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美濃市にある「ゲストハウス 笑び(わらび)」をご存じだろうか。
2010年にオープンした、宿泊はもちろんカヤックやSUP(サップ)の体験ができるゲストハウスだ。今回は、オーナーの池上 友之(いけがみ ともゆき)さんにお話をうかがった。
- 人が集い、笑いながら楽しめる場所
- 自分らしい選択を
- 笑びならではの魅力
- 地域やお客様に還元していきたい
①人が集い、笑いながら楽しめる場所
豊かな自然に囲まれた一軒家を宿にした「ゲストハウス 笑び(わらび)」では、快適な客室での宿泊のほか、敷地内でのBBQや花火、各種レジャーが楽しめる。
はじめに、「ゲストハウス 笑び」の名前の由来をうかがってみた。
「蕨生(わらび)という地名にちなんでいるんですが、地名をそのままつけるのも面白くないなと思ったんです。宿で過ごす時間やレジャーを笑いながら楽しんでもらいたいという意味を込めて、”笑う”と”遊び”で『笑び』にしました。」
地名と施設のコンセプトをミックスさせた由来だと話してくれた。
池上さんは大阪出身で、これまで東京、和歌山、三重に住んでいたこともある。岐阜の地で宿泊業を始めるに至った経緯を尋ねてみた。
「僕自身、趣味でカヤックをしていたこともあり、川の近くに住みたかったんです。元々は仕事で岐阜を訪れたんですが、先に岐阜に移住していた友人と話すうちに、もうこっちに住んだら?という話になったのが始まりでした。」
その流れで、ちょうどタイミング良く現在の笑びになる一軒家を見つけたのだという。
「東京に住んでいた頃にカヌーのサークルに入っていて、川の近くのベースにみんなが集まって楽しんでいる雰囲気がすごく好きで、いつか自分もそういう場所を作りたいという思いは漠然とありました。住んでみたら立地や雰囲気もイメージ通りだったので、ゲストハウスという形で宿泊業を始めました。」
元々はゲストハウスを営むためではなく、池上さん自身が趣味のレジャーを楽しむために住み始めたのだという。そこからゲストハウスで創業に至ったのは、池上さんのみんなが集まって楽しむ場所を作りたいという強い思いの現れだと感じた。
②自分らしい選択を
これまで営業職、スポーツ施設でのマネジメント業、林業、機械整備業など幅広く従事してきた池上さん。未経験の業種に挑戦することへの不安はなかったのだろうか。
「特に不安はなかったですね。いま思い返すと、勢いってすごいですよね。家も見つかったしなんとかなるだろうみたいな。不安というよりは、その時にできることをやるというのに必死だった気がします。オープンしてすぐは当然お客様が来ないので、カヤック仲間に声をかけたり、ホームページや旅行サイトを通して少しずつ認知度を上げていきました。」
オープン当初は、目の前のやるべきことをこなすのに必死で、不安を感じる暇がなかったと振り返る池上さん。むしろ、1.2年経過してからの方が不安や悩みを感じることが多かったという。
「ひと通りやるべきことが終わって少し落ち着いてきたと思ったら、今度は思うように軌道に乗らなかったり、シーズンによって閑散期もあるので、そこをどうしようかという悩みはありました。今はある程度サイクルもわかってきて、多少は仕方ないと思えるようになってきましたけど、やっぱり最初は波が分からないんで、そういう意味での不安はありましたね。」
「笑び」のホームページやインスタグラムには、お客様との写真が多く掲載され、とても楽しそうな雰囲気が伝わってくる。「笑いながら楽しんでほしい」という思いを、池上さん自身が体現しているように見える。
「楽しいという言葉が正しいかはわからないですが、自分らしくいられているとは思いますね。27歳の時に出会ったカヌーを今でもずっと続けられているし、それがスポーツ施設での仕事にもつながったし、そこでの経験がいまのレジャー体験やスクール業にも活きているし、これまでの経験すべてがつながっています。」
宿泊業も、コロナ禍で大きな影響を受けた業種のひとつだろう。当時の状況を振り返っていただくと、返ってきたのは意外な言葉だった。
「ゆっくり過ごす良い機会だったので、のんびりしてましたよ(笑)この辺を歩いていても数時間に1人か2人すれ違うくらいだからマスクも必要なかったし、外のウッドデッキで昼食を作って食べたり、庭で景色を見ながら作業したり、やっぱり動かないと体もなまってくるので、外でトレーニングしたり、そんな感じでしたね。もうこれは仕方ないと思いながら過ごしていました。」
この立地と環境だからこそ耐えられたのかもしれないと話す池上さん。
「たぶん、東京で同じことをやっていたら続けられていなかったと思います。コロナの影響を最小限に食い止められたのは、維持費などのコスト面も含め、やっぱりこの場所だったからだと思いますね。自分の選択は間違っていなかったんだと再確認できました。」
③笑びならではの魅力
近年ざまざまなスタイルのゲストハウスが増える中、昔ながらの典型的なスタイルが楽しめる「ゲストハウス 笑び」。
「由来は諸説ありますが、バックパッカーたちが泊まるような、自分が住んでいる家に招くという、本来のゲストハウスと言われるスタイルでやっています。」
技術革新が進み、さまざまなものが便利になっていく現代だからこそ、シェアハウスのような空間で味わえるアットホーム感や、大自然に囲まれた開放的な立地は、とても魅力的なのかもしれない。
「最近はうちみたいなローカルな場所に来る方が増えています。都会は人だらけなのでやっぱり疲れちゃうみたいですね。とにかく一息つきたいとか、ゆっくり過ごしたいとか、次の観光地に行くまでの休憩に使う方も多いですね。」
近年は、海外からのお客様も増えてきているという。
色々な新しい事が乱立してくるこの時世で、昔ながらの古風も取り入れる「ゲストハウス 笑び」。何もかも新しければ良いとは限らないということを再認識させられる。
④地域やお客様に還元していきたい
創業から15年を迎えた現在の悩みや課題をうかがってみた。
※インタビューは2024年7月
「ちょっと老朽化が進んできているのは悩みですね。やっぱりこの価格でやっているので、そんなに大規模なことはできない。自分のできる範囲で少しずつ壁紙を貼り替えたり、空調設備を整えたりしています。」
今後の展望や目標を尋ねてみた。
「実は向こうにもう1棟あるんですが、物置状態になってしまっているので、そこも宿泊施設として使えるようにするのが直近の目標ですね。あとは、なかなか余裕がなくて今までできていなかったんですが、地域の子どもたちに川のレジャーを安価で提供してあげたり、地域の人たちに還元する活動ができたらいいなと思っています。」
「ありがたいことに海外からもたくさん来ていただいているので、今度は僕が滞在中に仲良くなった方々の元を訪ねるというのが夢です。そんなに海外旅行の経験は多くないですが、海外の方とコミュニケーションを取るのは好きなので、いつか実現できたらいいなと思っています。」
今後やりたいことと、池上さんの夢を話してくれた。昔ながらの典型的なゲストハウスのスタイルが楽しめる「ゲストハウス 笑び」。
美濃の美しい大自然に囲まれ、四季を通してさまざまなレジャーが楽しめるほか、少し足を延ばせば、伝統や歴史を感じられる町並みが広がる。
ぜひ一度、美濃の大自然と伝統に触れるプランを組んでみてはいかがだろうか。