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岐阜県・垂井駅南口周辺にある「彩菜食坊CIEL(シエル)」をご存知だろうか。
垂井にこだわり自家製にもこだわるシエルで、家族愛溢れるとても心あたたまるお話を伺うことができた。
- 一家で営む飲食店
- こだわりは「自家製」
- お父様のケール
- 垂井町の人たちに食べてもらいたい
- 彩菜食坊CIELの今後は?
①一家で営む飲食店
「彩菜食坊CIEL」は岐阜県西部の不破郡垂井町にあるフレンチとイタリアンをベースにした自家製ベーコンとパスタが自慢のお店だ。今回お話を伺ったのは、棚橋 亜由子(たなはし あゆこ)さん。厨房で腕を振るうのはシェフの良平(りょうへい)さんで、亜由子さんの弟さんに当たる。さらにホールスタッフを務めるのは姉弟のお母様。そしてお父様はお店のお手伝いもしつつ、近くの畑でシエルの料理で提供する野菜を育てているという。シエルはまさに、歯車のように家族の力を合わせて経営されているお店なのだ。
そんなシエルのスタートは、お母様のポジティブな発言がきっかけだったのだと教えてくれた。もともと亜由子さんは他県にお住まいで別の仕事をされていたという。どういう経緯でここシエルで働くことになったのか、当時について亜由子さんに伺ってみた。
「もともとは、シエルを開店するまで弟のシェフが14年間、大垣市の有名店で修行をしていたんです。」
「当時はシェフとして勤めていたので、結婚して子供が生まれるってなった時に家族が増える喜びと父親になる責任感を感じて養っていかなければと考えて、転職しようかと悩んでいたそうなんです。その話を聞いた母が、「みんなで飲食店をやろうよ!絶対に上手くいくよ。家族でできるなんて楽しいじゃんやろうよ。土地も良さそうな所見つけたのよ。ここはどう?」って言ったんです。突然の提案に家族みんなが戸惑ったのですが、私たちの祖父が将来シェフの良平に飲食店を持たせてやりたいって言っていたのも知っていたので、「やってもいいかな」くらいに考えていたんです。そしたら、母がどんどん動き始めて、どんどんシエルが形になっていったんです。でも、明確な勝算もなしに、「飲食店やってみたい。みんなが美味しいものを食べて楽しく集う場が作りたい」っていう思いで母がどんどん動くので私たちは着いて行くのに必死でした。母の行動力には本当に驚かされたのですが、母の思い切りがなかったらどうしようって言っていたと思います。」
お母様の前向きな発言から、家族みんなで協力しお店を運営する事となったのだ。家族で作った場所が、今は地域の憩いの場所となるまでに成長したホッコリするお話を最初から聞かせていただけた。
②こだわりは「自家製」
彩菜食坊CIELは自家製にとことんこだわるお店だ。ドレッシングやスペアリブ、出汁に至るまでシェフの良平さんが一人で行っているそうだ。シエルのホームページでも紹介されている自家製ベーコンは常連さんはもちろん初めてのお客様の召し上がる人気のメニューだ。
「自家製にこだわっているので、全て手作りなんです。既製品は一切使っていないんです。仕込みは全てシェフが一人で行っているんですよ。」と亜由子さんが誇らしげに語ってくれた。自家製ベーコンの塩加減は、長年料理に携わる良平さんであっても毎回同じ味に作れるわけではないという。
「塩加減が難しいんです。24時間ほど水にさらして塩抜きをするのです、その塩の抜き加減が難しいんです。季節によっても変わるので簡単では無いのですが、私が修行時代に教わった方法なので、あえて大変な思いをしてでも自家製にこだわりたいです。家族には光熱費が高いって言われるんですが、既製品とは味が全く違うんですよ。食べてみませんか?」
お言葉に甘えて自家製ベーコンをいただいた。何も付けずそのままいただいたが、私が今まで食べてきたベーコンとは全く違った。既製品のようなきつすぎる塩味や嫌な油っぽさはなく、脂の甘さまで感じるほどだった。わさびといただくのがおすすめだそうだ。是非プライベートで訪問しお酒と共に良平さんこだわりのベーコンをいただきたいと感じた。
③お父様のケール
自家製へのこだわりはドレッシングやスペアリブ、ベーコンだけではない。シエルと同じく垂井町にある畑「CIEL農園」は亜由子さんと良平さんのお父様が野菜を育てている。「CIEL農園」で育てた野菜を使うこともまたシエルのこだわりだという。
お父様が育てた朝取れケールを使ったスムージーがお客様からご好評をいただいているそうだ。お父様がケールを作り始めたきっかけは、亜由子さんからのお願いだったという。
「最初はお店で提供することは考えていませんでした。自宅用にと考えていたんです。自分たちでスムージーを作って飲みたかったので市販のケールを買ってケールのスムージーを飲み始めたら、本当に美味しくて1年中飲みたくなってしまったんです。でも、ケールは1年中手に入らなかったので、趣味で家庭菜園をやっていた父に作ってとお願いしたんです。そうしたら「ケールって何だ?」「種はどこに売ってるんだ?」「どうやって育てるんだ?」って言いながらケールの種を探してきて育て始めてくれたんです。」「父が育てたケールのスムージーがとても美味しくて自分たちで飲んでるだけじゃもったいない!って思ってお客様にも提供し始めたんです。」「自分でお願いした事なんですが1年中収穫ができるってすごいことだなと思っているんです。」
「本当にいろいろ試行錯誤しました。同じ栽培方法では育たないんです。季節によって栽培方法を変えて、手をかけてやらないと美味しいケールができないんですよ。」「年間を通してケールを育てる方法を見つけるのには3年くらいかかりましたよ。」
お父様が話してくれた。早朝から畑に出て野菜やお花のお世話をし、そのままシエルで手伝いをしているそうだ。この話を聞きとても驚いた、なぜそこまで頑張れるのかを伺ってみた。
「息子と娘が頑張っているので、手伝いたいんです。娘にケールが欲しいと言われれば頑張って作りますし、お店にお花を飾りたいっと言われればお花も育てますよ。」
実際お店に飾ってある綺麗な花はお父様が育て、毎日お店に活けているそうだ。家族愛を感じる素敵なお話を伺うことができた。
④垂井町の人たちに食べてもらいたい
彩菜食坊CIELは垂井町への愛が原動力となっていると教えていただいた。大切にされているモットーを伺った。「身と土が2つにあらず」という意味の「身土不二」(しんどふじ)。
「身土不二って、その土地で育ったものをその土地で生活をしている人たちが摂取することによって全身ともに健康になりますよっていう意味の言葉です。」「垂井町の土で育ったものを垂井町に暮らす人たちが食べる。人はそれぞれの土地で育っているので、その土や水で育ってきて体ができてるわけですから、やはり、これからもその土のものを食べるというのが自分に一番合ってるよ、健康的ですよという考えなんです。」
最初はお父様の考えに始まったものの、今ではシエルの想いとしてみなさんが大切にしているのだと話してくれた。
⑤彩菜食坊CIELの今後は?
家族みんなの力を合わせて営業している彩菜食坊CIELは、垂井町への溢れんばかりの想いを大切にしている。垂井町で採れたものを垂井町の人に食べてもらいたいと熱く語ってくれたシエルの皆さんに、お店の今後の展望についてを尋ねてみた。
亜由子さんは今後の目標についてこう語る。
「シエルは家族4人で立ち上げたところからスタートしました。これからも今まで通り一人一人のお客様を大切にしてファンを増やして行く。細く長くで良いのでこれからもシエルを続けていきたいです。私が頑張っていくというよりは、シェフが自分のお店として地元・垂井町の人に愛されるお店作りをしていって欲しいと思っています。」「10年後、20年後も地域に暮らす方が望んでいるものを提供していけるように一人一人のお客様をよく見て、お話をして、仲良くなって、愛される。そういう店にして行くのが目標ですね。」
続けてお母様が話してくれた。「帰る時にお客さんに「おいしかったー!」って言ってもらえると、自分が作ったわけではないですがすごく嬉しいんです。「こんなに美味しいの食べた事ない」って皆さんが言ってくださるんです。すごく嬉しい褒め言葉です。やっぱり息子が一生懸命作ったお料理を食べてお客様が笑顔になってくださるのを見ているとお店を始めて良かったなあと思います。」「大垣で勤めていた時は何度か食べには行っていたんですけれど、実際に息子がどうやって作ってるかは見たことがなかったので、それを今は目の前で見ることができて、しかも、お客さんが実際においしいって言ってくれるんですよ。母親としても本当に涙流して喜んじゃうくらいに嬉しいんです。」
母娘の間で何度も嬉しそうな言葉や目線を交わしながら、しみじみとそう語ってくれた。お父様も多くはお話にならなかったが、ご家族を懸命に支えておられるのが、日頃の行動から垣間見える。家族の力を合わせて経営する飲食店ならではの喜びを語ってくれた。ご家族の皆さんの熱い思いで今日もお客様を迎える「彩菜食坊CIEL」はこれからも多くのお客様を笑顔にし長く垂井町で愛されていくことだろう。