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岐阜市にある「丸永建設株式会社」をご存知だろうか。
地域の文化や伝統を大切にしながら、そして顧客の夢や希望を形にした家づくりを手がける建設会社だ。今回は、そんな丸永建設株式会社の2代目として活躍している代表取締役、永井 秀樹(ながい ひでき)さんにお話を伺った。
- 社名の「丸」の字に込めた想いとは
- 「仕事のやり方を変えたい」と社長に就任
- 社長のプレッシャーを乗り越えて
- 古民家を現代の形に合わせて再生
- 「日々行動、即実践」の言葉を胸に
①社名の「丸」の字に込めた想いとは
丸永建設は昭和57年、永井社長のお父様によって創業された。平成17年に秀樹さんが社長に就任し、同社を経営している。なぜ社名は「永井建設」ではなく「丸永建設」なのだろうか?早速質問してみた。
「社名については、僕も小さい頃、不思議に思い父に尋ねたことがあります。父の答えは『縁起が良いから。末永くお客様に愛される会社でいてほしいから』でした。」
永井社長は、このお父様の考えについて、更にご自身で新しい解釈を加えている。
「丸永建設は、社長の僕1人では成立しません。お客様がいて、社員がいて、協力会社の皆さんがいて、初めて仕事ができるんです。住まいを通して、皆が心豊かに過ごせればいいな、笑顔になればいいなと考えています。そうやって、末永く皆さんとお付き合いをしていきたいという想いを丸永建設に込めて活動しています。」
②「仕事のやり方を変えたい」と社長に就任
永井社長は高校を卒業後、広島にある大学の建築学科に進学した。誰かに強制されたものではなく、進路選択のタイミングで、自然と建築が浮かんだのだという。しかし永井社長が学生だった当時は就職難の時代だった。
「父に相談したところ『それなら、うちで知識や技術を身に付けてみたらいいよ』とアドバイスを受けました。そして大学を卒業後は丸永建設に就職しました。新入社員として一番下からスタートしました。」
そして永井社長が35歳のときに社長を継ぐ。35歳といえば、仕事が面白くなって来る、脂が乗った働き盛りの時期だ。何かターニングポイントはあったのだろうか?
「35歳のときに、自ら代表をやりたいと父に言いました。もちろん父も将来的には継がせようとは考えていたとは思いますが、切り出したのは僕からですね。」
どのようなきっかけがあったのだろうか?
「ずっと、大工さんに混じって丸永建設の現場で働いていました。そして家づくりに求められるものが、どんどん変化していることをすごく肌で感じ取っていたんです。父の時代は、お客様も「建築屋さんにお任せします」というのが主流でした。お客様と打ち合わせをすることがあまりなかったんです。しかし今は、作り手ばかりが提案して、お客様がそれを受け入れる時代ではなくなっています。作り手はお客様の気持ちに寄り添い、お客様が満足することを第一に考える必要があるんです。ただ、一社員の状態のままでは、なかなか組織を変えることができません。ですから、社長にしてくれと父に伝えました。父もすんなり『じゃあ、やってみろよ』と応じてくれて、社長になったんです。」
お父様も、きっと永井社長のことを頼もしく感じたことだろう。
③社長のプレッシャーを乗り越えて
35歳で社長に就任した永井社長。家業を継承するにあたって、プレッシャーはあったのだろうか?
「プレッシャーはありました。今でも感じています。ただ、それは家業を潰してはいけないというプレッシャーとは少し違います。社長は社員を、そして社員の家族を守る必要があるからです。さらに丸永建設を信頼してついてきてくれている、パートナー、協力会社の社員や家族も守る必要があるんです。」
そしてもちろんお客様に対しても、大きなプレッシャーを感じている。
「家は、購入してそれで終わりではありません。維持し続け、管理し続ける必要があります。お客様に何かあったときに駆けつけられるよう、丸永建設を永続しなければならないというプレッシャーがありますね。正直に言って、僕は組織の代表をやるような器ではないと思います。しかし、チャンスをもらえたんだと考え、仕事に真摯に取り組んでいます。」
この謙虚かつ前向きな姿勢こそ、丸永建設が長く地域の人から愛される秘訣なのだろうと感じた。
④古民家を現代の形に合わせて再生
丸永建設の強みはたくさんある。建てた家をメンテナンスしてくれる”おうちドック”もその一つだ。
2023年は幸いにも台風が少なかったが、毎年たくさんの台風が家を襲う。また、岐阜には年に1、2回はドカっと雪が降る地域が多い。そのような災害に遭うことで、見た目にはわからなくても家はダメージを受けてしまう。また、屋根などの高いところにダメージを受けていることもある。
このように、住んでいても気づきづらい家のダメージを定期的に点検してくれるのが”おうちドック”だ。家も人間と一緒で、症状を放置しておくと重症化し、治療に高いお金がかかってしまう。定期的にメンテナンスをすることで、家を心地よい状態に保てるというわけだ。
また、古民家の再生も、丸永建設が得意としているサービスだ。
「一番丸永建設らしい家づくりといえるが、古民家のリノベーションだと僕たちは考えています。」
丸永建設の大工さんは皆スキルが高い。古民家のみならず、神社仏閣での仕事も手掛けている。丸永建設のホームページでは、社務所の耐震リフォームを行った事例が紹介されている。
古民家の再生は難易度が高い。図面上では問題なさそうに見えても、現地に行ってみると、実は基礎から腐っていたということもあるという。
「古民家の価値は、単純に固定資産税だけで見るとほぼ0円です。最初は3千万円の価値があったとしても、25年から30年で数千円まで下がってしまいます。しかし、100年前の古家に使われている木は、今探しても見つけることはできません。固定資産税では測れない価値が、古民家にはあるんです。そういった、古民家の木そのものの美しさや、伝統技術を引き継いでいきたいと考えています。」
もちろん、ただ古さをそのまま残すだけではない。
「昔の良さを残しつつ、耐震技術を施すなどしています。また、古民家はどうしても夏は暑く、冬は寒いものも多いんです。特に岐阜は夏はとても暑くて冬はとても寒いですよね。冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるように、昔の技術と最新技術を融合してリフォームをしています。また昔の家は仏間が中心で、日当たりもよく、庭が見える場所に位置していました。冠婚葬祭も自宅で行っており、ご近所の人たちが大勢集まるため、仏間が重要だったんです。しかし今は時代が変わっています。冠婚葬祭も自宅ではなく、別に会場を借りて行うことが多いですよね。ですからリフォームのときは、仏間を残しつつ『この日当たりが良く明るい場所を、リビングにしましょう』などと提案しています。これから住むご家族が心豊かに過ごせるよう、間取りなどを今の生活様式に合わせて変えています。丸永建設は耐震や省エネを考えるのが、すごく得意な会社なんです。」
そんな丸永建設は、古民家の再生だけではなく、新築の物件も多数手がけている。
「例えばレジャーランドに遊びに行って、すごく楽しい気持ちになったとしますよね。そのまま自宅に帰って来たときに『やっぱりお家が一番いいな』と思ってもらえるような家づくりをしています。」
新築と古民家再生、両方に強みを持つ丸永建設だからこそ、古民家をただ補強するだけではなく、今の時代に沿った形で蘇らせられるわけだ。
⑤「日々行動、即実践」の言葉を胸に
丸永建設は、どのようなお客様をターゲットとしているのだろうか?
「大きく分けて2種類あります。古民家リノベーションは、先代から引き継いだ家に住み続けたい、大切にしたいと考えるお客様をターゲットとしています。年齢層は、30代から50代くらいの方です。一方、新築は20代後半から30代の若年層がターゲットとなります。おかげさまで、今は紹介のお客様が多いですね。古民家のリノベーションをしたときに『実は私の知り合いにも古民家を持っている人がいるんだよ』と声を掛けていただけるんです。ホームページを見て来ましたというお客様はまだまだ少数なんです。なので、どうやって丸永建設を知ってもらえるか、広報が今の課題です。餅は餅屋と言いますし、自分たちで100%を達成できたとしても、結局自分たちの想像の範疇を超えられず、感動がありません120%、150%のものにしようと思ったら、プロに任せた方がいい。それは家づくりも同じだと考えています。」
そんな永井社長に、大切にしている言葉は何かを伺ってみた。
「尊敬する師匠のような人が僕にはいます。その人からいただいたのが”日々学び、即実践”という言葉です。僕は『今日はこんなすごいことを学べたな』と思っても、それをなかなか行動に移せない人間でした。しかしこの言葉をいただいてからは、すぐに行動しよう、実践しよう!と考えるようになりました。」
また、丸永建設では毎年書き初めを実施しているのだという。永井社長はいつも、そのときに言葉をつくるという。
「2023年は”限界突破”と書きました。僕はどうしても自分の感覚で”ここまで”という枠を決めてしまいがちなんです。ですが、その枠を飛び越えることで、自分の枠をどんどん広げていきたいと考えています。そして根底にあるのは、日々学び、即実践なんです。」
最後に、今後の展望について永井社長にうかがった。
「今、価値ある住宅がどんどん取り壊されつつあります。古民家に住むことを選択肢に取り入れられる環境の方で、悩んでいる方がいたら、どんどん丸永建設に相談してほしいです。岐阜市から揖斐郡は車で30分かかるかどうかくらいの距離です。岐阜市と揖斐郡の半径20km圏内を網羅できる工務店になりたいと考えています。古民家のリノベーションなら丸永建設と思ってもらえたら嬉しいですね。」
今回インタビューをさせていただいて驚いたのが、永井社長と筆者は同じ揖斐郡大野町の出身だということだ。大野町にも、どんどん新築の家が増えてきている。若い方が根付いていることを嬉しく感じる反面、大好きだった子供の頃からの風景が失われていくことに対する寂しさを覚えてしまう。
新築の家は綺麗でおしゃれだが、古民家には今の家では出せない美しさがある。昔ながらの伝統を大切に守りながらリノベーションする丸永建設の取り組みを、TSUMUGI.LIFEでも応援していきたい。