思いで、いろんな種類のゴキブリを飼って研究しました。すると、ゴキブリが玉ねぎをとても好むということが分かったんです。地元の婦人会からスタートして、いろんな全国各地に玉ねぎを入れたホウ酸団子の作り方を教えに行ってたんですよ。あまりにもよく効くので、もっと欲しいという声が多くなったんですが、みなさんから自分でこれ以上作るのは大変だし面倒だから商品化してくれないかという声も上がってきて、それで会社を起こされたという経緯です。」

 

清水社長は、転職を考えていた時期にちょうど知人から紹介があり、話を聞いたところ「面白そうだ」と入社を決めたという。その経緯を語ってくれた。

 

清水社長は創業者ではなく、初めは社員だったそう。どのようにして社長になったのか経緯を伺った。

 

「共同経営者の松岡さん(現相談役)がスーパーマーケットを経営していたんです。そのスーパーマーケットでゴキブリの被害に困っていたんですよ。谷酒さんが作ったホウ酸団子がよく効くということで、作り方を教えてもらったんですね。自分たちで作ったらすごい効いたので、これはいいって。松岡さんと谷酒さんの二人で一緒にスタートをしたんです。しかし会社ができてすぐに谷酒さんが亡くなってしまい、松岡さんが事業を引き継ぎずっと長い間やってたんですよ。私も縁があって株式会社タニサケに入社し、そこから社長になりましたが、本当に巡り合わせが良かったんだと思います。」

 

 

 

 

 

②自社開発ならではの商品の強み

 

タニサケ株式会社では、自社でゴキブリを飼育し研究を行っている。自社開発ならではの商品の強みを伺った。

 

「自社では、3種類ほどゴキブリを飼っています。日本の一般家庭に多い黒ゴキブリ、小さいチャバネゴキブリ、さらにワモンゴキブリという大型のゴキブリです。試験は社内で行いますが、後から玉ねぎよりもっと好きなのがピーナッツだとわかりました。創業時は玉ねぎでずっとゴキブリキャップを作っていましたが、ピーナッツの方が好きだとわかって早く効果が現れるピーナッツのバージョンも出しました。」

 

また、製造過程で必要な什器を自社で製造する事もあるとの事。

 

「少々のものだと什器も自社内で作ることが多いです。大きな機械や設備は専門知識がないとできないものもあるので、そこに関しては業者さんにお願いすることもあります。しかし簡単な改善は社内で行えるので、入社した社員に溶接や電気の資格を取得してもらったりもします。」

 

社員が電気や機械の仕組みを把握していなければ、自分たちが扱いやすいようには扱えないのだと語る清水社長に並々ならぬこだわりを感じた。

 

 

 

③改善活動にも力を入れる

 

日本一知恵が出る工場として、改善活動にも力を入れているという株式会社タニサケ。社内効率化について話を伺った。

 

「30年ぐらいずっと、改善活動は盛んにやっていました。日本HR協会というところがあって、企業がどんな改善活動をしているのか紹介している企業なのですが、日本HR協会調べによると、過去にタニサケは一人当たりの報奨金額が11年連続で日本一だったんですよ。」

 

その話を聞いて驚き、清水社長に「一人当たりの改善提案に対するお金を一番払っているということですか」と尋ねると「その通りです。」と仰った。

 

「例えば今はゴキブリ団子は機械で全部丸めるんですけど、昔は手で丸めていく人が必要な状況でした。会社がスタートした頃は、近所の方を集めて商品を作っていたような状況でした。」

 

事業が徐々に本格化していくにつれて、改善活動も進んでいったのだと清水社長は語った。

 

 

 

 

④どんな時でも「社員ファースト」を掲げる理由

 

清水社長は現在39人の社員を抱える中、社員ファースト、社員中心主義を掲げているという。なぜそのような理念を掲げているのか、清水社長のお考えを伺った。

 

「社員の方がこうしたいと提案してくれたら、基本的には受け入れるスタンスを取っています。改善というのは一人ひとりの社員の声を聞くというか。ある程度ルール付けはあるんですけど、中には本当にそれで改善できるの?と思うような提案もあるんですけど。ただ、せっかく出してくれた提案をダメって言っちゃうと提案って出てこなくなるんですよね。なので、どれだけ会社側が社員さんの声に耳を傾けられるかということが一番大事だと思うんです。」

 

また、社員にさまざまな手当てを支給していると伺った。これは社員からの要望ではなく、会社側からの社員への日頃の感謝を込めての計らいだそう。

 

「年に一度、親孝行手当とか、あと家族感謝手当というのも出しています。金額は気持ち程度ですが。給料のときに一緒に振り込んで、これで親孝行してくださいという気持ちで手当てを出しています。一人前の大人になるにはまず、親孝行をちゃんとできないといけないんじゃないかという考えから始まった手当てなんです。」

 

また、株式会社タニサケは社内イベントも充実している。

 

「社内イベントはコロナ禍で出来ないことも多かったのですが、最近はようやくイベントも復活してきました。月に一度はイベントを開催したいと考えています。コロナ前はよくやっていたんですけど、お楽しみ食事会というのがあって、社風委員というのがあるんですよ。何人か選抜されて、その委員の方が自分たちで食事を作って、みんなに振舞うんです。社員旅行も今年は4年ぶりに1泊2日で金沢にみんなで行きました。うちは、社員の積立なしで全額会社負担で社員旅行にいくんです。」

 

筆者が驚いて「そんな会社で勤めたことは、今だかつてないです。」というと清水社長はみんなとのコミュニケーションが一番大事だからと話してくれた。社員を大事にするという社長の心意気を強く感じた。

 

 

 

⑤今後の目標と大事にしたいこと

 

最後に、事業を通して清水社長の今後の目標を伺った。

 

「新しい商品を出していきたいと考えています。しかし、ただ新しい商品を出してもあまり意味がないんです。大手企業のやり方を真似するのではなく、商品に特徴があって、他社のものとはここが違うぞ、というようなものを持ってないと大手企業とは同じ土俵では戦えないと思うので。本当にタニサケにしかない、何かしらの特徴のあるものを作りたいです。例えば有効期間がとても長いとか。そういったもので勝負したいなと。決して価格ではなく効能とか効果で自信を持っておすすめできるものを出していきたいなと思っています。」

 

また、清水社長自身が大事にしている理念があるという。

 

「徳を積むってあるじゃないですか。例えば朝早く誰もいないところでひたすらゴミを拾う。そういう徳を積むっていうのが大事だと聞いたことがあって。人の見ているところだけでするんじゃなくて、誰にも見てもらえなくても行動する。大事なことはきちんとやらなきゃいけないなと思っています。」

 

徳を積むことが大事だという、清水社長ならではの説得力がある言葉を聞かせていただくことができた。社長のワンマンではなく、お客様や社員を第一に置いている清水社長。「先も立ち、我も立つ。」という言葉を大事にしていると謙虚に語る姿は、社長の鏡だと感じた。また、清水社長はゴキブリへの感謝も忘れない。株式会社タニサケでは6月4日を虫の日に定め、亡くなったゴキブリの供養を行なっている。虫を退治することで生活していると、真剣に仰った。

 

ゴキブリに怯える人を救いたいという心意気から、努力の末に開発された株式会社タニサケのゴキブリキャップ。これからも多くの人に届き、生活の助けとなることを願う。

 

 

 

 

 

株式会社タニサケ

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