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岐阜県岐南町にある「TJT株式会社」をご存知だろうか。「お客様第一主義」を掲げ、一人ひとりに合ったカーライフを提案する自動車販売会社だ。今回は社長である戸田 雄也(とだ ゆうや)さんにお話を伺った。
- ジャガーに乗る社長に憧れて自動車業界へ
- 誠実さをモットーに車を販売
- 横のつながりを活かし本当にほしい車を提供
- 仕事を通じてお客様に出会えるのが楽しい
- 自動車業界に憧れる若者を増やしたい
①ジャガーに乗る社長に憧れて自動車業界へ
岐阜市に隣接した、平坦かつ温暖な地域の岐南町。ここで「TJT株式会社」を営んでいるのが戸田社長だ。「驚異と独創性に溢れたクルマ創りで世界中に夢と感動を与える」という経営理念を掲げて、新車・中古車の販売を行っている。
戸田社長が自動車業界に飛び込んだのは、19歳のときだ。それまでは別の業界で仕事をしていた。特に学校などで自動車の勉強をしてきたわけではない。ただ昔から車が好きで興味があったのだという。
「ある日ご飯を食べに出かけていたら、格好良い車に乗ってきた男性がいたんです。とても格好良かったので何をやっている人なんだろうと思って聞いてみたんです。そしたら車屋の社長さんだったんです。お店にスッとジャガーで乗り付けるスタイルに憧れました。そして自分も車が好きだし、車の仕事をしたいなと思ったのがきっかけです。」
そしてひょんなきっかけで、自動車業界で働く人と知り合い、ブローカーの仕事を始めた。
「最初はブローカーとして、いろいろな車を紹介していたんですが、お客様に支持をいただき、車を販売する機会が多くなりました。そして、車屋さんで働きたいなと考えるようになったんです。」
そして戸田社長は、縁あって他県の自動車販売店に転職した。しかし3年ほど経ったあと、勤務先が自動車販売業から撤退してしまう。その後、故郷である岐阜に戻ってきた。最初は別のオーナーと仕事をしていたが、そのオーナーも自動車販売業から撤退。それを機に自ら新車・中古車販売の会社を起こした。
現在は販売の他に車検・修理・板金塗装、ガラスコーティング、内装クリーニング、ウインドウフィルム施工なども行っている。愛車を購入した後も、トータルでサポートしてもらえるというわけだ。
②誠実さをモットーに車を販売
戸田社長はなぜ岐南町で開業したのだろうか?
「まず、自分が本当に好きな地域だというのがあります。また、高速道路が近いので、名古屋にも関西にも行きやすく、動きやすいんです。昔は岐南町に住んでいたんですよ。慣れ親しんでいていたというのもあります。」
そう。岐南町は、国道21号、国道22号、国道156号が交差する岐南インターチェンジや、東海北陸自動車道の岐阜各務原インターチェンジなどがある。交通の利便性がとても良いのだ。交通の利便性も重視しているということは、やはり販売地域は全国になるのだろうか?
「全国です。北は北海道、南は沖縄から問い合わせがあります。」
全国に数ある自動車販売店から、TJTが選ばれる理由は何だろうか?例えば、他の自動車販売店では手に入らないような車を入庫できるとか、他のお店ではできないカスタマイズができるなど、何かあるのだろうか?
「そのようなものはありません。ただ、電話を一本いただいたら、誠実に対応していくことをモットーに心がけています。特に2023年は、自動車業界の大きな不祥事があった年でした。そのこともあり、より一層、誠実な対応を心がけています。」
奇をてらわず、基本をおろそかにしないことが大切というわけだ。
③横のつながりを活かし本当にほしい車を提供
TJTの特徴は、中古車をオークションで仕入れず、同業他社やお客様の紹介で車を仕入れているということだ。独自のネットワークで、日本全国から要望に合った車を探し出す。
「高級車に限らず、プリウスでも軽トラックでも、お客様からリクエストがあれば何でも探してきてお渡しします。そこがお客様に支持をいただいている部分かなと考えています。」
店頭には欧州車やスーパーカーがずらりと並び、圧巻の眺めだ。しかし、必ずしもハイエンドのお客様だけがターゲットというわけではなく、昔からの地元のお客様も大切にしている。
戸田社長が車を販売するにあたり、大切にしているのは「人間力」だ。
「もうそれしかないですね。ハッタリを言っても通用しませんから。他社さんで、仕入れのバリエーションに富んでいる会社、すごいカスタムをする会社はいろいろあります。しかし当社は、独自のネットワーク、横のつながりがあるので、お客様が本当にほしい車を、仕入れることができるんです。」
戸田社長や他のスタッフは、新規営業をほとんどしないという。既存のお客様で十分会社が回っているのだ。それだけ既存のお客様を大事にしており、お客様からの信頼を勝ち得ているということだろう。
④仕事を通じてお客様に出会えるのが楽しい
我々がTJTの取材をしたのは2023年12月。ちょうど冬タイヤの交換で忙しい時期だ。そんな中、他県のお客様から問い合わせがあり、電話1本で高級車が売れたという話を伺ったTJTのホームページを見て問い合わせてきたそうだ。
今はホームページがあれば、全国のお客様を相手に商売ができる。インターネットの重要さを実感するエピソードだ。
「現物を見られていない状態での購入なので、綺麗にして持っていかないとというプレッシャーがありますね。」
車を購入する人の中には、他県から岐阜まで公共交通機関で来るお客様、遠くて見に来れないからと電話で即決されるお客様、いろいろなパターンがあるという。初めて顔を合わせるのは納車時、というケースも多い。
「この仕事を通じて、新しいお客様にお会いできるのが楽しいですね。自分の仕事が認められた証拠でもありますし、達成感があります。」
そう言って、戸田社長は笑顔を見せた。
⑤自動車業界に憧れる若者を増やしたい
TJTには戸田社長を支える複数のスタッフがいる。なんとスタッフの中には、元々はTJTに車を買いに来たお客さんからともに働く仲間になった方もいるそうだ。
「この業界は、横のつながりがとても大切です。TJTには関わってくださっている業者の方がたくさんいます。Win-Winの関係を築けるよう意識しています。僕一人ではできないことも多いです。一緒に働くスタッフや業者さんのおかげで、お客様に満足していただけるサービスを提供できているのだと思います。」
TJTの土地や建物は、借り物ではなく自社のものだ。そういったところも、業者やお客様から信頼を得ているポイントなのだろう。
戸田社長の座右の銘は「継続は力なり」だという。会社を創業するのは難しくないが、10年後も残っている会社は1割に過ぎないという。継続するというのは、当たり前ではあるが、とても難しいことだ。
「大変なことも多いですが、身体が動く限りは、この商売を続けたいです。」
そんなTJTでは今、中古車の買い取り、販売を担う若手の従業員を募集している。
「今はなかなか、車に乗る格好良い大人を見る機会が少なくなってしまいました。そもそも、車に興味がない若い人も増えています。それでも『若い人に、いつまでも支持される車屋さんになりたいね』というのは、スタッフともよく話しています。格好良い服を着て、格好良い車に乗る。僕らのような大人に憧れてこの業界に入ってくれる人が、いてくれるといいなと思います。」
自社だけでなく、車業界全体を見据えている戸田社長。車を大切にし、何より「人」を大切にしているTJT株式会社。
昨今の自動車業界は雲行きが怪しい部分もある。しかし、ここまで誠実に対応してくれる車屋さんが地域に増えれば、きっとこれから先の自動車業界は問題がないと思わせてくれる取材となった。