2年間で一生モノの資格を得られる「大垣市医師会准看護学校」を訪ねてみた。

TOM
最近、准看護師の資格に興味あるんだ!
SARA
いいわね!きっかけは何?
TOM
注射やサポートを通して人助けがしたいんだ!
SARA
・・・立派だけど、私たちは熊だからこの手では無理よ・・・

 

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大垣市にある「大垣市医師会准看護学校」をご存知だろうか。
西濃地区を中心に、多くの准看護師を輩出し、医療インフラを支えている看護学校だ。今回は、准看護師として働くことの魅力や、学校の取り組みについて、教務主任の川添さゆりさんと、広報担当の葛西 彩子(かさい あやこ)さんの2人にお話を伺った。

 

 

 

今回のツムギポイント!
  1. 准看護師と看護師の違いとは
  2. コロナと少子化の影響で生徒数が減少
  3. ライフスタイルを選べる「昼間定時制」とは
  4. 幅広い世代の交流が准看護学校の強み
  5. 「私はもう歳だから」とあきらめないで
  6. 学び直しの選択肢に「准看護師」を!

 

 

①准看護師と看護師の違いとは

 

大垣市医師会准看護学校の歴史は古く、大正時代までさかのぼる。
大正9年、大垣市医師会附属看護婦養成所が創設された。昭和27年に准看護婦養成所としての指定を受けている。平成9年には男子学生の受け入れも開始。長い間「看護専門学校」と「准看護学校」の2校体制で運営されてきた。

 

しかし学生数の減少に伴い「看護専門学校」の方が令和8年で募集を停止し、令和10年で閉校することが決まってしまった。今回インタビューした「准看護学校」の方は、今後も継続されるという。

 

そもそも「准」看護師とは一体何だろうか。准看護師のことを知っている人は、どれくらいいるのだろうか。

 

「准看護師の知名度は、かなり低いですね。私も昔は知りませんでした。」(葛西さん)

 

准看護師は、医師や看護師の指示の元、患者のケアを行う専門職だ。戦後、病院が増設され、看護師の需要が急激に増加した。また結核も流行していた。1950年の時点では、日本人の死因の1位は結核だったのだ。

 

しかし当時の女性の高校進学率はかなり低い。そこで看護できる人の数を増やすべく、中学校卒業後に准看護学校で2年間勉強すれば働ける准看護師が、1951年(昭和26年)に設けられた。なお、看護師は国家資格だが、准看護師は都道府県知事が発行している資格だ。もちろん資格を取得した都道府県以外でも就業は可能だ。

 

「准看護師は、国家資格ではないのですが業務独占資格です。採血、注射、点滴などの医療行為は、介護士ではできないけど准看護師ならできます。介護士から准看護師にキャリアチェンジする方もいますね。」(葛西さん)

 

「理学療法士など、リハビリ系のお仕事の方が学び直しに来るケースもあります。」(川添さん)

 

准看護師の勤務先には、どのようなものがあるのだろうか。

 

「需要は多いですね。准看護師は、どちらかというと地域の診療所や、クリニックで求められる傾向にあります。大きな総合病院、例えば急性期病院やICUの高度な医療が必要な場合は看護師を求めるというところが多いですね。ただ、世の中には『准看護師は、戦後の人手不足を補うための制度であり、看護師に一本化すべき』という意見もあります。」(川添さん)

 

「でも、准看護師が残っているということは、それだけ求められる現場が多いということなんですよね。」(葛西さん)

 

「そうです。ですから、看護師に一本化するよりも、それぞれが求められる場所で、協力しながら活躍するのが理想ではないかと私たちは考えています。」(川添さん)

 

 

 

 

②コロナと少子化の影響で生徒数が減少

 

看護師になるルートはいくつかある。例えば、高校卒業後、看護系の大学で4年間学ぶか、看護系の専門学校で3年間学び、国家試験を受けるという方法がある。准看護師の資格を取得した後、さらに専門性を身に付けたいと思った場合は、看護専門学校(2年課程)で学べば大学等と同様に看護師の受験資格を得られる。

 

大垣市医師会准看護学校で准看護師の資格を取得した後、看護師を目指す人の受け皿になっていたのが、大垣市医師会看護専門学校だった。しかし近年、准看護師から看護師を目指す人が減少してしまった。そして大垣市医師会看護専門学校の閉校が決まってしまったのだ。

 

「今後、准看護学校を卒業後、そのまま看護学校に進みたい生徒については、岐阜県内の他の学校への進学をお願いすることになります。」(川添さん)

 

「岐阜県内の進学先はいくつかありますが、大垣市内で引き続き学ぶという事ができなくなってしまいます。」(葛西さん)

 

なぜ、生徒数が減ってしまったのか?少子化が進んでいることも大きいが、追い打ちを掛けたのが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行だ。

 

メディアではしきりに看護現場の過酷さがクローズアップされた。その結果、看護は大変だというイメージが定着し、志す人がさらに減少してしまった可能性がある。大垣市医師会看護専門学校は残念ながら閉校が決まってしまったが、准看護学校は引き続き運営される。これから超高齢社会を生きる中でも、広く社会に貢献できる人材を育てて行きたいと考えていると話してくれた。

 

 

 

③ライフスタイルを選べる「昼間定時制」とは

 

かつては、中学校卒業後に准看護師を目指して入学する人が多かった、大垣市医師会准看護学校。今はどのような人が学んでいるのだろうか?

 

「今は新卒の若い方というよりも、20代、30代、40代の方が増えています。」(葛西さん)

 

すでに社会に出て働いていたり、子どもを育てていたりする人が、看護の世界に興味を持ったとする。しかし4年制の看護大学や3年制の看護専門学校にいきなり通うのはハードルが高い。また医療系学科の学費は高額で約400~700万はかかる。

 

しかし大垣市医師会准看護学校の場合は、制服や教科書代を入れても2年間で120万円だ。岐阜県や大垣市からの補助金があり、安く設定されている。これなら貯金で何とか通えそう、という人も多いのではないだろうか。

 

さらに、大垣市医師会准看護学校は昼間定時制だ。定時制というと夜間に通うイメージがあるが、昼間定時制の場合は、お昼から夕方までが勉強時間。全日制のように、週5日、丸一日拘束されるわけではないのだ。

 

「午前中は家事をしたり、自分の時間にあてたりすることも可能ですよ。」(葛西さん)

 

働いたり、子どもとの時間を確保したりと、自分に合ったスタイルで勉強できるというわけだ。

 

大垣市医師会准看護学校の場合は、以下のタイムスケジュールとなっている。

・週に1日は朝から夕方まで(9時~16時30分)
・土日/祝日以外の平日は13時20分~16時30分の講義

 

また、実習については以下となっている。

・1年生…夏に1週間と冬に5週間の病院実習
・2年生…5月下旬から12月にかけて約半年間の臨地実習

 

1年生のうちは、看護の基礎となる科目はもちろん、コミュニケーション、情報科学、日本語表現法など、現在の看護に役立つ知識を幅広く学んでいく。

 

人体については、栄養、薬理、感染と予防など、実際に患者様をお世話したり、診療のサポートをしたりするために必要な知識を習得する。仕事だけでなく、実生活でも一生役立つ知識になるだろう。

 

カリキュラムは学校によって特色があるが、特に力を入れているのが「コミュニケーション」だ。いくら看護の知識があっても、患者様とコミュニケーションがとれなければ、せっかくの知識を活かしきれない。そこで大垣市医師会准看護学校では、コミュニケーション専門のインストラクターを講師に招き、講義を行っている。

 

さらに、聴覚障害を持つ方と手話通訳士の方から学ぶ授業もある。医療従事者としての視点はもちろん、尊厳を大切にした人との関わりを学べるのが、同校の大きな特徴なのだ。

 

 

 

 

④幅広い世代の交流が准看護学校の強み

 

2年生の実習は、病院だけでなく、老人福祉施設や保育園などの実習もある。看護師といえば病院で働くイメージが強いかもしれないが、老人福祉施設や保育園でのニーズも高い。さまざまな場所で経験を積みながら、将来のキャリアを模索できるのだ。

 

「実習先に出かけると、当校の卒業生が学生を指導している立場になっているのを見かけます。学生に対し、とてもよい助言をしてくれて、すごくうれしいですね。『先生、元気?』『ここで頑張っているよ!』と声を掛けてくれて、エネルギーをもらえます。」(川添さん)

 

「卒業生の成長を目の当たりにしたり、他の先生から活躍を聞いたりするのが、とてもうれしいですね。」(葛西さん)

 

実習はグループ単位で行動する。年齢は10代から60代までとさまざまだ。もちろん社会人になってから看護大学や看護専門学校に通う人もいるが、ハードルが高く人数はあまり多くない。より幅広い学歴・職歴・バックグラウンドを持つ人達と一緒に学べるのが准看護学校の強みだ。異なる世代の視点を知り、意見を交わすことで、自分の視野がぐっと広がる。准看護師として社会に出てからも、必ず役に立つはずだ。

 

 

 

 

⑤「私はもう歳だから」とあきらめないで

 

2016年10月に「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」という書籍が出版され、ベストセラーとなった。これは「100歳まで生きるかもしれない時代に、どう生きていくか」をガイドする一冊だ。この本をきっかけにもしかしたら、自分も100年生きるかもしれないと意識し始めた人も多いかもしれない。

 

この本では、人生を100年生きる上で、自分で得意なこと、好きなことを見つけて仕事にする大切さを説いている。また、スキル、知識、健康、などのお金で買えないけれど大切な無形資産の重要性についても書かれている。

 

人生100年時代に、医療という一生モノのスキルを身に付け、准看護師として第二、第三の人生を踏み出すのは、選択肢としてかなり「アリ」ではないだろうか?

 

大垣市医師会准看護学校は、中学卒業以上で、学ぶ意欲と看護への興味・関心があれば誰でも受験できる。若い人はもちろん、30代以上の生徒も多い。経済的に自立したい人、今からでも医療、福祉に貢献したい人、若い頃に看護の道に進みたかったが、様々な理由により踏み出せなかった人、いろいろな人が集まっている。

 

「私はもういい歳だから、とおっしゃる方もいるのですが、遅いなんてことはありません。40代以上の方も学ばれています。」(川添さん)

 

「平均寿命も延びて年金をもらえる年齢もどんどん延びていますよね。」(葛西さん)

 

「そうですね。だから長く働ける資格を持つことはとても大切だと思います。」(川添さん)

 

「本校で2年間学べば、ご自身の人生の選択肢が変わることを実感できるはずです。」(葛西さん)

 

自分には無理かも……と考えている人も、ぜひ一度説明会などに参加してみてほしい。大垣市医師会准看護学校は、皆さんのチャレンジを全面的に応援してくれるはずだ。

 

 

 

⑥学び直しの選択肢に「准看護師」を!

 

岐阜県大垣市は、岐阜県で2番目に人口が多い。岐阜市の人口は約40万人、大垣市の人口は約16万人だ。そして、まだまだ医療人材が不足している。日本はすでに、人口の約3割が65歳以上という、超高齢社会に突入している。人生100年時代を、いつまでも自分らしく生きていくためには、医療によるサポートが不可欠だ。

 

「支えを必要とする人が、どんどん社会に増えています。若い人はもちろん、30代、40代以上の方のお力を、ぜひお貸しいただければ。」(川添さん)

 

しかし、コロナ禍の影響もあり、入学志願者は激減している。定員80名に対し、現在の入学者は約半数と、厳しい現状が続いている。同校では、2年間のなかでボウリング大会や社会見学といった行事もある。閉塞状況を打破すべく、学校の行事と重ならないタイミングでキッチンカーを呼ぶなどの楽しい取り組みも行っている。

 

「学びの中にも彩りがあるといいなと思い、様々な工夫をしています。」(葛西さん)

 

そして学校の一大イベントが、毎年12月初めに行われる戴帽式だ。看護師・准看護師を目指す学生が、初めての病院実習に臨む前に行われる儀式である。教員からナースキャップを受けることで、学生たちは看護の意識を高める。そしてナイチンゲールの看護の心を受け継ぐため、手にしたろうそくに火をともし、責任の重さを自覚する。看護師が主役のドラマで見たことがある人もいるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

同校の就職率は、100%を誇っている。准看護師は専門職であり、ずっと長く働ける。ライフスタイルに合わせて、働き方も選べる仕事だ。

 

「他の業種と比べても、いろいろな働き方が選べますし、自分が気に入ったところで働けます、その幅がすごく広いのが准看護師です。また、今は働き方改革も進み、有休や連休も以前と比べ取得しやすくなっています。ドクターヘリの看護師を目指し、関東に行った学生もいますよ。」(川添さん)

 

「今、社会人の学び直し、リカレント教育が注目されています。本校も、リカレント教育として選んでいただける学校になれるよう、認知度をさらに上げていきたいと考えています。」(葛西さん)

 

就職も、看護師を目指して進学もできる。さまざまな可能性を秘めた准看護師というお仕事。

 

一生、今の仕事を続けていくべきか悩んでいる人やどこに行っても稼げるスキルを身に付けたい人そして最も大切なのが、少しでも看護や医療の世界に関心がある人。このような人がもし周囲にいたら、「大垣市医師会准看護学校」という選択肢があることをぜひ伝えてほしい。

 

 

 

 

 

大垣市医師会准看護学校

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