岐阜の名所で広がるコミュニティ「GIFU TAKIBI TALK(焚き火トーク)」を訪ねてみた。

 

 

TOM
サラ、焚き火は好き?
SARA
好きよ!あの炎の温かい感じが良いわ。
TOM
僕も好きなんだ!!ホイル焼きも串焼きも直火は格別だよ!
SARA
・・・(トムにはまだ早かったわね)・・・

 

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岐阜市で毎月開催される「GIFU TAKIBI TALK(焚き火トーク)」をご存知だろうか。
焚き火を囲んで、知らない人同士でコミュニケーションを図るイベントだ。今回は、主催者の鹿島 元気(かしま げんき)さんにお話をうかがった。

 

今回のツムギポイント!
  1. 焚き火トーク=岐阜の文化×日常×コミュニケーションの融合
  2. 未知の価値を生む!焚き火の以外な役割
  3. 岐阜の新名物「焚き火トーク」
  4. 今後も続く、お客様目線がベースの運営
  5. より豊かな岐阜の文化づくりに焚き火で挑戦!

 

①焚き火トーク=岐阜の文化×日常×コミュニケーションの融合

 

 

GIFU TAKIBI TALK(焚き火トーク)は、DESIGN HI-(デザインヒー) 代表の鹿島さんと、アウトドアショップ change over(チェンジオーバー) 代表の中島さんのお二人で共同運営しており、焚き火を囲んで参加者同士でコミュニケーションを図るイベントである。2022年5月に始まってから2年以上続いている。
※インタビューは2024年8月時点

 

お話を聞かせていただいた鹿島さんの仕事は、デザイン事業とコミュニケーション事業の2軸で事業展開している。デザイン事業は「デザインヒー」で活動。コミュニケーション事業は「焚き火トーク」を中心に、「かわべのオフィス」、「GIFU OUTDOOR JAMBOREE」の3ブランドを企画し、活動している。

 

焚き火トークを企画したきっかけは、鹿島さんご自身がコロナ禍で在宅勤務を強いられ、誰とも話せずコミュニケーションの機会が失われていることに危機感を抱いたことが始まりだったという。

 

一切の外出ができなかった期間、鹿島さんはご自宅の庭で、大好きな焚き火をしていた。そのとき、幼少期のボーイスカウトの記憶が呼び起こされたという。友達と一緒にご飯を食べたり、みんなで焚き火を見ながら今日あった出来事を話したり、学校で誰が好きなのかを話したり。

 

そして、その大人版をイベントとしてやってみたらどうだろうか?と、この企画をひらめいたのだった。

 

「焚き火トークのこだわりは、岐阜の文化であるバーベキューやキャンプを掛け合わせて、『岐阜にある日常的な光景』を前面に打ち出すことでした。日常的な場所で、知らない人同士が焚き火を囲んでコミュニケーションを図ったら、最終的にどのような社会的な光景になるのだろうか?と興味を持ったのです。」

 

その話を中島さんに打ち明けたところ、中島さんも賛同したため、焚き火トークを共同で営むことになったという。

 

誰かとコミュニケーションを図りたいという自分や世間のニーズ、鹿島さんの幼少期の経験、バーベキューやキャンプという岐阜の文化、その3つを掛け合わせることで、焚き火トークは誕生した。岐阜が好きな鹿島さんだからこそ思いつく発想である。

 

 

 

 

②未知の価値を生む!焚き火の以外な役割

 

 

焚き火トークのコンセプトは、「自然に生まれる新しいコミュニティづくり」である。鹿島さんは、焚き火トークがきっかけで、参加者同士の新しい別のコミュニティができることが嬉しいという。鹿島さんたちはあえて関与せず、参加者同士で自由につながってほしいと思っている。

 

焚き火トークへ参加するのに事前登録は不要で、入場料500円を支払えば誰でも参加できる。『平日の仕事終わりの人』をターゲットとしているため、主に平日の夜に開催している。

 

マルシェ形式で店舗が出店しているため、店舗から飲み物や食べ物を買える。参加者は食べながら話したり、ボーッとしてくつろいだり、自由に思うように過ごすことができる。肝心のトークテーマは、参加者に任せている。

 

「焚き火を囲むと、自然とみんな話し出して、いつの間にか友達になっていることが多いんです。だから、あえて仕切らずその場を見守っています。」

 

その一方で、宗教的な勧誘や営業目的などの行為に対しては、ルールを設けてコミュニティの安全性を確保している。安心して参加できる工夫がされているので、参加者も心置きなく楽しめる。

 

焚き火トーク事業の収益は、薪代や会場費、広告費に当てられ、ほとんど残らない。しかし、焚き火トークは収益目的ではなく、鹿島さんたちが行っている事業全体のPRとして、大きな役割を果たしているのだという。

 

「焚き火トークの企画やプロデュースを通して、別の事業の仕事につながることがあります。仕事のきっかけとして、焚き火トークは貢献価値が大きいんです。」

 

焚き火トークを通して、鹿島さんたちの誠実な取り組みと思いを伝えることで、お客様からの信頼を得る。一見遠回りのように感じるが、信頼を得る近道なのかもしれない。鹿島さんの取り組みから、また一つ学ぶことができる。

 

 

③岐阜の新名物「焚き火トーク」

 

 

焚き火トークは、岐阜を代表する有名な場所で毎回開催されている。初回の開催場所は「長良川うかいミュージアム」だった。「焚き火を用いたイベントの開催」という前例がない中での交渉だったため、さまざまな準備と工夫を重ねたという。

 

焚き火台の設計構造や、煙が出にくい薪について、煙の燃焼効率の観点から説明を加えたり、燃えカスが飛散しないように防火シートを用意するなど、細部にわたった企画書を作成した。鹿島さんの熱意も伝わり、なんとか許可を得て開催にこぎ着けた。

 

初回が好評だったため、その後うかいミュージアムで定期開催するようになった。鹿島さんはこの成功体験をもとに、もっと日常的な場所で焚き火トークを開催したら面白いと考え、新たな候補地を探した。

 

その結果、「信長ゆめ広場」や「メディアコスモス みんなの広場」、「美殿町商店街」での開催につながった。特に印象に残っているのは、美殿町商店街での開催だったと鹿島さんは言う。

 

「商店街組合の協力を得て、商店街の歩道と車道を全部貸し切りました。路面店の方々にも事前にお願いをして、当日はお店の外に椅子を出してもらい、中だけではなく外でも食べることができるようにして、自由な雰囲気が広がっていたんです。だから、美殿町の焚き火トークが、私の中で一番形にしたかった光景でした。」

 

日常的な場所で焚き火を囲んで、みんなで椅子に座ってワイワイと語らう。この光景は、岐阜の社会に強いインパクトを与えることとなり、面白かったと好評だった。その結果、NHKやZIP-FMなどのメディアに取り上げられ、焚き火トークは岐阜中に広がった。

 

「美殿町商店街が好評だったので、次はどこで開催してくれるのだろう?という期待を最近感じています。大変ですが、やりがいを感じながら新しい場所を探しています。」

 

一時期は大垣でも開催したが、今はコンセプトを改め、岐阜市に絞っている。岐阜の人々の期待に応え、PDCAサイクルを回しながら、日々挑戦している鹿島さん。岐阜に焚き火トークという新しい文化と価値を根づかせている証拠だ。

 

 

 

 

④今後も続く、お客様目線がベースの運営

 

 

最近は口コミでも広がり、愛知県など県外からも参加者が増え、毎回参加されるファンもいるという。鹿島さんは、今後の展開についてどのように考えているのだろうか?

 

「岐阜の日常の光景として、焚き火トークを続けていきたいです。今のスタイルのまま、5年後も10年後も変わりなくファンがいる、このままの姿であり続けたいです。」

 

2年前に焚き火トークを企画したときの想いと変わらず、一貫性のある信念で説得力が感じられる。焚き火トークは発足以来、毎月1回の頻度で開催している。知名度が上がった今、開催頻度を増やすことは考えないのだろうか?しかし、鹿島さんは、月1回の頻度が適切だと考えている。

 

焚き火トークの参加者は、普段キャンプや焚き火をしないお客様が多い一方、一部焚き火が好きなお客様もいる。だが、焚き火が好きな人は家でも楽しむため、開催頻度はあまり重要ではないという。鹿島さん自身も焚き火が好きだからこそ、その気持ちがよくわかるのだ。

 

「多くのお客様が、『誰かと話すのが好き』という目的で参加されるんです。だから、そういうお客様にとって月に1回はちょうどよいのです。むしろ月1回という希少性が、特別な機会と感じさせ、満足度も高まると思います。」

 

冷静にお客様の心理や行動をよくリサーチされ、お客様目線をベースに運営する鹿島さん。この考えがベースにある限り、5年後10年後も変わらず、焚き火トークが続く未来が見えてくる。

 

 

⑤より豊かな岐阜の文化づくりに焚き火で挑戦!

 

 

鹿島さんは今、焚き火トークから派生して生み出される、新しい事業に意欲を示している。キーワードは「焚き火を用いたコンテンツ」だ。

 

2023年12月〜2024年2月に、焚き火を囲んで就活をする「KAKOMIBA」というイベントを岐阜新聞と共同で開催した。信長ゆめ広場という日常の場所で、キャンプ場のような非日常的な空間を作り、焚き火を囲みながら企業と学生が対話をする試みだった。参加者全員スーツの着用を禁止にして、ラフな環境でコミュニケーションを図るという斬新なコンセプトで、反響は大きかった。

 

「KAKOMIBAの企画は、焚き火トークを見た岐阜新聞さんから、お声がけいただいたことがきっかけでした。このように、焚き火を用いたコンテンツへと派生する試みにも今後挑戦したいです。」

 

鹿島さんが考えている構想はそれだけに留まらない。焚き火を用いた防災コンテンツにも着目しているという。例えば、金公園のベンチは焚き火台になる仕様になっている。この仕様は、災害時に速やかに炊き出しができるようにする目的がある。

 

鹿島さんは、災害時に住民の方々が混乱しないように、こういった情報を先に伝達しておくことが、いざというときの助けになると考えている。

 

「能登地震の時、混乱のため市役所に住民が殺到したようです。その結果、情報伝達がうまく機能せず、パニックを起こしたそうです。私はその話を教訓として、いざというときに備えて、『焚き火』と『キャンプ』を、防災の視点で発信するコンテンツに取り組みたいと思っています。」

 

金公園のベンチが焚き火台になることを、どれほどの人が知っているのだろうか?この情報一つとっても有益で、災害時に一人でも多くの人の命を救えるかもしれない。鹿島さんの挑戦は、岐阜の人々を救うという責任感へとつながっている。

 

鹿島さん自身、小回りが効くことを日頃から大切にしている。そんな鹿島さんが、大切にしている言葉は、「半径50m以内の人たちを幸せにする」と「50m10秒台で皆様の元へ」の2つだという。

 

「私は、岐阜生まれ岐阜育ちで岐阜が好きです。一方で、岐阜は狭いので、本業のデザインの仕事でお客様に支持されるには、デザインのクオリティと同時に、私自身のパーソナルな部分も大事だと思っています。だから私は、『呼んだらすぐに駆けつけるクリエイター』を常に心がけています。」

 

岐阜に対する愛情を持った活動と、フットワークの軽さから、誠実さと信頼感が伝わる。

 

そんな鹿島さんが主催している焚き火トークは、毎月岐阜市で開催されている。岐阜の日常を感じながら焚き火を囲む、岐阜の人のためのコミュニティだ。

 

まだ参加したことがない方は、この機会に参加してみてはいかがだろうか?飛び込みでも参加できるので、気軽な気持ちで岐阜の仲間を作りにいこう。

 

 

 

 

 

GIFU TAKIBI TALK(焚き火トーク)

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