日本一美味しいいちごを目指す「ウイングいちご」を訪ねてみた。

 

 

TOM
いちごってどうやって育てるか知ってる?!
SARA
知ってるわよ〜この間いちご摘み体験に行ったの!とっても楽しかったわよ〜
TOM
僕は誘われてないけど・・・サラは行ったんだね・・・
SARA
・・・(本当にめんどくさいわね)・・・一緒にウイングいちごに行ってみる?

 

この記事は約7分で読めます。

 

可児市にある「ウイングいちご」をご存知だろうか。
種から育てており、香りが豊かで濃厚な味わいが特徴のいちごを栽培している話題のいちごブランドである。今回は、総務・デザイン課 都築 (つづき )さん、安達(あだち )さん、アグリ事業部 川上(かわかみ)さん、いちご事業部 深谷(ふかや)さんにお話をうかがった。

 

今回のツムギポイント!
  1. 日本一美味しいいちごを目指す!
  2. 1ミリの種から育てる「よつぼし」
  3. いちご生産から紡ぐ地域共生
  4. 価値重視のいちご販売戦略
  5. 全ての人をもてなす体験へ

 

①日本一美味しいいちごを目指す!

 

 

「ウイングいちご」は、中部電力グループ会社の中電ウイング株式会社が運営する、ビニールハウスのいちご生産事業である。

 

2022年に「中電ウイングファーム」といういちご農園を開園した。

 

 

敷地面積が6000平米で、温室は11棟あり、最大29,000株を植えて約18トンのいちごを収穫できる規模である。栽培している主な品種は「よつぼし」だ。

 

「中電ウイングは障がい者雇用を促進する目的でつくられた企業なんです。いちごを通じてその活動に親しんでほしいという思いから、社名のウイングをそのまま使用しました。」

 

 

「ウイングいちご」というブランド名は、中電ウイングの社名から由来しているという。中電ウイングでは、在籍する障がいがある人のことを「チャレンジド=前向きに挑戦する人」という言葉で表現している。

 

この事業は、10年以上にわたるいちご研究の成果であり、3年間の実証栽培期間を経て大規模な生産に移行した。いちごが選ばれた理由は、社内で培った園芸技術が活かせること、栽培の楽しさと美味しさ、そして商品価値が高いことにある。

 

そんなウイングいちごのミッションは次の3つである。
1.さらなる障がい者の能力開発、雇用の促進
2.日本一美味しく品質の高いいちごを、お客さまに提供する
3.地域貢献

 

「市場に日本一美味しいいちごを提供し続けることで、働くチャレンジドのやりがいや自信を育み、新たなチャレンジドの雇用につなげることが一番の目的です。さらに小学生のいちご摘み取り体験の受け入れなど地域貢献事業にも取り組んでいます。」

 

中電ウイングとして、地域の特性を活かすことにかなり力を入れている。小学校との交流や、お祭りに参加するなど、地域の方とともに成長していく事業を目指しているという。

 

ウイングいちごは、これらのミッションを掲げながら、可児市で新たな価値を生み出し始めている。

 

 

②1ミリの種から育てる「よつぼし」

 

 

ウイングいちごでは、特に「よつぼし」の品種に力を入れている。よつぼしを選ぶ理由をうかがってみた。

 

「よつぼしは、甘味、酸味、風味が揃って、よつぼし級においしいことから命名されましたが、うちのよつぼしは特に香りが良いと評判です。香りが豊かで、かつ食べると味わいが濃いのが特徴です。」

 

紅ほっぺは酸味が強く、章姫(あきひめ)は甘味は強いが柔らかく輸送に向かないなど、さまざまな特性を考慮し、よつぼしが選ばれたという。

 

「よつぼしは、種から一粒一粒チャレンジドのスタッフが育てているんです。ピンセットで1ミリに満たない小さな種を植える作業は気の遠くなるほど繊細な作業です。また、種には上下があり、それを正確にまく作業は、チャレンジドの得意分野でもあります。」

 

種をまいて育てられるという希少な品種だ。

 

「種から育てるということは、それだけ長く手を入れられるということなんです。芽が出た時からしっかり観察し、手入れをすることでいち早く変化に気づけます。ですので、強い苗作りができるんです。」

 

ウイングいちごの生産に携わるスタッフは、花の生産における播種(はしゅ)の作業を長年行ってきたため、細かい作業が得意な人が多い。この工程は農家が敬遠しがちな部分であり、さらに発芽率の高さもウイングいちごの強みとなっている。

 

 

普段私たちが何気なく食べているいちごが、こうした方々の手によって支えられていることに、改めて感謝の気持ちが湧いてくる。

 

栽培したよつぼしは次の方法で販売されている。

1.摘み取り体験(中電ウイングファームのハウス)
2.直売所
3.百貨店などの卸先

 

「摘み取り体験は、通常のいちご狩りと違って、その場で食べることはできませんが、バスケットにいっぱい摘んで持ち帰りとなります。そのため、ご自宅で冷やして楽しんだり、お土産にしたりと、さまざまな楽しみ方ができます。」

 

 

 

 

主な取引先は東京の百貨店であり、日本のトップフルーツ市場に挑戦している証でもある。ウイングいちごの営業スタンスは、いちごの味を評価してもらう。障がい者が栽培しているという事実は後々伝われば良いのだと話してくれた。

 

この戦略が1年目から評価され、目指していたブランディングが確立された。

 

百貨店では、1パック2,000円を超える価格で売られているという。この実績をもとに、弁才天、ココトモファーム、Jam the Berry(ジャム・ザ・ベリー)とも取引が始まった。

 

「私どもの営業では、まずいちご栽培へのこだわりと味への自信をアピールします。チャレンジドが作っていることは、あえて前面に出さず、商品にもその説明は載せていません。」

 

この地道な活動の甲斐もあり、お客さまや取引先から高い評価を得ている。

 

加工品は、OEMでジェラートを作っていたり、タッグを組んでバウムクーヘンやジャムを作ったり、シーズンオフになっても冷凍イチゴを真空にして販売したりと、年間を通じていちごを楽しめる工夫がされている。

 

ウイングいちごのブランディングは着実に浸透しており、今後の展開がますます楽しみである。

 

 

 

③いちご生産から紡ぐ地域共生

 

 

中電ウイングファームは景観も空気もとても良いところにある。この場所を選んだ理由は、従業員の方が田んぼをこの土地に持っていたからだった。

 

「これだけの広さの土地を購入するためには多額の資金が必要だったため、さまざまな候補地を探していました。そんな時に、従業員の家族が高齢で農作業ができず、草刈りなどの管理に苦労している状態だと知り、ここをファームとして活用を始めました。」

 

会社と従業員、お互いにとってメリットのある活用方法だと感じた。

 

ウイングいちごの取り組みには、いちごの生産と販売以外に「地域共生社会」と「自動配送ロボット」がある。

 

地域共生社会は、地元の小学校へ出前授業を行ったり、ハウスでの植え付け・摘み取り体験を通じて食育活動を行っている。

 

「いちごはパックに詰めてあるものという印象を持つお子さんが多いなかで、種から育てる過程を学べる機会になります。ちなみに、この活動はチャレンジドが先生の立場となって、自分の言葉で収穫体験の説明を生徒にするという貴重な機会でもあります。スムーズに話を聞いてもらうために、チャレンジドも事前に練習をしています。」

 

この活動は、双方にとって学びの機会となり、有意義な取り組みとなっている。

 

一方、自動配送ロボットの取り組みは、ラストワンマイルといういちごの配送の課題から生まれたものである。

 

「現在いちごはバスで東京に届けているんですが、貨客混載といって通常の高速バスの荷物室を利用して配送しています。問題は、バスが荷物を降ろした後で、誰が店舗まで配送するのかという課題をクリアする必要があるんです。この課題を解決する手段として、自動配送ロボットが期待されています。」

 

自動配送ロボットは実証実験の段階だが、将来的にはいちごだけではなく、可児市の農家の野菜や果物を、他の地域に届けられるよう活動を行っている。

 

自らの課題を解決できたら、その成果を地域に還元しようという姿勢が見られる。今後の地方都市の手本となる可能性が高い試みだ。

 

 

④価値重視のいちご販売戦略

 

 

ここまで順調に拡販できているウイングいちごだが、お客さまとの良好な取引をするための、商品紹介時に心掛けていることについてうかがった。

 

「私どものいちごの価格は決して安価ではありません。提示する価格の背景にある価値に共感される方にこそ、お届けしたいと考えています。長くお付き合いを続けるためには、最初の段階でお互いが同じ価値観を共有できることが重要だと感じています。」

 

価値に共感が得られなければ、価格がネックとなり取引が成立しなかったり、取引後に関係が途切れることを経験してきた。この教訓が、現在の方針につながっている。

 

ウイングいちごが提供する価値をお客さまに理解いただく一方で、商品の品質には徹底的にこだわり、社内で厳しくチェックを行っている。

 

「いちごの見た目や味については、お客さまの声を生産部門にしっかり伝えます。糖度計での計測や、収穫、梱包においても傷や潰れがないよう徹底して行っています。生産部門の厳しい目があるからこそ、お客さまから信頼をいただいており、私たちも生産部門に全幅の信頼を置いています。」

 

ウイングいちごはスタッフ同士の雰囲気が良く、お互いが尊敬の念を持ちながら、良好な人間関係を育んでいる。まさに、いちご生産と販売のプロフェッショナルが集まったチームである。

 

 

 

 

⑤全ての人をもてなす体験へ

 

 

ウイングいちごの今後の展望についてうかがった。

 

「社内でさまざまなメンバーに聞きましたが、世界に輸出したいという夢も出ました。まだ3年目なので、夢への一歩として『ウイングいちご』の知名度と味を広めることと、地域に根ざして地元の方が気軽に顔を出せるビニールハウスにしたいと考えています。」

 

いちご摘み取り体験は、いちごのシーズンとなる1月から始まる。ウイングいちごでは、農園全体がバリアフリーで整備されている点が特徴だ。

 

「全ての人にいちごの摘み取り体験を楽しんでほしいという思いから、バリアフリーは大前提で当たり前の考えです。根幹に福祉やチャレンジドへの支援の思いがあるので、自然とそういう方向性で進んでいきます。」

 

杖をつく高齢の方など、どんなお客さまでも来られるというのは本当に素敵なおもてなしである。温かい配慮に思わず心が揺さぶられる。

 

ウイングいちごは、障がい者雇用の促進と高品質ないちご生産を融合させ、新しい農業のあり方を示している。地域に根ざしながらも、世界を視野に入れた壮大な挑戦は、障がい者の雇用促進のみならず地域を巻き込み岐阜もの未来を明るく照らすだろう。

 

ぜひ一度、ウイングいちごの農園を訪れ、日本一を目指すトップクラスのいちごを味わってみてはいかがだろうか。あなたの一歩が、様々な社会問題解決につながる力となるだろう。

 

 

 

 

 

 

ウイングいちご

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